1.疑惑
フランス生まれの哲学者 ルネ デカルトは「我思う、ゆえに我在り」という言葉を残した。
自分は本当にこの世に、この世界に存在しているのか。この世界は幻、夢なのかもしれない。
しかしそれを証明する方法などこの世には無い。不可能である。
例えば1+1という式の答えは当たり前だが2である。
しかしそれがただ人類が思い込みで2と認識しているだけだとしたらどうなるだろうか。
真の答えは3かもしれない。
何度も言うようで諄いが、それを証明する方法など無い。不可能である。
不知火真華はそんな事を考えていた。
ある真夏の休日。蝉の音が窓越しに響いてくる。
ベットに寝転がりながら手を額に当てていた。
「なに考えてんだろ、あたし」
夏休みも近くなったある日のお昼。
机をくっつけてお弁当を食べる2人の少女の姿がそこにはあった。
「ねぇ今日いい感じに卵焼きできたの、ちょっと食べてみてよ!」
真華の友人の結城雪穂は前のめりに真華の顔を見ながら訪ねた。
「ふぅ〜ん」
見た目はいつもと変わらない卵焼き。
何が変わったのか真華には理解出来なかった。
「な〜んも変わった感じはしないけどね。」
「ひどい!真華ちゃんひどい!ド直球で言わないでよ!」
潤んだ瞳を見て無意識に「ごめん!」という真華。
「ほんとに美味しく出来たんだって!今日朝試食して感動したんだって!」
「へぇ〜。いただきます……」
卵焼きを口にいれようとしたその時。
真華の脳裏にこんな事が浮かんだ。
[もしこの卵焼きが幻だったら?]
真華は頭を振り『そんな事無い。これはただの卵焼き』と考え食べた。
「真華ちゃん……どうしたの?急に頭なんて振って」
「何でも無い何でも無い。顔に虫がついて。。。確かに。雪穂にしては美味く出来てる」
「『にしては』は余計だよ!ね、美味いでしょ!」
美味かった。いつもより確かに美味しかった。
これが幻?そんな訳ない。食感もあったし、匂いもあった。
確かに卵から出来れる卵焼きである。
家に帰るとベットに寝転がり額に手を当てた。
「熱でもあるのかな……あたし。最近変な事思うし。」
なんでも疑ってしまう事は真華も自覚していた。
ため息が不意に出る。その時。
[もしこの世界が幻だったら]
まただ。どうしちゃったのかな。
[そ、全部この世界の出来事は嘘]
そんなことない。全部真実。それ以外考えられない。
[貴方の存在も嘘]
私は不知火真華。16歳。ちゃんとここに存在している。
[あなたの親も嘘]
違う!!
[結城雪穂も嘘]
違う!!私の周りの人の巻き込まないで!!
[あなたの本当の姿は……]
やめて!!!!!
自分の脳裏に響く言葉との格闘。気付けば汗がでていた。
私は!!!
[孤独]
そう脳裏に響いた瞬間。
真華はまるで気絶したかの様にベットに倒れた。
「私も……雪穂も……全部……嘘なのかな……」
その瞳には
涙が出ていた。




