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ギルティセブン  作者: 阿部曜一
Wahrheit Verbrechen
12/30

第二章第一節 疾風に勁草を知る

 リヴァイアサンを倒した俺たちは、コンティネント・Mからの連絡により、ヤパンから南に向かって歩いていた。

「ねぇギル、ここどこ?あとどのくらい歩くの?」

 アイリスが痺れを切らしたように口を開いた。

「さぁ、俺にもわからん。サトシ、君にはわかるかい?」

「そうだね、3時間くらい歩いたから、もうすぐ次の街に着くと思うけど…」

「あ、あれ街じゃない?」

 アルスが指差した方に俺たちは注目した。その先には街というには少し寂しい光景があった。

「どちらかというと…村?というか、廃村って感じ…」

「アイリス、それはさすがに失礼だぞ。とにかく行ってみよう」

 ギルタリアを先頭に、俺たちは改めて歩き出した。

 そこはまるで何者かに襲われたかのようにボロボロだった。

「これ…もしかして…」

「あぁ、おそらく魔王の手下にやられたのだろう」

 俺はジャーツィを思い出した。跡形もなく消えていたギルド、焼き尽くされた森、ちゃんと確認はできなかったが、遠目から見えた荒らされた街。まるで同じだ。

「あ、あんたら、何しに来た…」

 物陰から現れたのは、身体中に傷を負った女性だった。

「あんたらも、あいつらの仲間なのか…?」

「何か勘違いされているのかもしれませんが、少なくともあなた方の敵ではありません」

 ギルタリアは慌てて訂正をする。しかしその女性の怪訝な表情は変わらなかった。

「そんな言葉、誰が信じるっていうのよ。武装してこんなところに来るなんて怪しさしかないじゃない」

「あなた、いくらなんでも失礼じゃない?少しはこっちの話を聞いてから…」

 我慢できなかったのか、アイリスが声を荒げると、ギルタリアがそれを制した。

「確かに、このような状況なら、俺たちを信用できないのも無理はない。とりあえず何があったか聞かせてくれませんか?」

「…私も詳しくはわからない。ただ、七魔柱(ギルティセブン)と名乗る男が村を荒らしていったってことだけしか…それに、この村の奥にある遺跡の方にそいつが向かっていったって、村の人たちが話しているのを聞いたわ。私が知っているのはそのくらいよ」

「なるほど、やはりそうでしたか」

 女性の話にギルタリアは納得したように頷く。

「それで、あんたたちは何者なんだ?あいつらの仲間じゃないってんなら、何をしに来た」

「失礼、私はギルタリア・フォン・マクドールというもの。私たちはその七魔柱を追ってここまできました」

「そうだったのか、それは失礼したな。私はアカネ、戦闘民族シノビの血を継ぐもの」

 互いに自己紹介が終わった俺たちは、アカネの提案により、少し休ませてもらうことにした。

 荒らされた村の中で唯一半壊にとどまった家に通された俺たちは、そこで待っていた老人に詳しく話を聞くことになった。

「よく来たな、若人よ。わしはこの村の村長をしておるヤマトじゃ。先ほどはアカネがご無礼を…お許し願いたい」

「いいえ、俺たちもこんな時に押しかけるように来てしまって申し訳ありません。早速ですが、状況を詳しくお聞かせください」

「なに、アカネが言った通りじゃ。それ以上も以下もない。ただ一つ、わし個人的に気になる点があるのじゃが…」

「気になる点、とは?」

「奴は奥の遺跡に向かった、というのは聞いておるじゃろう。そのことなんじゃが…」

 ヤマトはそこまで言ってその先をいうのを渋った。しかし、すぐに話を再開させた。

「あの遺跡は我が一族が代々守ってきた遺跡で、危険な魔獣を封印していると言い伝えられてきた。しかし、本当はそんなものを封印している場所じゃないんじゃ。あそこには魔王を封印した際に用いたとされる()()()が封印されておる」

