子供は便利だ
ゴブリン達を倒したことによって俺のレベルが上がった。
現在のステータスはこうなっている。
ステータス
アキト(12)
LV3
体力14
魔力9
攻力9
防力9
モンスター864/1500
アイテム/装備品349/1000
ガチャポイント165128
ジェル26269308
イベント
ショップ
地図
ひとつレベルが上がるごとにそれぞれの力が2ずつ上がっている。これだと、レベルが100になってもステータスは200前後ということになる。最上級のモンスター達のステータスは簡単に1000は超える。頑張っても一人では最上級のモンスター達には敵わないということか。
それでも、モンスター相手にある程度戦えるならそれでいい。
モンサモでの真骨頂は、モンスターを使った戦いだ。魔力が200になれば、強力なモンスターが10体は召喚できる。それに、今だとあとひとつ魔力が上がれば、レアなモンスターが何体かは使えるようになるし、あいつも召喚できる。これなら、この辺のモンスターは大丈夫なはずだ。
「確か、近くに村があったはず」
王都の前に、地図にはいくつかの村があった。俺のいる場所から数キロの所にはコロモ村という村がある。まずは、そこで体を休めよう。
「村に行く前にまずは、ある程度レベルを上げないとな」
村に着く前には、あいつを召喚できるようにはしておきたい。あとひとつ上がれば召喚ができるから、あと2、3体はモンスターを倒さなきゃいけない。まあ、村に着くまでには上がっているだろう。
「さてと…ん?」
何やら金属がぶつかり合う音が聞こえる。誰かが戦っている?
とりあえず、様子を見に行こう。
ーーーーーーーーーー
音のする方へ行ってみると、案の定、人らしき者とモンスターが、剣を交えていた。モンスターは…ゴブリンソルジャーかな?
ゴブリンソルジャーはさっき戦ったゴブリンと同じノーマルモンスターだが、ノーマルモンスターの中では、中位のモンスターとされている。そんなゴブリンと生身で戦えるということは、それなりのレベルがあるということか?
戦っているのは、茶色い髪をした、冒険者風の格好をした男だ。
「グギィ!」
「ふっ!はあっ!」
「グキャー!?」
どうやら決着がついたみたいだ。隙をついて頭に剣をおとし、とどめをさしたようだ。ゴブリンソルジャーの基本ステータスは、攻防平均70前後。今の俺ひとりではとても勝てない。それを悠々と倒したあの男は、やはり、なかなかの実力者なのだろう。
「さて、どうするか…」
あの男は見たところ、見た目どうり冒険者なのかもしれない。なら、道案内をしてくれるかも。だけど……いや、声をかけるべきか。
「おい、入るのは分かっている。出てこい!」
「っ!?」
突然男が俺の方を向いて、出てこいと言う。隠れていたのがばれていたようだ。ここは、素直に出てきて事情を話そう。
「出てきたか…ん?子供?」
「えっ?」
今、俺を子供と言ったか?いやおかしい…目の前の男に近づいて気づいたが、この男の歳は俺と同じか少し上ぐらいに見える。なのにこの男は俺を『子供』と…聞き違いだろうか?
「おい、なんでお前みたいなガキがこんなところにいるんだよ?」
「んん?」
やっぱりおかしい…明らかに俺のことを子供扱いしている。俺の歳は17。ここ最近は、子供っぽいなんて言われたこともないのに。
「あ、あの…」
「なんだ?」
「俺ってそんなに子供っぽいですかね?」
「子供っぽいも何も完全に子供じゃねぇか」
「……」
あ、あれー?完全に子供?見た目からして同じくらいの人に子供って言われちゃたよ。確かに背は高いなーとか思ってたけど。
「す、すみません。ち、ちょっと待ってください」
「ん?あ、ああ」
俺は男に断りをいれて、自分の姿を改めて見てみた。
「……」
「おい、どうした?」
男に心配されているが、今はそれどころではない。
この世界に召喚された時、服装が冒険者っぽくなっているのには気づいていたが、容姿は気にしていなかった。いや、気にしている暇がなかった。いきなり別の世界にこさせられて、状況を整理するためにも、今必要がないことは、頭のすみにやっていた。だが、男の発言によってはっきりした。
「俺、子供になってんじゃん…」
って、いやいやいやいや!?なんで若返っちゃってんの俺!?
