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ギルティセブン  作者: 阿部曜一
プロローグ
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プロローグ

みんなー!盛り上がってるー?』

「うぉー!!!さきちゃーん!!」

「おぉ…すごいな…」

 東の国、ヤパンで人気沸騰中のアイドル、宮田左利(みやたさき)だ。彼女には万人(ばんにん)を惹きつける”魅力”があるという。しかし…

「俺にはわからないな…」

 そう、わからない。俺には彼女の”魅力”がわからない。俺の友人はご執心みたいだが。

「ほら、ユークも盛り上がろうよ!」

 ユーク・ドレイル、俺の名だ。こいつはアルス、ただのアルスだ。名目上は魔法使いだが魔法が使えない。

 俺とアルスはジャーツィというヤパンから見てはるか西にある連邦国からこのライブのためにやってきた。というより、俺は無理やり連れてこられたと言った方が正しいのだろうけど。

『じゃあ早速一曲目いくよー!』

 ステージ上の彼女がそういうと、会場の盛り上がりは最高潮に達した。

『サイレントサイン!』

 彼女の声を合図に、バンドの演奏が始まる。心臓に直接響くようなドラムの音、足の先から駆け上がるようなベースの音、脳みそを揺らすギターの音、そして…

「心を奪うような、歌声…」

 なるほど、初めてまともに聞いたけど、これが彼女の”魅力”ってやつか。言葉の一つひとつがまるで魔法のように心を惹きつける。

「こんな歌、初めて聞いた…」

 すごい、その一言しか浮かばなかった。

 

 それから俺は彼女の歌に夢中になっていた。すべての歌が、俺を虜にしていた。




「いやー、ユークもさきちゃんに魅了されたねぇ」

「そ、そんなこと…」

 気づいたら俺の手にはグッズがたくさん握られていた。Tシャツやタオル、リストバンドなど…少し前の俺なら、無駄だと吐き捨てていただろうものをこんなに買ってしまうとは思わなかった。だがこれも彼女の”魅力”というものだろう。

 俺たちはホテルに帰るために駅に向かっていた。

「なぁユーク、明日飛行機の時間まで暇だしどこか観光いかない?」

「そうだな、俺たこ焼きってやつ食ってみたい」

「食い物かよ…俺は…」

「お前さ、そろそろその一人称やめたら?一応女なんだし」

「なんでよー、別にいいでしょ?」

 成績優秀スポーツ万能、さらに容姿端麗という完璧女子のこいつには一つだけ欠点があった。それがこの男勝りな性格だ。かわいいのに一人称が俺だなんて…もったいない。

「それに女だからって舐められるの嫌だろ?だからせめて一人称だけでもって思ってたら…」

「性格も男っぽくなってしまったと…」

「まぁ、そういうことだ」

 なんと難儀(なんぎ)な性格なのだろう、と思った。そんな会話をしていると、俺たちの携帯端末が同時に鳴った。

「なんだろ、メールみたいだけど…」


《我がギルド〈ジャーツィ〉に所属しているアルス、及びユーク・ドレイルに通達。至急ギルド本部に帰還されたし。これは緊急招集である。》


「緊急招集…?ジャーツィで何かあったのかな」

「とにかく急いで戻った方が良さそうね。今からならまだ飛行機間に合うはずだよ」

「よし、急ごう、アルス」

 そう言って俺たちは空港に向かった。そこに待っていたのはギルドのチャーター機だった。

「こんなのまで用意するなんて相当大変な用なんだろうな」

「あぁ、こんなこと今までなかったからな」

 そうして俺たちは、急いで自国に帰還した。


 世界には7つのギルドが存在している。それらはその国の名前をそのままギルド名にしている。

ヤパンにもギルドがあるらしいが、ギルド間での交流もないため、どんな人がいるのか知りもしない。それ以前に今のヤパンは平和そのものだからギルド自体活動しているかどうかも定かではない。ジャーツィではいまだに多くの魔獣が出現するためギルドの活動自体は活発である。


