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物理を1から作りましょう! ――見習い神様の世界創造  作者: するめいか英明
第1章 慣性の法則
3/11

第3話 動いたけども

「ねね、もしかして、『速さが同じまま』、とかじゃだめ?」


 ボクがウンウン悩んでいると、助け舟を出してくれたのはサラミちゃんだった。


 サラミちゃんの答えを聞いて、ボクはハッとした。


 ボクが考えていた『そのまま』は、まさしく『速さが同じまま』という意味だった。


「そっか! じゃあ法則を変えるよ!」


 先生がそう言うと、2つ目のルールがくるくると回り、新たな文字に置き換わった。




『物理法則2:動いている物体は、他の影響がない限り、【そのまま】動き続ける』


 ↓


『物理法則2:動いている物体は、他の影響がない限り、同じ速さのまま動き続ける』




「ねね、今度はカッコ、なくなったよっ」


 サラミちゃんが嬉しそうに僕の腕を揺すった。


 だけど、ボクの目は、予想外の動きを見せる石に釘付けだった。




 ―=≡● 「ビューン」


    ↓


 ●≡=― 「ビューン」


 ↓


 ―=≡● 「ビューン」


    ↓


     ―=≡● 「ビューン」


        ↓


     ●≡=― 「ビューン」




「これ、向きがバラバラ……」


 ボクががっかりとした声で呟くと、サラミちゃんも


「れれ? そっか、速さが同じだけじゃだめ、か」


 と言って照れ笑いを浮かべた。


 サラミちゃんの八重歯がチラリと見えて、ボクはちょっぴりドキッとした。


 すると、いきなり先生が両手でがっしりボクの肩を掴み、


「……今、何て言った?」


 と問い掛けた。




「バラバラ?」


 ボクが答えると、先生は長い髪ごと首を振りながら「その前!」と言った。


「これ?」


 更にボクが答えると、先生は更にブンブンと首を振りながら「その後!」と言った。


「……向きが?」




「それだよ!」


 先生は両手でボクの肩をバンバンと叩いた。ちょっと痛い。


「向き! 速さと向き! どっちも決めなきゃ、動き方は決まらない! だから石がこんな風にめちゃくちゃ動き回ってるんだね! もちろんこれも1つの物理の形、矛盾はないよ!」


 なるほど、これまでのルールでは速さについてしか決めなかったから、まだまだ動き方が決まりきってないんだ。


 いくら矛盾してないとは言っても、ボクはもっとシンプルなものがいい。


 するとサラミちゃんが手を上げながら


「ねね、じゃあさ、向きもそのままにしようよ」


 と提案した。先生が


「了解したよ!」


 と言うと、2つ目のルールが再びくるくると回り、新たな文字に書き換わった。




『物理法則2:動いている物体は、他の影響がない限り、同じ速さのまま動き続ける』


 ↓


『物理法則2:動いている物体は、他の影響がない限り、同じ速度で動き続ける』




「……速度って、速さとどう違うんだろ?」


 ボクがそう呟くと、先生がまた腰に両手をつけて、フフーンともったいぶった。


「速さと向き、両方のことを指して『速度』と呼ぶんだよ! まあ物理の言葉使いね!」


 するとサラミちゃんがボクの腕をゆさゆさと揺すり、


「ねね、見て見て。石」


 と言った。




 ―=≡● 「ビューン」


    ↓


    ―=≡● 「ビューン」


       ↓


       ―=≡● 「ビューン」



 それは、ボクがイメージしたシンプルな動きそのものだった。

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