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物理を1から作りましょう! ――見習い神様の世界創造  作者: するめいか英明
第1章 慣性の法則
4/11

第4話 動いてないと、速度はない?

『物理法則1:止まっている物体は、他の影響がない限り、止まり続ける』


『物理法則2:動いている物体は、他の影響がない限り、同じ速度で動き続ける』




「ささ、早く次のルール作ろうよっ」


 そう言いながら、サラミちゃんは石の動きをじっと目で追っている。


 だけどボクは、どうしても2つのルールに引っかかりを感じていた。すると先生がボクの顔を指さして、


「あ! ハムくんのその顔は、何か腑に落ちないって顔だな?」


 と言った。すると、サラミちゃんがキョトンとした顔でボクの方を向いた。




「う、うん。何かこの2つのルール、似てるなって」


 ボクがそう漏らすと、先生は口元に指を当てて、少し考える仕草をした。


「確かに! 止まっている物体は止まり続ける。動いている物体は、同じ速度で動き続ける。何か似てる気がするね?」


 それを聞いたサラミちゃんが、おかしそうに笑いながら


「はは、じゃあ見た目もそろえようよっ」


 と言うと、1つ目のルールがくるくると回り出し、新しい文字に置き換わった。




『物理法則1:止まっている物体は、他の影響がない限り、止まり続ける』


『物理法則2:動いている物体は、他の影響がない限り、同じ速度で動き続ける』


 ↓


『物理法則1:止まっている物体は、他の影響がない限り、同じ速度で止まり続ける』


『物理法則2:動いている物体は、他の影響がない限り、同じ速度で動き続ける』




「ねね、近くなったでしょっ」


 確かに見た目はそっくりになった。


 ただ、今度は「同じ速度で止まる」というよく分からない言葉が現れた。


「うーん、でもさ、同じ速度で止まるってどういう意味? 止まっていたら速度なんて『ない』んじゃないの?」




  ●” 「ピタッ」




 すると今度は先生が静かに首を振って答えた。


「その『ない』、はあまりいい言葉の使い方じゃないね!」


 ボクがびっくりして先生の方を向くと、先生は更に解説をしてくれた。


「速度なんて『ない』って言うと、速度というものが測れないとか、定まらないとか、考えることができないとか、そういうことを表すのかな? それとも、速度が値として0であること、つまり速さが0であることを表すのかな?」


 なるほど、ボクが言った『ない』はそのどちらにも取れる。


 しかも、言った本人のボクですら、その2つの意味をごっちゃにしてた。


「速度が0であること。そっか、0であることは、考えられないこととは違うんだね。ちゃんと定まっているんだ。だから、止まっている時の速度も、ちゃんと意味を持つんだね」


 ボクが納得してそう言うと、先生は大きく頷いた。


「うん! その通り! 『考えられない』という意味の『ない』と、0であるという意味の『ない』を、混ぜて使っちゃいけないよ!」




 さて、2つのルールに戻ると、やっぱりまだ違和感がある。


「この『同じ速度で止まる』っていうのと『同じ速度で動く』っていうの、どっちも『同じ速度である』にしていい気がするんだよなあ」


 そう言うと、2つのルールが互い違いにくるくると回り出し、更に新たな文字へと置き換わった。




『物理法則1:止まっている物体は、他の影響がない限り、同じ速度で止まり続ける』


『物理法則2:動いている物体は、他の影響がない限り、同じ速度で動き続ける』


 ↓


『物理法則1:止まっている物体は、他の影響がない限り、同じ速度であり続ける』


『物理法則2:動いている物体は、他の影響がない限り、同じ速度であり続ける』




「わわ、ちょっとすっきりしたね」


 サラミちゃんが感心しながら、嬉しそうにパチパチと手を叩いてくれた。


 ボクは少し嬉しくなって、顔がぽかぽか熱くなるのを感じた。


「ねね、だったらこれ、場合分けいらないんじゃない?」


 サラミちゃんがそう言うと、今度は2つのルールが混ざり合い、新たな1つのルールとなった。


 ボクたちはこれを、「慣性の法則」と名付けた。




『物理法則1:止まっている物体は、他の影響がない限り、同じ速度であり続ける』


『物理法則2:動いている物体は、他の影響がない限り、同じ速度であり続ける』


 ↓


『慣性の法則:物体は、他の影響がない限り、同じ速度であり続ける』

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