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商業都市の情報屋 ②

 自分が建物に入ると、中には見知らぬおっさんのような人物がいた。

 彼には髪が全くと言っていい程無く、黒い髭を生やしている。自分からしたら彼はそこらにいるようなハゲのおっさんにしか見えない。

 彼が本当に情報屋なのか? 全くそうには見えないのだが。


「おお、君があの子やスライが言っていた奴か、面白そうな子だね」


 見知らぬハゲの……いや頭が光っているおっさんがそう自分に話しかけてきた。

 

 発言内容からすると、どうやら声の主は自分やスライのことを知っているようだ。

 だが何故スライのことを知っているんだ? それにあの子って誰のことだ?

 そして、何故この世界の人物であるおっさんが自分の存在を知っているのか?


 ほんの一瞬の出来事で、自分に多くの疑問が生じたのだ。


「すいませーん、ここって本当に情報屋なんですか?」


 とりあえず自分はこのおっさんにそう聞いてみた。


「そうだ。ここが情報屋、ここら一帯の情報が集まっている場所だ。そして私はバトラオン、一応この街で情報屋をしている者だ。聞きたいことがあるなら何でも聞いてくれ」 

 

 そうおっさんが話す。

 どうやら本当にここは情報屋で、バトラオンという名前のおっさんが情報屋をしているらしい。見た目と中身で結構違うんだなと。


 バトラオンというおっさんも自己紹介をしたので、一応だが自分も自己紹介くらいすることにした。

 ついでにスライとはどういう関係なのかについても聞いてみるか。

 

「自分は達也です。いきなりですが、スライと面識があるらしいですけどどういうことなんですかね?」


「そのことについてはあまり大きな声では言えんが、私は人間ではなく神のような物なのでね。その関係でスライの奴と面識があるのだよ」

 

 おっさんの回答は意外過ぎる物だったのだ。


 驚いた。まさかの展開である。

 情報屋は人間では無かった。その上、神のような存在らしいのだ

 あくまで自称の可能性も考えられるが、スライと面識がある点を考えると、このおっさんが言った内容に間違いは無いだろう。

 

 だが、"神"と断言していない部分が少し気になるが。


「神のような物……ですか。ならスライも神みたいな物なんですかね?」


 続けて自分はそうおっさんに尋ねたが、これはおっさんのよりも先にスライの返答が返ってきた。


「バーカ、オイラは神でも何でもない、ただのスライムだぜ。普通に見た目でわかるだろ。まあこの世界のスライムとは全然見た目が違うけどな!」


「うるせえな、お前のこの人の関係から見たら普通のスライムなんかに見える訳ねえだろ。それに俺はこの世界のスライムについてなんか何も知らないぞ」


 ああ、コイツは神とかではなく見た目通りただのスライムなのか。

 だけど、何故ただのスライムでしかないスライが神と面識があるんだ? それに、この世界のスライムと見た目が違うってどういうことだ?

 まあコイツの正体とやらにはそこまで興味ないので、これ以上追求しないでおこう。


「話を少し変えますけど、神のような物って具体的にどういう意味なんですか? 神って言い切ってないのが少し気になるのですが」


「残念だが、それについては君が人間である以上、話すことはできない。だが他に聞きたいことがあるならどんどん聞いてくれ」


 どうやら"神のような物"の詳細は教えることができないらしい。人間である以上って発言からすると、人間が触れてはいけない領域なのだろうか。

 とりあえずこの内容から外れて、別のことについて聞いてみるとするか。聞きたいことはまだまだ山ほどある。スキルの件だとかこの世界についてとか。


 と、自分がそう思っていた時だった――


「何か私に話したいことがありそうだが、その前に君に一つ言い忘れていたことがある」


 と、おっさんが言ってきたのだ。

 おっさんは何か重要なことを言いたげにしている。でも何のことだ?

 

 そう自分が思っていると、おっさんは今自分が聞こうとしていたことについて語り出した。


 自分のスキルについてである。


「まず君が持っているスキルはラーニングと成長促進の二つ。そして後者は君が他からラーニングしたスキルだ。だが後者のスキルは本来ラーニングスキルではラーニングすることはできない」


 何故自分のスキルを知っているのだろうか。

 神のような物ならばスライのように他人のスキルを知ることができるのだろうか。

 まあそういうことにしておこうか、これ以上その件については触れられないようだし。


「固有スキルだから……ですか?」


「そうだ。だが現実には君はこのスキルをラーニングしている。何故だかわかるかね?」


 そう問われると、自分は黙ってしまった。

 スキルを得たばかりである以上、いくら自分のスキルとはいえ何故かって問われても自分にはわかる訳がない。

 そうなれば黙るしかないだろう。


「まあわかるはずがないか……、まあ今から私が君のスキルの効果について少し説明するからよく聞いて欲しい」


 おっさんがそう言うと、話の続きを始めた。


「本来ならば、君のラーニングスキルという物は相手の共通スキルを目で見たり、体で受けることでコピーし、体得する固有スキルだ。だが君の持っているスキルは通常とは少し異なる点がある。それは固有スキルのみをラーニングできるという点だ」


 固有スキルしかラーニングできない?

 ここに来る前に聞いた説明と全然違うじゃないか。これじゃ詐欺だぞ。


「だが、君のラーニングスキルは今説明したような本来のスキルの働きを果たしてはいる。しかし、君が相手から得た共通スキルは即座に相手の固有スキルに書き換えられてしまうのだ。つまり、君が相手から共通スキルを喰らいそれをラーニングしようとした場合、そのスキルではなく相手の固有スキルをラーニングするようになっているのだ。何故かは私にもわからんがね」


 話によると、一応本来の機能は果たしているらしいが、その後に固有スキルに書き換えられてしまうということだ。

 だが、聞いた話の中でスキルの発動条件とやらも説明されていたおかげで、何をすれば良いのかを多少理解気がする。

 

 とにかく、自分のスキルについて少しでも理解できたのは良かった。

 ここで知ることができなかったら元の世界には決して戻れないだろう。


「全く、あの子は何をしているんだか……、何でこんな物を渡したのだ……」


 おっさんが小さな声で呟く。

 

 あの子って誰なんだ? と思ったのでそれについて聞いてみる。その次の呟きは何か聞いてはいけないような気がするのでスルーだ。

 そして、これもまた意外な回答が返ってきた。


 ――スライからだ。


「忘れちまったのか? お前と共に行動しろとオイラに命じられた方をな」


 スライに自分と行動しろと言った方? そんな奴は一人しか思い浮かばない。

 大した説明も無しに自分をこの世界に連れてきたあの少女だ。

 まさか"あの子"って……


 そう自分が思っていると、おっさんが話し始めた。


「……シエルのことか。君にもわかるように伝えると、君をこの世界に召喚した子だ」


 そのまさかであった。

 自分をここに連れてきたあの少女のことだった。流石に名前までは知らなかったが。


「あの子のやることは私にもよくわからん。ラーニングの効果がこうなっているのも何かあったのだろうか……」


 何か自分が聞いてはいけないような話に片足を突っ込んでいるような気がする。

 とにかく、この話をこれ以上追求するのはやめておこう。


「……それはともかくとして、他に聞きたいことがあったら何でも聞いてくれ。できる範囲で答える」


 おっさんもこの話を止めたいようなので、自分は他の件について聞いてみることにした。

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