またもあの地へ
あのドーマとかいう奴との絡まれイベントから数日が過ぎ、なんとか弱者を演じながら一日一日を過ごしていた俺。そして今日こそは、あの訓練を抜け出すため、さらに早い時間帯に来たつもりだったのだが…
「嘘だろ…」
「なんで…」
「どうする?」
現在、冒険者ギルドは騒然としていた。
「『太古の大森林』のモンスターが暴れただしたって本当か?」
「ああ、なんでもあの森から一度も出てこなかったモンスター達が急にそこらの村や森に現れ始めたらしい」
周りの冒険者たちが言うように、最近『太古の大森林』のモンスターが近くの森や村で暴れているらしい。あそこにはリチュアがいて他のモンスター達の統制も取れていたはずなんだが…
「おう、来たか、アキ」
「ザ、ザルテ…」
「まーた訓練から逃げようとしてたか?」
「い、いや…」
「……」
この数日間はなんとかザルテから逃げようとしていたんだが、ことごとく見つかっていた。実は、ザルテは俺が逃げようとしていることを感づいていたらしく、何人かの冒険者に声をかけていたらしい。今日こそは何としても逃げ切ろうとさらに早く来たが結局このざまだ。
「まぁ、いい。そんなことより、今は大変なことになっているんだ。アキ、お前も聞いとけ」
「えっ?」
「アキもこの騒動の原因はなんとなく聞こえていたはずだ。今からギルドの方から説明がある。お前も聞いておいた方がいい」
「分かった…」
やはり、『太古の大森林』のモンスターが暴れているのは、よほどの事態のようだ。ギルドの方でもすでに動き始めてる。
「皆さん!現状の報告をいたします!」
受付嬢のパルナさんが出てきて、『太古の大森林』について説明し始めた。
「『太古の大森林』のモンスターが暴れていると報告があったのが3日前。それからA級以上の冒険者達に依頼を出して討伐してもらっているのですが、数が足りません!ですので、B級以下の冒険者達にもすでに討伐へ向かったA級以上の冒険者の元に向かい、徒党を組んで残党狩りに参加を要請します!そして、まだ依頼に参加していなかったA級以上の冒険者は緊急依頼ということで、強制的に『太古の大森林』の捜索に移ってください!」
「まじかよ…」
また行くのかあそこへ…いや、どちらかというと俺は残党狩りに回されるのか?
「おい、パルナ嬢!C級B級はともかく、さすがにD級の冒険者たちにはきついんじゃないか?」
「だからザルテさん、パルナ嬢とは…おほん!はい、B級の方たちはA級S級と同じく強制的に緊急依頼ということで残党狩りには参加してもらいますが、C級D級の方々はまだ、『太古の大森林』のモンスター討伐には早いと思うので参加をするかしないかの選択権があります」
「なるほど…どっちにせよ俺は参加か…」
「えっ?ザルテってA級以上の冒険者だったの?」
「当たり前だ!俺の実力なめんな!」
まさかザルテがA級の冒険者だとは…てっきり最高でもB級ぐらいだと思ってたんだが。ということはこいつSRモンスターにも匹敵するくらいの実力があるのか?
うわぁ…なんで俺の周りってこうも強者ぞろいなの?それより、俺はずっとA級以上の冒険者達から訓練受けてたってことか。どうせ勇者もA級以上だろうし…やっぱり少しは強くなったふりをして、さっさと訓練卒業しようかな?
「おい、アキ!」
「えっ、あ、なに?」
「お前も俺について来い!」
「ええっ!?なんで!?」
さっきまでD級の冒険者はきついんじゃないかって提案したのはザルテじゃないか!?なんでそうなったの!?
「ここ最近訓練をしても一向にお前は強くならない。なら、実力者の実戦を見れば少しは良くなると思ったからだ」
「ザ、ザルテさん!アキ君はまだD級です。さすがに『太古の大森林』は危険かと…」
「パルナ嬢、サトルは『太古の大森林』に行ったのか?」
「は、はい。サトル様はすでに王女様と共に『太古の大森林』の捜索に移っています」
「なら大丈夫だ」
「えっ?」
「あいつらはこの半年でとてつもない成長を遂げた。例え『太古の大森林』にいる強力なモンスターどもを相手にしてもそう簡単にやられるはずもない。他にも何人かS級の奴らもいるみたいだし、アキ一人くらい守るのは簡単だ」
「で、ですが!」
「わかった」
「ア、アキ君!」
「A級やS級の人がいるんだ、大丈夫だよ。それに、俺にだって強くなりたいっていう気持ちはある!今回の依頼で少しでも強くなれるなら命ぐらいかけてやる!」
「おお!その意気だ!」
「ううっ…私達に止める権利はありません。本当に、いいのですか?」
「うん、俺も冒険者なんだ!」
「はあ…わかりました」
これじゃあ成り上がりの主人公だな…まあそれくらいは仕方ない。この依頼が終わった後に少し強くなったふりをして、訓練を卒業。そのあとはC級ぐらいになってその位置をキープ。これでいこう。何より、今回はあの『太古の大森林』で何かが起きているんだ。リチュアに何かあったかもしれないのに行かない手はない。
「それでは、冒険者の皆さん!準備が整い次第、各地へ向かってください!熱き冒険を!!」
「「「おおっ!!」」」
「『熱き冒険』?」
「ああ、あれは緊急依頼の時の掛け声みたいなもんだ。それより俺達もさっさと準備して『太古の大森林』に向かうぞ!」
「う、うん!」
リチュア…お前に何があったんだ?少なくともピュアを悲しませるようなことにはなっているなよ…
こうして俺はまたもあの地へと向かうのだった。




