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第04話 あらまし

二度目の覚醒。今度は腹は減っていない。が、気絶前のこの人――シトルフさんの言葉を思い出して、三度目の気絶はなかったものの、頭が痛んだ。


「失礼しました。お恥ずかしい限りでございます。で、どういうことですか。詳しくお聞かせください。ちなみに、俺は馬鹿なので、できるだけ分かり易く……」

「は、はい」


頭痛最中の俺の顔が怖かったのか、怯えた様子のシトルフさん。マンガだったら頬に汗が流れていることだろう。


ちなみに、マンガだったら、俺の顔は汗で見えない。


「あの、先に断っておきたいのですが、今から私が話すことは、あくまで客観的な事実のみになりますので……」

「え? あ、はあ」


何だそれ。何の前置きだ?


「あれは、一年前のことです」


と、彼女は目を閉じて話し始める。


「文明が滅びました」

「ほろっ……」


いや、ここは最後まで黙っているのが礼儀だろう。ここまでずっと無礼しか働いていないハジメよ、落ち着け。落ち着け。


呼吸を整えるんだ。


彼女の話は続く。


「原因は私です。人民は私のことを『傾国の美女』と呼びました。そもそもは私が発端となって、いくつもの国の王が乱心なされたのです。一心不乱に、私を求めました。醜い話ですが、事実です。戦いが起こり、争いが起こり、そのたびに人が死にました。千人や二千人では済まない数です。」


「国王も次々と死んでいきました。勇敢に戦い戦死した国王もいれば、身内に毒を盛られてあっけなく死んだ国王もいました。その数も、十や二十では到底済みませんでした。」


「全ての国王が死にました。……争いは、それでも止みませんでした。どうしてって……最後の一人まで、私を求めたのです。女子供は、その時には既にいませんでした。私だけでした。最後には、私だけが残ってしまったのです。」


「それが一年前です。私は途方に暮れました。その時この世界には、私しかいないのです。人々このことを愚かだなとは思いませんでした。それよりもむしろ、孤独でした。寂しくもありました。孤独の恐ろしさは、ついさっきのあなたがよく知っているはずです。」


「死のうと思いました。」


「でも死にませんでした。」


「何故かというと、私が死の準備を整えている途中、私の前に神が現れたのです。」


「信じられませんでした。でも、これだって事実です。」


「神は言いました。『あなたが死ぬのは簡単ですが、私はそれを望みません。人を連れてきます。ここではない世界から、一人だけ人を連れてきます。適切な人を連れてきます。あなたのその美貌に押しつぶされない人を連れてきます。不真面目すぎず、真面目すぎない人を連れてきます。その方と、一から文明を再建するのです。この啓示には拒否権があります。どうしますか』」


「それに対する私の返答は、今のこの状況を見れば、お分かりでしょう。私は首を縦に振りました。」


「それが……一連のあらましです。」

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