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神様が言うことには



 10分くらい前から、ご近所のどこかのおうちのアラームが鳴っている。ぼーっと窓の外を眺めながらその音を聴いていたのだけど、アラームの音は止んでしまった。多分、10分で途切れる設定なのだろう。止まったのは丁度7時30分で、この区切りのいい時間に起きて止めたとは考えにくかった。空は雲に覆われて真っ白で、こんなに清々しくない朝に無理して起きなければならない皆さんは、少し気の毒だと思った。


 自分はと言えば、いい歳して仕事を辞めて2ヶ月、毎日ごろごろしているだけだ。清々しくない朝に起きたのではなく、起きていたら清々しくない朝を迎えたという自堕落さ。もちろんお金があるわけではないので、そろそろなんとかしなければと思いつつごろごろしている。ネットで漫画を読んで小説を読んで、アプリのゲームをそこそこやりこんでいて、毎日仕事に行く生活には戻れそうもないけど…。


 あとこれは言い訳にしか過ぎないけれど、なんだか体調が良くない気がする。毎日家にいて運動不足だし、食事も面倒で適当にすませているからだろうか。ほとんど毎日微熱以上を記録し、38°を超える日もある。外に出ない食欲無いのが先か、発熱が先かはよくわからない。


 7時30分に止まったアラームは再び鳴ることはなく、8時を過ぎた。アラームの主は起きていたんだろうことに軽く落胆しつつ、重くなった雲でも眺めることにした。今日はこのままソファで寝てしまおうかと思いつつ、外の音をただ聴いていた。





 目を開けると、なんだか真っ白だった。眠りに落ちる前に見ていたのは雲だったなどと思いつつ、寝起き特有の微睡みに身をまかせ、再び目を閉じようとした。


 すると、誰かに声をかけられて意識が無理やり覚醒させられる。



「おーい、そろそろ起きてくれんかのう」



 いかにもおじいさんという声が聞こえてきて、上半身を起こして声の聞こえてきた方を振り向いた。そこには長くて白い髭をたくわえた、優しそうなおじいさんがいた。



(あれ?これってもしかして…)



 どこかで見たような展開に、返事をするのも忘れておじいさんをただ見つめてしまう。



「おーい、起きたかー?」



(最近流行りの異世界転生のやつでは…?)



「そろそろ無視はやめてくれんか…?」


「あ、ごめんなさい!」



 おじいさんが悲しそうな声を出すので、私は咄嗟に謝って立ち上がった。



「君は三浦莉紗さんで間違いないかね?」


「はい、そうですが…」


「唐突だが、実は君は死んでしまったんじゃよ…」


「はあ…」



 そんな気はしていたので、私は別に驚かなかった。



「驚かないのかね?」


「なんとなく状況的にそんな気はしていたので…。ただ、私は何故死んでしまったのでしょうか?」


「それはじゃのう…」



 どことなく申し訳なさそうな顔でおじいさんは話し出した。





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