【十章】我の道 〜秘密〜 2
【削除のお知らせ】
クロス・ガーディアンを読んで下さっている皆様にお知らせです。
この度、読みづらいということと、ラストがグダグダしているという理由で、クロスを削除することにしました。
8月10日より、毎日一話ずつ削除をしていく予定です。
リメイク版のアップ予定は今のところ未定ですが、なるべく努力はしたいと思います。
ではでは、いつかまた会いましょう(´艸`)
有澤透真
祖父は実家がある田舎の無医地区に、内科を建てた開業医だった。
祐也の父はその祖父の長男で、後々、祖父は彼の父を跡継ぎにする予定だった。
しかし、無医地区特有の問題である、経済的な厳しさで器具が揃えられなかったり、それで病気を特定できなければヤブ医者呼ばわりされる等を嫌って、彼の父は遠くの市民病院の外科医になった。
祖父の子供は父を入れて五人。
しかし、他四人は全員、女。
昔気質の祖父は、結果的に祐也を跡継ぎにした。
そこから、彼の、自由の全く与えられない人生が始まってしまった。
幼い頃からひたすら勉強と、応急処置レベルのことを叩き込まれる毎日。
遊びたい盛りの小学校時代でさえ、友達を作ることも許されなかった。
祐也には三歳違いの姉がいたが、彼女は女だからと跡継ぎを免れ、祐也とは逆に奔放に育っていた。
どんなに嫌でも勉強しなければならない祐也と、その前で沢山の友達と楽しげに走り回る姉。
彼はずっと、自分が男に生まれてしまったことを恨んでいた。
それにも関わらず、背は年齢とともに伸び、肩幅以外の体格が自分の知らぬうちに段々と男らしくなっていく。
それが、無意識に彼を牛乳嫌いにさせていた。
――
高校生になると、彼は祖父に内緒で彼女を作っていた。
彼女へは自分から想いを告げたわけではなく、特に恋愛感情も持っていなかった。
しかし、少しだけでも普通の高校生らしいことがしてみたいという小さな願望だけで、自分の好みでもないボーイッシュなバスケ部のキャプテンだった彼女と付き合うことにした。
彼は、長い間友達さえいなかったせいで、人と接することに不慣れだった。
そんな祐也に彼女は、相手の気持ちを察することや、話題作りなどの『人との接し方』を優しく教え、そしていつでも冗談を言って無表情な彼を明るく笑わせた。
祐也は彼女に心を許し、彼の中で徐々に、ただのクラスメートから一緒にいて安息を覚える愛しい存在に彼女は変わっていった。
しかし、それはたった五ヶ月という、あっという間に過ぎ去ってしまう時間で終わりを迎えた。
彼女に振られたわけでも、祖父にバレて仲を引き裂かれたわけでもなかった。
認めたくなかった、運命。
唯一、愛した彼女が
――病気で死んだ。
彼女の名は、
『加納 美緒【かのう みお】』
字は違うが、姫と一緒の名前だった。
彼は病室のベッドの横に佇み、脳死した美緒に安楽を与えるため、苦しみや痛みを背負う事を決めた。
そして、泣き崩れる彼女の両親の前で、人工呼吸器を外す医師の手を、唇を噛み締めて、歪ませた眼から涙を頬に伝わせながら、ただ、黙って見ていた。
生命の維持が絶たれ、息をしなくなってしまった彼女に、震える口づけで永遠の別れを告げた。
その心を締め付けるやり切れない切なさを、押し殺したりはしなかった。
ストレートな彼が、彼らしく、
そして人間らしく、
絶命した彼女にしがみつき、悲鳴のような嗚咽を張り上げて、何度も何度も枯れた声で名前を呼んで、精神が尽き果てるまで、泣き叫んだ。
それからというもの、彼は彼女を救いたかったという自責にも似た思いに苛まれ、医者になることを目指した。
そして、18歳の春。
無事に東京の医大へ合格し、彼は北海道を離れた。
入学して半年ほど経ったある日、大学の友達が肺炎で入院し、祐也はプリントを渡す為に総合病院を訪れていた。
そこには、まるで医者になることを自分に言い聞かすように真っ白な上着を身に纏った祐也がいた。
お見舞いが済んで帰ろうと階段を降りていたときだった。
広いロビーの会計窓口でスピーカー越しに呼ばれた名前が心拍を上げさせた。
「カノウミオさん」
思わず、祐也は振り向いてしまった。
その先には彼女がいないと分かっていても。
そして、その眼の先にいたのは、風邪で高熱を出してふらついている美少女だった。
祐也は彼女と帰り道が同じ方向だったので、しきりに辛そうに歩く少女を気にしていた。
信号待ちをしているときでさえ、電柱に寄りかかる危なっかしい彼女。
手を貸そうか――。
そう思った時に信号が青になり、よろけながら渡りだした彼女は、横断歩道のど真ん中で耐えきれずにしゃがみこんでしまった。
祐也は駆け寄ってぐったりした彼女を寮まで運び、そして、自ら看病をした。
そんな数奇な出会い方をしていた、祐也と姫だった。
そしてここからは、姫の父、加納羽すら知らなかった、秘密。
祐也と姫は付き合っていた。
姫にとっては祐也が生まれて初めての彼氏。
当時、姫以外に誰も住んでいなかった部屋に、祐也は何度となく入り浸っていた。
今よりも若干の協調性を持っていた当時の彼は、美緒に教えられた人との接し方を忠実に守るように、我が儘な姫に合わせながら彼女と上手に付き合っていた。
――そして、祐也の人生を180度変える日は、思わぬところで突然訪れた。