 ジャーツィの空港で待っていたのはまたしてもギルドの車だった。こんな待遇受けるの、普段ならギルド長くらいだろう。

「なんでこんな…もしかして、俺たち昇格でもするのかな?」

「そんなわけないだろ。俺だけならまだしも、魔法も使えないお前が…」

「何か言った?」

「な、なんでもないです…」

 こう見えてアルスは魔法が使えないのを気にしているらしい。満面の笑みで拳を握っている。握力50超えを怒らせるのは怖い。気をつけよう。

「それで、何か聞いてないんですか?運転手さん」

「すみません、私どもには何も聞かされておりませぬゆえ…」

「そうですか、それなら仕方ないか…」

「しかし、ギルド内にて何やら不穏な空気を感じたとおっしゃる方が多数おられるとのことです。私も又聞きしただけなので、詳しいことは何も…」

「行ってみないとわからないってことか」

 俺たちは不穏という言葉を聞き、嫌な予感がしていた。




「よく来てくれた、アルス、ユーク。早速だがこれから行って欲しい場所がある」

 ギルド本部に入ると、そこにはギルド長のジャン・ドイールが待ち構えていた。

「ギルド長、行って欲しい場所とは?」

「あぁ、ここからはるか南西の方向にある秘境の地、コンティネント・M」

「そ、それって…あの出入国が厳しく制限されているという、あの?」

 ギルド長の言葉に俺は困惑した。

「コンティネント・M、古い文献で読んだことある。何万年も前に突然消えた大都市で、それから長年迷信だとか幻とか言われていた場所…確か200年ほど前に突然再出現したんですよね」

「ふむ、さすがアルス、勤勉じゃの。その通りじゃ。その地にお主ら二人に強制召喚命令がきているのじゃ」

「「強制召喚!?」」

 強制召喚、その言葉が意味するもの、それは…

「魔王が復活したのじゃ」

「魔王が…ですか…?」

「でも、どうしておれ…私たちが?」

 そういえばアルスはギルド長の前でだけは普段の一人称を隠しているのだった。

「実は召喚理由は明かされておるのじゃが、お主らが指名された理由は何も聞かされておらんのじゃ。本人たちにも心当たりがないとなると、いよいよ謎じゃな」

「とりあえず、行ってみるしかないな、ユーク」

「そうだな、アルス。ギルド長、出発はいつでしょう?」

「こちらの準備はできておる。お主らの準備が出来次第いつでも飛べるぞい」

「わかりました。アルス、行けるか?」

「おう、いつでもいけるぞ」

 俺たちはそういうと、本部の屋上へと向かった。そこにはすでにヘリコプターが離陸準備を始めていた。

 到着までに二日はかかるらしい。途中数回燃料補給のため着陸するとのこと。

「長旅になるな、ユーク」

「そうだな。それにしても、魔王が復活するなんてな…」

 魔王…およそ200年前に勇者の手によって封印されたという伝説がある。それ以来魔獣という形でこの世に爪痕を残していたのだが、魔王が封印されているという魔王石は7つに分けられ、各ギルドが厳重に保管していると言われていたのだが、その魔王が復活したとなると…

「ギルドから魔王石の欠片が盗まれた…なんてありえないよな」

「あぁ、ギルドの人間にもその場所は明かされてないからな」

 そう、魔王石の欠片の場所はギルド長とそれを継ぐものしか知らない。ギルドの幹部でさえ知らされていないはずだ。

「それなのにどうして…」

「今ここで考えても時間の無駄かもしれない。とりあえず行ってみるしかないな」

 俺たちはそこで考えるのをやめた。




 二日後、コンティネント・Mギルド本部に到着した。他にもいくつかのヘリが止まっていたから、おそらく他のギルドからも招集されているのだろう。

「ねぇ、ユーク、あれって…」

 アルスが指差した方向にいたのは、ギースのギルド長であり、国王の子供、つまり王子様であるギルタリア・フォン・マクドールだ。国王になるために騎士道を学ぶため、ギルドに入っているらしい。その腕は天賦の才能というべきか、その実力だけで瞬く間にギルド長に上り詰めたらしい。

「すごいな、本物の王子様だ…」

「アルス様、ユーク様、お待ちしておりました。こちらで皆様お待ちです」

 執事のような格好をした人…というか執事さんがお出迎えに来てくれた。ここだけ見るとパーティーにでも招待されたように見える。

 執事についていき、俺たちは客間に通された。するとそこには俺たち以外にすでに5人が待っていた。

「ほう、最後に来たのはジャーツィのものか。待ちくたびれたぞ」

「すみません、遅くなりました。えっと…」

「ヴァン=ヴォルフ、メリアから来た。気軽にヴァンと呼んでくれ」

 そう名乗る男は大柄で少し怖い。話には聞いたことあるが、メリアのギルドに所属する人はほとんどがヴァリアント、つまり変獣族という人間と獣の姿を自由に変えることができる種族らしい。彼は狼になれるらしい。