「魔導鏡?でも、魔王を封印させたのは魔王石じゃ…」

 俺は困惑した。聞いてた話と違ったからだ。魔王を封印する際、魔王石に封印したというのが俺たちの知る伝承だ。

「あの、俺たちが知る話と少し差異が生じているのですが、もう少し詳しく…」

「そう焦るな。まずは魔王がどのようにして封印されたのか、そこから紐解いていくとしよう」

 ヤマトはそういうと、俺たちの後ろに立っていたアカネに目配せをした。アカネはその合図で部屋の隅に並べられた本の一冊を持ってきた。

「それでは話をするとしよう。前提として、君たちの言っている、魔王が魔王石に封印されているというのは間違ってはおらん。しかし、どのようにして封印したのか、というところは聞いたことがなかろう」

「そういえば聞いたことないな。そもそもメリアじゃ魔王の話自体あんまりメジャーじゃないしな」

「シャルナも似たようなもんだ」

 ヴァンとハイムが相槌を打つ。そういえば俺も方法までは聞いたことがなかった。

「そうじゃろう。魔王を封印するためには先ほど話した魔導鏡が必要だったんじゃ。満月の夜、その魔導鏡に月の光を反射させ、魔王に向けることによって魔王は魔導鏡に吸収され、鏡は石に変わったそうじゃ。その石を砕き、7つに分けて魔王討伐に参加した7人がそれぞれ持ち帰ったという」

「それを保管、管理するために今のギルドが設立された、ということか」

「その通りじゃ。時におぬし、ユークといったか」

 ヤマトは俺に声をかけてきた。

「お、俺?」

「おぬし、精霊使い(ガイスター)じゃな?気配を消しきれておらんぞ」

「なっ、気配!?」

 俺はそう言われ、辺りを見渡すが精霊は出ていない。そうなると、ヤマトは俺の本質的な部分を見通したのだろう。

「確かにユークは精霊使いだけど、それがどうしたんですか?」

「アルス、と言ったな。魔王が精霊使いであったことは知っておるか?」

「それは…知ってます。でも、それとユークが精霊使いだってことが、どう関係あるんですか?」

 アルスは声を荒げた。

「この話は少しおぬしらには酷かもしれんが、聞いてくれ。精霊術というのは、遺伝なんじゃ。魔王の血を継ぐものにしか使えん技なのじゃ。つまり…」

「俺が…魔王の、子孫だっていうのか…」

 驚愕の事実に、一同開いた口が塞がらないといった様子だった。一番驚いたのは俺自身。俺が魔王の血を継いでいるなんて、知りたくなかった。信じたくない。

「待ってよ、ユークが魔王の末裔っていうのはおかしな話じゃないの?」

「なぜじゃ?精霊使いであることが何よりの証拠じゃろう」

 サトシが反論する。しかしヤマトも核心的なことを言う。

「だって、精霊使いは絶滅したって…ユークは、その…突然変異とかなんかそういう感じなんじゃないの?」

「なるほど、確かに精霊使いは一度絶滅しておる。しかしそれは魔王の血族が絶滅したということではない。力というものは使わなければ衰える一方じゃ。じゃが衰えるだけでその力が消えるということはない。魔王の血族が精霊術を封じていたとしたら、この話は合点がいくということじゃ」

「そういうことか、要するに、何かをきっかけにその精霊術が再現する可能性もある、ってことだよな?」

 ヴァンはヤマトの言葉に補足を入れ、納得していた。でも俺は納得できない。そうなると、やっぱり俺は魔王の血を継いでいるというのか…

「まぁだからと言ってユークが悪者ということでもなかろう。これから魔王復活を阻止するのじゃろ?」

「あ、あぁ…そうだ、俺は俺だ。魔王の血を継いでいようがなんだろうが、俺は魔王復活なんてさせない。俺はそう決めたんだ!!」

 俺はここで、決意を新たにした。

「ふむ、頼もしいの。それではおぬしらに、任せて良いかの」

「えぇ、もちろん。みんなもいいな」

 ギルタリアの声に、俺たちは頷いた。

 こうして俺たちは、次の日の朝、遺跡に向かうことになった。

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