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この作品には 〔ボーイズラブ要素〕〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

異世界人の話

追い出された冒険者パーティーが全滅するので、死神と呼ばれた

作者: ひつじかい

 ああ……。まただ。


 憂鬱な気分で冒険者ギルドを訪れた俺は、掲示板に貼り出された『先月の死亡者リスト』に目を通して想像通りの結果に絶望した。

 其処には、先月半ばまで所属していたパーティーの全員の名があった。

 これで五組目。

 もう、俺と組んでくれる人などいないだろう。



 冒険者になってから三年、俺の戦い方は上達しなかった。

 勿論、なったばかりの頃よりはマシになっているが、他人に言わせれば上達したとはとても言えないレベルらしい。

 特に、連携が駄目駄目。


 最初のパーティーは、一緒に村から出て来た友達三人。

 一年近く組んでいたが、結局彼等に見切りをつけられてパーティーから追放された。

 翌月。『先月の死亡者リスト』に名が載った。


 下級冒険者が命を落とすなんて、珍しい事では無い。

 でも、二組目と三組目のパーティーもリストに載り、その辺りで俺は、気味悪く感じた。

 だって、三組とも俺を追放してから一月以内に全員死んでいる。

 三ヶ月後とか半年後などバラバラだったならば、誰も気にしなかっただろう。


 四組目がリストに載ると、周りも気付いて騒ぎ始めた。

 誰かが俺を死神なんじゃないかと言って、それが広まったのだ。



 その頃には、既に五組目のパーティーに入れて貰っていたのだが、噂は彼等の耳にも入ってしまい、「死にたくないから」とパーティーを追放されたのだ。

 結果は、この通り。

 俺と組んだばかりに……。




「お前の所為な訳無いだろう。気にし過ぎ」


 一緒に村を出て来た俺以外の五人の内、唯一生き残っているアルトがそう慰めてくれる。

 最後の一人は俺の姉さんで、アルトとパーティーを組んでいたのだが……。


「でも、もう俺と組んでくれる人なんて……」

「じゃあ、俺と組む?」

「え?」


 俺は、アルトの提案に耳を疑った。


「俺はSランクだから、そう簡単には死なない」

「そうかも知れないけれど、レベルが違い過ぎるよ」


 たった三年でSランクになったアルトは、釣り合う強さの冒険者が居ないので、現在ソロで活動している。

 パーティーのレベルが違い過ぎると、レベルが低い者は「寄生している」と蔑まれるのだ。


「じゃあ、ソロでやるのか? 無理だろう?」


 悔しいがその通りだ。

 俺がソロでモンスターの討伐なんて、出来る訳が無い。


「それとも、引退するか?」


 それも無理だ。

 他の仕事のあては無い。


「寄生と言ったってルール違反ではないし、夫婦や兄弟・従兄弟などがレベル差のあるパーティーを組むのは寄生と言われないじゃないか」


 俺達は、義理の兄弟になる筈だった。

 姉さんが生きていれば……。


「俺が、彼女達とパーティーを組まなかったら、イラは……」

「アルト……」


 当時の事を思い出したであろうアルトに、俺は何も言えなかった。

 アルトと姉さんは、アルト以外女性ばかりのパーティーを組んでいた。

 元々姉さんと二人だったのに、町に出て来て若い女性の選択肢が増えた事で浮気心が疼いたのか、アルトが美少女を三人パーティーに加えたのだ。


 その結果、他の女達に嫉妬した一人の女が凶行に及び、駆け付けたアルトに知られた事で自身の命を絶ったそうだ。

 アルトに見られなかったら、強盗の仕業にでもするつもりだったのだろうか?


