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【十四章】新たな殺戮者、邪業の狼 1

【削除のお知らせ】


クロス・ガーディアンを読んで下さっている皆様にお知らせです。


この度、読みづらいということと、ラストがグダグダしているという理由で、クロスを削除することにしました。


8月10日より、毎日一話ずつ削除をしていく予定です。


リメイク版のアップ予定は今のところ未定ですが、なるべく努力はしたいと思います。


ではでは、いつかまた会いましょう(´艸`)


有澤透真

祐也が入院して約一週間、同時に、力が殺し屋二人組に銃の使い方を叩き込まれて約一週間という時間が過ぎていた。


空が薄い水色で覆われた心地よい休日に、力と姫がいるのは対照的な空間。


逃走防止なのか、自殺防止なのか分からない針金入りの窓ガラス、その外は鉄格子で出口を塞がれ、至る所のドアには鍵までかけられている。


蛍光灯の灯された質素な一人部屋はまだツヤツヤと新しく、白さに清潔感も感じられるのに、雰囲気だけが監獄のように重苦しい。


そんな場所で姫は、力の調子を狂わせる音痴な鼻歌をさっきからずっと歌っている。


気分を幸せ色にしているのは、彼女の手元にある大好物。


起き上がった祐也の脇に置いた椅子にちょこんと座り、差し入れるはずだったケーキを一口、パクリといただいた。


「おいし〜い! 中に入ってるのはムースかなぁ?」


喜びを高いテンションで表す姫。


それをひたすら穏やかな微笑みで見ている祐也。


そして更に、二人を見守るのではなく、監視している力。


その緑色の眼は、姫の手にあるフォークと、祐也の右手を絶えず注視していた。


彼の手が動いた瞬間、不測の事態に備えた力の軸足が、強く床に押し付けられる。


しかし、姫のフォークを借りた青白い手は、食べかけのケーキをサックリと分けた。


その一部を口に含んだ顔が途端に濁り、味を拒絶している。


「……こんな甘ったるいケーキのどこが美味しいんだ?」


無意識に苦しくしていた息を大きく吸い込み、ライオン頭は緊張をほぐした。


いつも通りの祐也に、安堵をして。


投薬療法でだいぶ落ち着いてきた彼には、もう不気味な笑顔は無い。


しかし、力はまだ油断出来ないと踏んでいる。


数日前、見夜都から警告を受けた時にも言われたが、今の祐也にあるのは大雑把に分けると、二つの異なる人格だ。


自己愛性人格障害を患い、自分を神だと信じ込んで、『地位』を持っている見夜都と要に牙をむく祐也。


一方、その記憶が曖昧で、ぼんやりしたり、穏やかになってみたり、変わらず毒を吐いたり、隠れて罪悪感を涙にしている、纏まりのない、もう一人の祐也。


力は、姫が口につけている生クリームを指で拭い取って言った。


「姫、祐也も朝からお前に付き合わされて疲れてるだろ。帰るぞ」


そんなことを言いながら、心の奥底では、単純に早く帰りたかっただけだった。


この、常に誰かに見られているような圧迫感のある空間自体に馴染めない。


指についた生クリームを舐めながら、力は姫の腕を引っ張り上げた。


「じゃあな、祐也。脱走するんじゃねーぞ」


一度、ここから抜け出した祐也は、病院関係者に要注意人物として目をつけられている。


再び脱走なんて出来るわけがないと知りながらも、念を強く押した。


「ああ、わかってる。来てくれて有難う」


彼の口癖である『バカタレ』が聞けない変わりに返ってきたのは、寂しい笑顔。


まだ話したいと駄々をこねて膨れる姫の手を引き、力は半ば強引に病室を後にした。




――


歓楽街、華園の夜は一斉に灯り出すネオンから始まる。


姫は、部屋の照明をつけ、ブラインドを閉めていた。


玄関の右に位置する娼婦街通り側の窓から、出掛けていた要と見夜都が二人揃って外階段を登ってきたのが見える。


両者は共に、浮かない表情。


物憂げにドアを開けた要は、玄関に佇んだまま見夜都と目線を交わしていた。


力と姫の二人を不安に陥れるこの話を伝えた方がいいのか、その躊躇ためらいが喉を詰まらせる。


見夜都が浅く頷いた後に、要は覇気のない声を発した。


「最近、新しい通り名の殺し屋が、他の通り名つきを立て続けに殺ってるらしい……」


「……えっ?!」


驚く力の傍らで、避けられない未来を声に出すのは、もう一人の当事者、見夜都。


「いずれ私達にも銃が向けられるだろうな」


二人の殺し屋は、決して余裕など見せていない。


通り名がつくほどの腕を持つ殺し屋を次々と始末できる新しい殺し屋が『脅威』でしかないことを、彼等が一番よく分かっているからだ。


「……その殺し屋の名前は?」


力の問いかけに、王は眼を細めた。


そして、その口から死神の名が、姿を現す。


「……邪業じゃごうの狼」




――


夜の暗闇で、動いている唇。


携帯に向かって話すその声は、黒き念の塊だった。


「用件は何だ」


『あなたが狼?』


漏れる女の高い声に、彼はその低くキレのある声を発する。


「そう、呼ばれているようだな」


『……ふふっ、なら話は早いわね。お願いがあるのよ。お金ならいくらでも払うわ。……私の娘を助けて欲しいの。悪い奴らを殺してちょうだい』


「……対象の名前は?」


その不吉な質問に、歪んだ暗殺者が放った名前は、覚えのある響き。


『タカヤマリキ、ヤギハシカナメ、フジサキミヤト、オギノユウヤ』


ほんの一瞬だけ、彼の口元は結ばれた。


しかし、すぐに口角はニヤリと吊り上がる。


「四人とも知っている奴らだ。一人はもう死んでいるようなものだがな。あとの三人は片付けてやる。ただし、銃を運べ」


『……なんの銃かしら?』


直後、呟かれたのは使い慣れた、拳銃。


「SPD。最新式のTYPE A」


月明かりは窓の外の鉄格子を抜けて、彼を光と影で映し出した。


異質な高ぶりを、薄い唇は浮かべる。


小さな咳払いのような笑いが、徐々に大きく、針金の入った窓を震わせた。


「……クックッ。……アハハハハ! ヒャハハハハッ!!」


爆発的な速さで、壊れていく――彼。


腹を抱えて笑い狂うその瞳は、冷艶れいえんな紫色をしている。


『荻野祐也』の容姿を持つ、飢えた獣は眠ってなどいなかった。


もう、『彼』には食い止めることの出来ない凶暴な本能が、歯止めの鎖を勢いよく引きちぎる。


黒い狼は、ついに殺戮に向かって、


走り出してしまった。




「俺は神だ。仲間など必要ない。あんな奴らは言われなくても全員息の根を止めてやる。まずは鮮血の黒豹、……貴様だ」






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