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ギルティセブン  作者: 阿部曜一
Wahrheit Verbrechen
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第二章第四節 油断大敵

 俺たちは予定どおり遺跡へと向かい、例の大きな扉の前に来た。

「あれ、寒くない…?」

 アルスが気づいたように呟く。

「そういや、さっき来た時は七魔柱のあいつの影響だったんだよな。てことは、あいつはまだ来ていない、ということか」

「いや、そうとも限らないぞ。違うやつが来ているとしたら…」

 俺の言葉にギルタリアが返す。

「ちょっとギル、縁起でもないこと言わないでよ!」

 それに対してアイリスが怒る。しかし言われてみたら確かにそうかもしれない。俺たちは一気に緊張した。

「…と、とりあえず遺跡の中に入ってみよう」

「そうだな」

 俺とギルタリアはそう交わし、扉に手をかける。すると、扉は勝手に開いた。俺たちはさっきのギルタリアの言葉が現実になったんじゃないかと身を構えた。しかし、扉が開いた先には誰もいなかった。

「もしかして、自動ドア的な感じなのか?」

「みたい、だな…」

 俺たちは肩の荷を降ろし、遺跡の中に入った。全員入ったところで扉は勝手に閉まり、後戻りできなくなった。

 遺跡の中は薄暗く、数メートルに一本くらい松明(たいまつ)が置かれているだけだった。

「それにしても、ここってどのくらい先まであるんだろうね」

「村長さん曰く、そんなに距離はないらしいけど、もう既に結構歩いている気がする」

 サトシとアルスの会話を聞きながら歩いていると、目の前を歩くギルタリアが突然立ち止まった。

「ギルタリア、どうしたんだ?」

「道が分かれている。これはどっちに進めばいいのだろうか…」

 ギルタリアが二つに分かれた道を交互に見ていた時、サトシが何か思いついたように口を開いた。

「ねぇ、こっちの道なんか湿ってない?」

「確かに、よく見たらところどころ水たまりみたいなのできてるよね」

 アルスが湿っているという道に足を踏み入れて足元を観察して言った。

「とすると、あいつはそっちの方に行ったということか。ならばこっちに行けばいいんだな」

 湿っているという右の道と反対の左の道に、俺たちは進んだ。しばらくすると奥の方に一段と明るい光が見えた。

「あっ、見えてきた!」

 俺たちは少し足を速めて光のもとに急いだ。そこには多くの松明に照らされた魔導鏡が置いてあった。

「これが魔導鏡か…ただの石にしか見えんな」

「ヴァン、君は思ってることをそのまま口に出してしまうんだな」

「そんなことより、あいつが戻ってくる前に早くここから出よう」

 俺はなんとなく嫌な予感がしていた。だから早くここから出たかった。

「そうだな、今はこの魔導鏡を無事に持ち帰るのが先決だな」

 ギルタリアは魔導鏡を手に取り、出口に向かって歩き出す。俺たちもそれについていく。

 俺たちは今来た道を戻っていく。しばらく歩いていると、どこか覚えのある悪寒がした。

「なぁ、これってもしかして…」

「あぁ…お早いご到着だ」

 俺の不安の声をギルタリアはあっさりと肯定した。どうして嫌な予感というのはこうも当たってしまうのだろうか。

「あれ、お前たちさっきの邪魔者じゃん」

 めんどくせぇ、と小声でつぶやくその男は、ゆっくりと俺たちに近づいてきた。

「お前たち、もう一枚の魔導鏡、持ってんだろ?俺二枚あるなんて知らなくてさ、忘れてたんだわ。返してくれない?」

「返す?これはお前たちのものじゃない。渡すわけには…」

 ギルタリアが返事をすると、目の前にいたはずの男がギルタリアの背後に立っていた。

「めんどくさいからさっさと渡してくれないかな。じゃないと殺さなきゃいけないじゃん」

 そういうと、ギルタリアを思いっきり殴り飛ばした。

「ギルタリア!!」

 俺は飛ばされたギルタリアに駆け寄ろうとしたが、目の前に氷柱が立ち、行く手を阻まれた。

「めんどくさいけど、一応キマリみたいなもんだから…俺、ベルフェゴール。そんでこいつはアスタロト。まぁ、お前たちここで死ぬし、俺たちの名前は冥土の土産にでもしてくれ」

 ベルフェゴールと名乗るその男は、側に佇む犬を撫でながら自己紹介をした。

「くっ…なんて力してやがるんだ…」

「ギルタリア!大丈夫か!?」

「あぁ、なんとか。ユーク、気をつけろ。こいつただ者じゃないぞ」

 俺は氷柱の先から聞こえるギルタリアの声に安堵しつつ、緊張を解かずにいた。

「えっと、ユーク?あぁ、お前か。確かによく似てる。でも、お前の方が弱そうだな」

「なんの話だ…俺のこと知ってるのか…?」

 ベルフェゴールは俺を見ながら不敵な笑みを浮かべる。俺は背筋が凍るような感覚がした。

「とりあえず…みんな早く死んでよ」

 そういうと辺り一面凍りついた。次の瞬間、氷の中からアイスハウンドが出てきた。

「くそ、またこいつらか…!」

 ヴァンが嫌そうな顔をする。

「こいつらは一度戦った相手…さっさと蹴散らして…」

「ハイム!足元!!」

 俺はハイムに叫んだ。しかし、遅かった。ハイムの足元からアイスハウンドが飛び出し、ハイムに噛み付いた。

「しまった…!」

「このやろ…!」

 ヴァンがウルフマンに変身し、ハイムの足元のアイスハウンドを蹴散らした。

「すまん、助かった」

「これで貸し借りチャラだ」

「こいつら、さっきのやつより厄介かもしれないな…今ここは周りが凍りついてる、ということはこいつらの独壇場ってことだ。みんな、油断するなよ」

 俺は冷静に状況を把握したつもりだった。でも、俺は大事なことを見落としていた。さっきと違う状況は、他にもあったということを…

「お前たち、俺のこと忘れちゃダメだよ」

 ベルフェゴールはそういうと、片手を上げた。次の瞬間、みんな氷の中に閉じ込められてしまった。

「いよいよ氷結のベルフェゴールとの再戦。

ユークの必死の反撃も虚しく、ベルフェゴールは力を解放してしまい、さらに苦戦を強いられてしまう。

次回、『氷山の一角』」

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