暴れん坊
今日もなんとか平和でありますように。…これフラグ?
「おい、小僧!なんでおめえみたいなガキが冒険者してんだよ!」
フラグでした。なぜか俺は今、いかにもな冒険者に絡まれていた。
なぜこうなったのか…それはまぁ、いろいろあったんだよ。とりあえず時をさかのぼって―――――
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「いいか、人目が少ない所以外は極力スマホの中に居ろ」
「うん…わかった…」
「心配すんな。人がいないところでは遊んでやるから」
「うん、わかった!」
冒険者ギルドに向かう際、俺はピュアにスマホの中に居てもらうよう言っておく。まあ、当然のことだが。
それよりも運営からの情報をもう少しまとめておこう。初のコンタクトでプレイヤーの情報の他にも、特殊モンスターというものが存在していると書かれていたし。というより…
「ピュアも特殊モンスターだよなぁ…」
「ん?」
だって、明らかに他のモンスターと違うでしょ。だいたい、進化じゃなくて特殊進化モンスターと書かれてる時点で、もう確定。
「それに、普通にモンサモのシステムすり抜けてるし」
ピュアは普通のモンスターとは違い、いつでも『サモン』と唱えなくても出てくることが出来る。つまり、言い方を変えれば、モンスターボックスという名の堅牢を破り、モンサモという名のシステムを簡単にすり抜けられるほど異常なモンスターという事なんだ。
「見た目もそうだけど、この力のことを考えたら、存在自体知られたらまずいな」
「なーに?どうしたのー?」
「いや、なんでもない…ほれ、さっさと戻れ」
「はーい!」
こいつの性格だと、とても隠しきれるかは疑問だが、何とかしていくしかないか。
「さて、冒険者ギルド、行くか」
「おー!!」
「いや、だから戻れ」
本当に隠しきれるのか?
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そんなこんなで冒険者ギルド。
「どれどれ、ザルテは…いないな!」
ザルテがいないうちにさっさと依頼を済ませて今日をしのごう。だからこそ朝早く起きたんだから。
「さて、今日は何をしよ―――――」
バァンッッ!!
「がっはっは!戻ったぜ~」
すごい勢いで扉が開かれたと思ったら、何やらゴツイ奴が入ってきた。嫌な予感…
「ドーマだ…あいつ『暴れん坊のドーマ』だよ」
「なんであいつが…」
「勇者が追い出してくれたんじゃ…」
「聞こえてんぞぉ!てめえら!」
「「「ひっ」」」
うん、嫌な予感どころか、絶対にまずい状況になるだろこれ。だいたいなんだよ、あのいかにも噛ませ臭満載のやつは。絶対例のイベント発生させるだろ。
「まぁ、いいか。それより俺は…ん?なんだてめえは?」
「あっ…」
はい、やっちゃったよー。すぐ隠れればいいものを、ぼーっと見守ってしまったが故に、普通に気づかれた。
「なんでこんなガキが依頼ボード見てんだよ」
「えっと、その…」
「ドーマさん!その子も冒険者なんです!」
余計なことを!受付嬢!これじゃあ…
「んだとぉ!?おい、小僧!なんでおめえみたいなガキが冒険者してんだよ!」
ほらこうなる。はぁ…また定番のイベントだ。
冒険者絡まれイベント。これは冒険者ギルドに来る際に、ほとんどの主人公が通る道である。そしてたいていの主人公はコテンパンに倒すわけだが…
「すいませんしたー!!」
即行土下座。
いやいや、俺主人公目指してないし。弱者演じてるし。倒しちゃったら終わりでしょ。ここは大きく下手に出ておくべきだ。
「ふん。まぁ、いいだろう。とりあえず今回は見逃してやる。本来なら子供の冒険者と聞くだけでむかつくが、今は機嫌がいいしな。それに、俺は別の奴に用がある」
「ありがとうございます!!兄貴!」
なんと!これは運がいい!このままいけばこのイベント、事を立てずに終わらせ―――――
バァンッッ!!
「何をしているんだ!ドーマ!」
「んん?がははっ、やっと来やがったか~!このクソ勇者!」
おう…勇者君こと、サトル君登場です。ははは、せっかく事を立てずに終わると思ったんだけどな…
「よくも俺の親友に土下座なんてっ!」
えっ?いつの間にか親友だった?せめて知り合いにして!これじゃあ親密だよ!
「ああっ?そんなこと言われてもこいつが勝手に…」
「黙れ!いつもいつも他の冒険者をいじめてるから、俺に負けたんだろ!」
「んだとぉ~…ふん、ちょうどよかった、実はここにまた来たのは、おめぇに用があったからだ」
「また俺に負けに来たのかい?」
「ふっ、前の俺とは違うぜ」
どうやら、勇者君が俺の代わりに絡まれイベントを済ましてくれるようだ。というよりこの様子だと結構前に済ませていたらしいな。最初は迷惑だと思ってたけどしかたがないな、このまま勇者君に託すとしよう。
「表にでな!このクソ勇者!」
「望むところだ!返り討ちにしてやる!」
絡まれイベントスタートだ。