「あれ、君たちライブに来てなかった?」

「さ、さきちゃん!?」

 俺たちに前にひょっこり現れたのは、数日前にステージ上にいたアイドル、宮田左利だった。

「どうして…その、宮田さんがここに?」

「実は僕、ヤパンのメンバーなんだ」

「びっくりです、まさかさきちゃんが…いやそれよりどうして俺たちがあの会場にいたって知ってるんですか!?」

 珍しくアルスが早口になっている。これは相当テンパっているぞ。

「そりゃヤパン人の中に君たちみたいな異国の人がいたら目を引くって」

「まぁそりゃそうだよな」

 聞くと彼女は見た目とは裏腹、大剣使いらしい。背中に自分の背丈より大きな剣を背負っている。その腕はヤパンの中でも上位を争うものらしく、3年前に現れたという大蛇型の魔獣を一人で倒したという逸話があるらしい。

「騒がしいわね。これだからゲミン共は…」

「それを言うなら愚民共、だろ?」

 さっき外で見かけたギースのギルタリアと隣の国のフォレスのギルド長であり、国王の子供、つまり王女様、アイリス・ロー・アルドールだ。傀儡子(くぐつし)をやっているらしい。最大5体の傀儡、つまり人形を操って戦うという。その傀儡はそれぞれ双剣、レイピア、拳銃、ハンマー、そして盾を使って戦う、なんとも器用な戦闘スタイルだ。

「う、うるさいわね!そんなのわかってるわよ!」

「まったくアイリスは変わらないな」

「な、何よ、バカにしてるの?」

「ははっ、そんなんじゃないさ、今日も変わらず可愛いなと褒めているだけさ」

「……バカ、不敬よ」

 二人の会話を見かねたのか、その場にいたもう一人の男が口を挟んだ。

「なんか夫婦喧嘩みたいだな」

「「夫婦喧嘩じゃない!」わよ!」

「へいへい、仲が良いこって」

 彼は北の国、シャルナから来たハイム・ライト、錬金術師だ。手袋の手のひらのところに魔法陣が描かれており、その陣が触れたものを相応のものに変化させることができるらしい。例えば鉄パイプを槍に変えることもできるのだとか。ただし何もないところから何かを出したり、物質そのものを変えることはできないらしい。便利というか不便というか…

「皆の衆、揃ってるようだな。どうか静粛にしてくれたまえ」

 いつの間にかコンティネント・Mのギルド長、マルガス・フォルグが部屋に入ってきていた。

「早速だが確認をする。ギルドメリアよりヴァン=ヴォルフ。ギルドギースよりギルタリア・フォン・マクドール。ギルドフォレスよりアイリス・ロー・アルドール。ギルドジャーツィよりアルス、ユーク・ドレイル。ギルドシャルナよりハイム・ライト。そしてギルドヤパンよりミヤタサトシ」

「み、ミヤタサトシ…!?」

 予想外の言葉にアルスは驚きを隠せないらしい。

「なんじゃ、何かおかしいことでもあったか?」

「あれ、知らなかったの?僕男だよ?」

 俺たちが女だと信じてたアイドルは、実は男だったらしい。隣のやつがあからさまにショックを受けている。かわいそうに。

「ゴホン、話を続けていいか?」

「す、すみません」

 俺たちは改めて、マルガスに向き直り話を待つ。

「事態は火急である。魔王の復活だ。しかし我々各ギルド長が守り抜いてきた魔王石はいまだ各自の手にあることが確認されておる。そうだな?ギルタリア」

「えぇ、その通りです。各国のギルド本部にて厳重に保管されております」

「よろしい。しかして魔王の気配は間違いなく出現しておる」

 マルガスはどこからともなく何かを取り出した。

「これは数十年前に我が国の遺跡より発掘された、古代兵器だ」

 そう紹介されたものは、片手で持てるほどの大きさでまるでチェスのポーンのような形をしていた。

「えー、見ての通り、大変大きな反応が見られる。通常は上部の球体が青い光を放っているのだが、大型の魔獣が現れた際に光が赤に変わる。今回はその光がとても強く、今までにないほど光っておる。これは魔王が出現したということだと推測される」

