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ギルティセブン  作者: 阿部曜一
Wahrheit Verbrechen
18/30

第二章第六節 背水の陣

 ー俺は、また気を失ってしまったのか…

 ベルフェゴールの攻撃を受けた俺は、何が起きたのか理解する前に、また真っ暗な空間に来てしまった。

 いつもならここで例の声が聞こえてくるはずなんだが…

「……ク………ユー…………ユーク…!!」

「っ…!?」

「ユーク!よかった…気がついた…」

 目を開けた俺の視界には、涙を流しながら俺を見下ろすアルスの姿があった。

「あれ…俺…これ…」

 俺は今の状況が掴めずに口をパクパクしていた。

「あの…私、足…痺れてきちゃったんだけど…」

「ご、ごめん…!」

 アルスにそう言われ、俺はやっと状況を把握した。俺は倒れた、それを見たアルスが介抱してくれて、膝枕をしてくれていた…

「そうだ…ベルフェゴールは!?」

「それが…」

 俺の問いに、アルスは動揺した。俺が気を失ってる間に何があったのだろう…

「私が、説明するわ」

 見かねたアルスに、アイリスが口を開く。




「ユーク!?」

 アルスが叫んだ。ユークの体は、まるで人形のように軽々と宙を舞っていた。傷口が急激に凍らされたためか、血が出ている様子はなかった。命令を無視したという罪悪感からなのか、それともただ単に力を抑えきれずに凍らせてしまっただけなのか。その真意は定かではないけれど、確かなのは…

「あいつ、完全に本気モードみたいだね」

「ユークも、ギルもやられて、どうしたらいいの…」

 私は完全に動揺していた。このままじゃ全員死ぬ、そう思ったから。体の震えが止まらない。

「ギル…目を開けてよ…私との約束、忘れたなんて言わせないわよ…ギル…」

 その時、ギルの手が動いた。

「ギル…!?」

「あ…アイリスか…すまない、どうやら寝坊してしまったようだな…」

 ギルはそう言って、笑顔を作った。

「無理しないで、今は休んでて…」

「そうは…言ってられないだろ…みんな戦って…ユーク…ユークはどうした…」

 私は何も言わず、横たわるユークの姿を見ることしかできなかった。

「ユー…ク…?」

「なんだ、まだ生きてたのか。この死に損ないがぁ!!」

 ベルフェゴールはギルの姿を見ると、氷の牙を向け飛びかかってきた。ギルは咄嗟に剣を取り、その攻撃を受け止めた。

「ふん、まだそんな力が残ってやがったのか」

「いや、火事場のなんとやら、だよ。俺はもう剣を振るう力は残っていない」

「ギルっ!」

 ギルはその場に跪いた。私はそれに駆け寄った。やっぱり、ギルはもう限界みたいだった。

「すまない、どうにも寝起きは力が出ないみたいだ。もう、終わりかもしれないな」

「何言ってるのよ…縁起でもないこと言わないで!まだ道は残ってるはずよ!」

「そうだ、俺たちもまだ残っているんだから、弱音を吐いてる暇はないぞ」

 ヴァンがそう言ってギルを鼓舞する。

「そうよ、私だっているのよ。だからまだ諦めちゃダメ」

 私は覚悟を決めた。今は、私がギルを守らなきゃ。正直、あんな強い敵と戦ったことなんてないからすごく怖い。でもやらなきゃ、私たちがやらなきゃ、この世界を守らなきゃ。

「やるわよ、みんな」

「へっ、アイリスがそんなやる気満々になるなんてな。ギルタリアは幸せもんだな?」

 ハイムが意地悪を言う。ギルは苦笑いを浮かべていた。何よ、幸せじゃないっていうの?失礼しちゃうわね。あとでケーキ奢ってもらうんだから。

「僕もやるよ。この前ほどの力は出せないけど、今のギルよりは役に立てるよ」

「サトシ、言ってくれるね」

「私は…」

 アルスが弱々しく声をかける。

「あなたはユークを見ててあげて。今の彼には、あなたが必要なはずよ」

「アイリス…」

「さぁみんな、行くわよ」

 私とサトシ、ヴァンにハイム。4対1…数だけなら有利なのに、すごく不利な状況に思えるのは、私が弱いからなのか、それともギルに頼りすぎていたのか…いや、同じ意味か。

 考えていても仕方ない。私は傀儡たちを構えた。

「まずは敵を囲む。そして一気に叩く。それでどう?」

「ほう、さすがフォレスのギルド長様だな。中巨大級の敵と戦う時の定石だ」

「だがあいつはデカい割にはスピードがありすぎる。それに攻撃範囲も広いときた。定石通りにはいかんだろう」

 ハイムとヴァンが私の提案に色々と意見をくれた。でも私には考えがある。

「大丈夫。敵を囲むのは私一人で十分。あなたたちは私の援護をお願い」

「一人でって…さすがに女の子にそんなことさせられないよ!」

「あら、私が誰だか忘れたの?」

 サトシの心配をかき消すように、私は言葉を続けた。

「フォレスギルド長、天才の傀儡師、アイリス・ロー・アルドールよ?」

 私は、私の傀儡たちを敵の周りに展開させた。ハンマーのマトーは正面からの打撃、レイピアのピークと双剣のドゥエペは両サイドからの猛攻、拳銃のフュジーは背後からの牽制、盾持ちのエクリープは私の防衛。

「私の傀儡たちであいつの隙を作る。あなたたちはその隙を突いてほしいの。タイミングは各々に任せるわ。準備はいい?」

「任せろ!」

「おう!」

「いつでもいけるよ!」

 私たちは攻撃を開始した。

「ユークもギルタリアも負傷してしまった一行。戦力を大きく欠いてしまった彼らを引っ張るアイリス。

彼女の提案した作戦は上手くいくのだろうか?

次回『風前の灯火』」

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