第一話 会戦
A.D.199X年…6月…
アメリカ公国より開放され平穏となったシズオカの某所…。
初夏の暑いなかを普通の高校2年生のユウキは、学校に着いて早々に出された避難警報によって放り出されたため家路についていたが空に黒煙を上げた物が見え…落下しそれが地面に消えると黒煙の柱がゆっくりたなびき始めた。
その方向を目の当たりにしたユウキは、ゆっくりとした足取りは次第に早くなり、鼓動も早くなっていき途中、通りには数台の救急車と消防車、その先陣をウィンチクレーンを牽引した戦車が走り去っていく。
ミリタリーマニアではないがウィンチクレーンをどのような使い方をするのかはよく分かっていたがそれを目の当たりにし家路と同じ方向にユウキはさらに不安がよぎる…。
その不安は、黒煙の方向が偶然にもユウキの自宅に重なっているからである。
ユウキは走った…家族の無事を祈って…。
ユウキは必死に走った…。
やがて、家にたどり着くとつい今朝方に、意気揚々と飛び出して行った家の玄関すら瓦礫と化しその上には壊れ四肢がちぎれ無数の風穴が空き黒煙がもうもうと立ち昇り燻ったAGが鉄の塊としてそこにのしかかっていた…。
彼の不安は現実のものとなり愕然と絶望が重くのしかかった。
「お…おい…う…嘘だ…ろ…嘘だろっ!」
ユウキは、家に近づこうと走り寄るが近くにいたガタイの大きな士官に止められユウキは叫んだ!
「お前っ!通せよっ!俺んちだ!俺の家だって!」
体を押し通そうとしながらわめくと、仕官はユウキの胸ぐらをつかみ鬼の形相をしユウキをまじまじと見つめ「坊主!!今、近づいたら何時、アレが爆発するか分からん!離れいろ!!」すごい剣幕でユウキを怒鳴りつけ突き放すと近くにいた仲間へ消火などの細かな指示をする姿は真剣そのものだった、突き飛ばされたユウキはたたらを踏みその場の地面にへたり込むとまばたきをした瞬間、大破したAGが爆音をたて熱風と破片を周りに撒き散らし跡形も無く吹き飛びとっさのことではあったが先ほどの仕官がユウキを抱きかかえ体を丸くして飛び交う破片から身を挺して庇う
目の前で我が家がAGとともに爆発し失ったユウキは、仕官の肩口から見える無惨な光景を何度も見返し現実であると理解できるころには、抱えた士官の肩を涙で濡らしながら家族の名前を何度も呼ぶ…泣き崩れ悲鳴に似た声で家族を呼んだがそれは全て轟々と燃える炎に吸い込まれていくだけであった…。
ユウキがすすり泣く姿に頃合をみたのか士官は軽く肩を叩いて悲観した声で言葉を投げかける。
「坊主、アメリカ公国軍が間もなくここまで戦線を押し上げてくる…早めに最寄りの地下鉄に避難をするんだ…ご家族の事は…本当に申しわけない…。」
仕官でさえ人間なのだ、家族を失えば悲しいだろうしなにより目の前にいるこの少年の家族を助けられなかったという悔しさが顔にでているのだから察したユウキは、涙を拭って頷くとゆっくり立ち上がり近くの地下鉄まで歩く、その後ろ姿をみて(坊主は昔の俺みたいな奴だな…無事、地下鉄まで向かえよ…。)そう独白するのであった。
お読みいただきありがとうございます。
ようやく、主人公がでてきました
主人公はただの高校生ですね、某ロボットアニメにおける初代のアム○君とか後のキ○とかセ○ナ・F~とかのようなスーパーマンじゃ有りませんよ。
仕官さんもただのモブでありますねこれといって活躍は…
とはいえ至らぬ点、誤字脱字があればご指摘、ご指導のほどよろしくお願いします。