「場所はわからないんですか?」

「いい質問だ。魔獣程度なら場所まで特定できるのだが、今回は反応が大きすぎて場所の特定まではできんのだ」

「なるほど…それで、俺たちに魔王を探し出して討伐しろってことですね」

 俺はマルガスがこれから言わんとしている言葉を声に出した。

「察しが良いな、ユーク。そういうことだ。それに伴って皆には…」

 マルガスが言葉を言い終える前に、どこかで爆発音がした。

「何事だ!?」

 そういうとマルガスは部屋を飛び出した。

「火薬の匂いはしない…ガスでもない…これは魔法による爆発か」

 ヴァンは狼だからか鼻が利くようだ。

「みんな慌てるな、まずは状況を把握することが先決だ。マルガス氏が様子を見に行った。彼が戻るのを待とう」

「あら、ギルったら早速リーダー風吹かせちゃって。あなたも相変わらずね」

「そんなこと言ってる場合か!これは緊急事態だ。統率経験のあるものが場を取り仕切るのは然るべきことだろう」

 ギルタリアとアイリスが言い合いをしていた時だった。マルガスが傷だらけで戻ってきた。

「皆の衆、逃げたまえ…ここはもう、ダメだ…」

「マルガスさん!?」

 マルガスはその場に倒れ込み、アルスが慌てて駆け寄る。

「まさか、魔獣が侵入してきたのか!?」

「そんな、ギルド内は結界が魔獣の侵入を防いでるはずじゃないの!?」

 各々が武器を構えて戦闘準備に入っている。そんな中、ヴァンが不思議そうに俺を見つめる。

「そういやユークは武器持ってないよな。どうやって戦うんだ?」

「俺は…」

武器を持たない俺は、今はただ構えるしかなかった。ヴァンに痛いところを突かれて戸惑ってしまう。

「ヴァン、ユーク、来るぞ!」

 ギルタリアが言うと、壁が爆発し大きな穴が空いた。立ち込める煙の中に揺れる影が見え、そこから謎の男が現れた。

「ほう、選ばれし7人の戦士か」

「だ、誰だ!?」

「我は魔王様に支えし七魔柱(ギルティセブン)のルシファー。ここに眠りし魔王石は頂いた。魔王様の復活は間もなくである。お前たちはここで滅ぶが良い」

 ルシファーと名乗る男がそういうと、部屋中に複数の魔法陣が展開され、魔獣が現れた。

「みんな気をつけろ、この魔獣は今までのものとは格が違うように感じる」

 ギルタリアは剣を強く握り構えの姿勢をとる。出現した魔獣はまるで伝説上の生き物、麒麟(キリン)のような姿をしていた。

「こんな魔獣見たことない…」

「うん、こんな魔力感じたことすらない」

 魔獣狩りに慣れている俺とアルスでさえ、見たことがない魔獣を前に足がすくんでいる。みんなも恐れているように見える。

 俺たちは魔獣の様子を伺っていた。魔獣たちも同じようにこちらの様子を伺っているように見える。しばらくの沈黙が続いた後、均衡(きんこう)を破ったのは魔獣だった。ギルタリアに向かって一直線に飛びかかってきた。

「くっ、強い…なんて力だ…」

「ギル!離れて!」

 アイリスがギルタリアに向かって叫んだ。次の瞬間魔獣から電撃が放たれた。ギルタリアはアイリスの声に瞬時に反応し、その電撃をかわすと魔獣を斬りつけた。

「危ない危ない…ありがとう、アイリス。助かったよ」

「べ、別に…こんなところで死んでもらったら困るだけよ」

「あつあつのところすまんな、まだ他が残っているぞ」

 ハイムはそう言いながら近くの瓦礫を手に持ち、飛び道具に変化させた。

「そうね、ギルには後でみっちりお説教してあげるから、覚えていなさい」

「そりゃ怖いな。さっきは不覚を取ったが今度はそうはいかない。覚悟しろ、化物ども!」

体勢を整えたギルタリアは剣を構え、魔獣に向かって走り出した。

「俺たちも負けてられない、行こう!ユーク!」

「あぁ、まさかまたあの力使うことになるなんて思わなかったけど」

 俺はそう言って、少し後ろに下がる。

「ユーク、どうした?何をして…」

 ヴァンが振り向いた時、7つの光が俺を囲んでいた


「ヴァン、さっきは俺の武器、紹介しそびれていたな」


 7つの光は次第に輝きを増し、ユークから離れて魔獣に取り憑いた


「俺の武器は…俺の力は…」


 光に包まれた魔獣は苦しみ悶え、咆哮(ほうこう)を上げて消えた


「この光、まさか…精霊…!?」


 アイリスが動揺する


 魔獣が(おのの)


 俺はニヤッと笑い、高らかに告げた




「俺は、精霊使い(ガイスター)だ!!!」

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