「イラは、俺の所為で死んだようなものだ」

「そんな事……」


 「ない」とは言えなかった。

 だって、俺は、アルトと犯人がどの程度の関係だったのか知らない。

 キスすらしていなかったのか、それとも……。


「それでも、俺は……。エリアスの事を義弟だと思っている」

「アルト」


 俺は、アルトを恨んでは無い。

 薄情かもしれないが、俺と姉さんはあまり仲が良く無かった。

 理由は判らないが、姉さんは俺を嫌っており、だから、俺も姉さんを嫌っていた。


 姉さんが俺を嫌っていなかったら、一緒に村を出て来た六人でパーティーを組んだだろうし、そうしたら、誰も死ななかったかもしれない。

 まあ、そんな事を考えても仕方ないけれど。


「俺のこの思いを受け入れてくれるなら、パーティーを組んでくれないか?」

「……うん。これから、宜しく」




 自分を追放したパーティーの死を悼んで酒を飲んだエリアスは、酒に弱い為に直ぐに酔い潰れた。

 俺が居るから良いものの、独りだったら財布を盗まれたりするんじゃないか?


「お勘定」



 エリアスを背負って家に向かう道すがら、俺は先日の出来事を思い返した。




「雨が酷くなって来たか。……エリアスが居ればな。あいつ、晴れ男だし」


 俺は、そう呟きながら眼下の光景を眺めていた。

 雨に降られての戦闘だからか、彼等は苦戦していた。

 雨が目に入ったのか、急所を狙った剣は違う場所に刺さった。


「あ~あ。あれは抜けないな」


 思った通り抜けなくなった剣を諦めずに抜こうとしていた剣士は、モンスターに引き裂かれた。


「逃げろ!」


 逃げられないと解っているだろうに――だからこそ、戦っていたのだ――、背を向けて逃げ出す。

 一人は怪我の影響で遅く、直ぐに追いつかれて噛み殺された。

 一人は泥濘(ぬかるみ)に足を取られて転び、踏み殺された。

 最後の一人も、逃げ切れずに噛み殺された。


 勿論、Sランクの俺ならば、助ける事は容易だった。

 でも、助ける気は無かったので、見殺しにした。

 そもそも、このモンスターは俺が(けしか)けたのだし。


 エリアスをパーティーから追放した酷い奴等に、毎回嫌がらせをしたんだ。

 倒せる筈のモンスターを誘導して襲わせたのだが、毎回倒せずに全員命を落とすんだ。

 面白いよな。

 足手纏いのエリアスを追い出したのに、倒せなかったんだぜ?



 自宅に辿り着き寝室に入ると、エリアスの服を脱がし俺の寝間着を着せる。


 ああ。エリアスが俺の家に居る。

 幸せだなあ。


 俺はエリアスの隣に寝転び、その寝顔を見詰めた。


 ふと、イラの事を思い出した。

 エリアスの姉だから付き合っていたのに、何を勘違いしたのかエリアスに嫉妬して色々意地悪な事をしていた。

 エリアスの代わりみたいに付き合えたのが気に入らないなら、さっさと俺と別れれば良かったのに、恋人の座に執着した。

 そして、一緒にパーティーを組んだ三人にも嫉妬して、彼女達が俺を狙っているからと殺した。

 俺に隠し通せると思っていたのかは分からない。


 俺に愛されたかったと言っていたが、それが無理だからと嫌われる努力をして何のメリットがあるのか?

 愛する人の『嫌いな人ナンバーワン』になって嬉しいのか? だとしたら、変態なのだろうか?


 俺は、殺された彼女達には悪かったと思っている。

 だが、イラに対しては全く罪悪感が無い。

 もし、イラがエリアスに意地悪な言動をしなかったら、彼女に対して家族愛のような感情は持てていただろう。

 イラがエリアスに意地悪をしていると知った時から、俺はイラをエリアスの家族になる為の道具としか思えなくなったのだ。多分。


 エリアスにはイラの死を誤魔化して説明したが、誰がイラを殺したのか聞いて来なかった辺り、薄々イラが凶行に及んだのだと気付いていたのかもしれない。



 俺は、もう一度エリアスの寝顔を見てから目を閉じた。

 俺が幸福感を感じるのは、エリアスといる時だけだ。

 どう言えば、同居に持ち込めるかな?


 そう考えながら眠りに落ちた。

アルトは、自分がエリアスに恋愛感情を抱いているとは思っていません。

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― 新着の感想 ―
[一言] 壁|w・)や・病んでるー!?
[気になる点] 「綺麗な百合には裏がある」という作品とそっくりです。
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