何をどうしたら若返っちゃうんだよ!と、とりあえず、まずは落ち着こう。
「そういえば…」
そういえば、ステータスの名前の所に数字が書いてあったな。あれ、今の俺の歳ってことか?なら今の年齢は12歳ということに…いやいやだからなんのために!イベントが長期的になりそうだからか?いや、それだと本来の歳でもいいはずだ。何も若返る必要はない。何か別の理由があるのかもしれない…
まずそこはおいといて、自分の顔も確認しよう…
「大丈夫か?」
「う、うん。大丈夫だから、もう少し待って」
「ああ、わかったよ」
この人、案外優しいな。それよりも顔だ。スマホの画面からある程度は見えるはずだ。
「…なるほど」
そこにあったのは確かに俺の顔だった。しかし、そこに写っていたのは、子供の頃の自分そのものだった。
「はぁ…」
「もういいのか?」
「うん、もう大丈夫」
とりあえず、見た目のことはいい。どうせ変えようもないんだし。今はとにかく怪しまれないようにするべきか。
「お兄さん、実は俺ね…迷子みたいなんだ」
「なるほど迷子か」
子供は迷子って定番だよな。本当は迷子ではないけど、今はこれでいい。あともうひとつ嘘をつこう。
「家は何処だ?送るぞ?」
「いや、迷子は迷子なんだけど、家に帰るわけじゃないんだ」
「ん?家出か?」
「違うよ。俺は冒険者になるために王都に向かってるんだ!」
「なに?冒険者に?」
通用するか?俺の考えでは、冒険者を目指して旅をする子供をイメージしているが、冒険者がこの世界に存在するかもわからないし、歳も若すぎるかもしれない。だか、冒険者はあるはずだ。モンサモでは、俺達は冒険者と呼ばれていたからな。
「冒険者になるには若すぎなんじゃないか?見たところ11、2歳くらいだろ?冒険者になるには最低でも13歳ぐらいじゃないときついぞ?」
「えっ、そうなの?母さんも、父さんも許してくれたよ?」
「お前の親は心配してないのかよ…」
「『お前は大丈夫だ』って見送ってくれたよ」
「まだ幼い子供を見送る親とはいったい…それよりお前強いのか?」
「もちろん!俺の力見せてやる!はぁ!」
俺はスマホを弄ってスライムを召喚する。いろいろリスクがあるが、試したいことがあるからだ。
「へぇ、召喚か。でもスライムか」
よし。
「どうだ!すごいだろう!」
「はっはっは、確かにすごいな。スライムを召喚できるなんて」
「だろう!」
明らかに俺を小馬鹿にしているが、それでいい。これが、子供なんだ。それに、いろいろと確かめられた。
「よし!ガキ、俺についてきな!近くに村がある。実は俺も冒険者で、依頼があってここまで来ていたんだ」
「そうなの!?やっぱりお兄さん冒険者なんだ!」
「ああそうだ。」
「すごい!」
「ああ。ただ、ひとつ注意しておこう。モンスター召喚ができるのは確かにすごいが、スライムだけじゃあこの森は危険だ。モンスターには遭遇したか?」
「まだ、モンスターには遭遇してないよ」
「そうか、ここまでモンスターに遭遇しなかったのは運が良かったな。遭遇していたら確実に殺されていたぞ」
「ええっ!?そんな…」
「それほど、ここは危険なんだ。次来るときは他の冒険者と一緒にくるんだぞ」
「……わかったよ。次からは気をつけるよ」
「よし、良い子だ。ついてこい」
「うん!」
我ながら名演技だな。今なら天才子役と言われてもいいはずだ。
とりあえず、怪しまれることなく村まで付き添ってくれるようにできた。それに、いろいろと情報もとれた。
まず、モンスター召喚はこの世界にも存在していること。それと、この歳でモンスターの召喚ができるのは珍しい可能性があること。他にも、スライムは下級モンスターだと認識していることや、冒険者が13歳からでないとなるのは厳しいこと。まだまだ、情報が仕入れそうだ。
「そうだ、名前何て言うんだ?」
「俺はアキト。お兄さんは?」
「俺はザルテ、よろしくな!」
「よろしく!」
いろいろと話を聞きながらザルテと共にコロモ村へと向かった。
子供は便利だね。
………そういえば、レベル上げてねぇな。