特殊モンスター
アーセウスの王都にある宿のひとつに泊まっていた俺こと竹中空斗は、現在固まっていた。
「うう~ん…あっ、ごしゅじん~、おはよお~」
朝起きると、見たこともない銀髪赤目の美しい娘が隣で寝ていたのだから。
これ、なんていうテンプレ?朝ちゅん?
ーーーーーーーーーー
これは、事件が起きる日より一日前のことだ。
ザルテとサトルによる特訓でなんとか弱者を演じた?俺は宿をとって、部屋の中でくつろいでいた時、ふとピュアの強化でもしようかと思った。
「そういえば、まだ強化の途中だったしな」
ピュアはこの半年で、ピュアコドラからリトルピュアコドラへと進化した。ただ、少し疑問に感じることがある。
「なんで、進化後の名前がピュアドラゴンなんだ?」
ピュアコドラの時のレア度はRだった。それが進化してSRに。なのに次はURに進化するのにスピリチュアルドラゴンではなくピュアドラゴン。てっきり、リチュアと同じ名前になると思ったんだが…
「とりあえず、強化させて進化だな」
えーと、強化を選択。強化魔石で大幅にレベルアップして、集めた進化素材で進化と。
ピュアドラゴン(UR)
Lv1
コスト28
体力510
魔力620
功力500
防力730
スキル 神聖の炎撃 神霊龍の癒し
「まあ、レベルも1だしこんなもんか」
URモンスターであっても、レベルはリセットされステータスも低い。これはどのモンスターでも同じだ。
それより、確認するとやはりピュアはもうひと段階進化できるようだ。ただ、いつもの進化と違う…
「特殊進化?初めて見るぞこんな項目…」
いつもならモンスターを選択すると強化と進化の項目が出るんだが、ピュアに限っては今までは普通の進化だったのに、URに進化させた後には特殊進化に変化していた。メタスラのようなイベントモンスターの進化とも違うようだな。必要な素材は…基本は一緒だな。だけど、これは何なんだ?
ピュアドラゴン進化条件
レベル1 足りてません。
必要魔石 進化の魔石15/15個 龍の魔石3/3個 進化の大宝石1/1個
必要アイテム 神霊龍の心魂
親密パラメータ Max
「レベル、魔石まではいいとして、このアイテムとパラメータはなんだ?」
普通の進化には必要な魔石とレベルがマックスであることが進化の条件だった。だけど、特殊進化はさらに、アイテムとパラメータが追加されていた。
「パラメータはマックスだからいいのか?でも、アイテムの方は…あっ、そういえばあるじゃん」
実は、リチュアの奴から『これは我が子に必要な物だ』と言って渡されていた。まさか、こんなフラグがあったとは…
「じゃあ、レベルが上がれば進化できるんだ」
そうと決まればさっさとやってしまおう!この特殊進化でピュアがどう変わるのか楽しみだ!
「くそお、ここまで使わずにとっておいた、強化の大魔石…すべてをピュアに!」
今まではただの強化魔石でも在庫が山のようにあったため強化できていたが、先ほどの強化でだいぶ消費してしまった。なので使わないようにしていた、とっておき…強化の大魔石をすべてつぎ込んでピュアのレベルをマックスにした。
「ははは、ショップで魔石は購入できるけど高いからなあ…とにかく進化だ!」
進化を押してついに、ピュアの最終形態が明らかになった。
スピリチュアル・ピュア・ドラゴン ノーマルモード(AR)
Lv1
コスト40
体力610
魔力720
功力600
防力830
スキル 神聖の炎撃 神霊龍の癒し 形態変化
「ノーマルモード?形態変化?なんだこれ?」
特殊進化の影響だろうか?とても気になる項目だ。でもここで召喚するわけにもいかない。ここは宿屋の中だ。進化したピュアの大きさを考えるだけでも召喚した時のいやな予感しか感じない。
「とりあえず今日は寝て、明日の訓練が終わった後に、誰もいなさそうなところに移動して召喚するか…」
そうして俺は一人で寝たはずだった。
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「どうしたの?ごしゅじん?」
「うん、きみ誰?」
時は戻って朝。昨日のことを思い返しても、こんな娘と出会う場面がなかったのを確認した俺は、少女に問いかけた。
「ひどいよ~ごしゅじん~私のこと忘れたの?」
「えっと、その…」
いやいやいや!覚えてるも何も全然知らないんですけど!昨日の夜何があったんだ!?知らぬ間にこんな娘を連れ込んだとでもいうのだろうか。目立たない目立たない言っていた俺が、無意識のうちに犯罪に手を染めていたとは…
「もう、ごしゅじん!なんでわかんないの!」
「むむう…」
だいたいなんでご主人なんて呼ばれてんだ、俺?まさかそんな高度なことまで強要させていたというのか俺は!?こんなかわいい娘にご主人なんて…
「ん?…あれっ?ご主人?昨日の出来事…形態変化?ノーマル……もしかしてお前…ピュア?」
「そうだよ!やっと思い出した!?」
「ええー…」
まさかの、ピュアだった。いや、なんで?
「いや、なんで?」
「何が~?」
声に出してしまうほど、疑問まみれだった。
「いやいや、なんでお前人間になってるんだよ!?ま、まあ予想はついてるけど…」
「昨日ごしゅじんが私を強くしてくれてから、なんとなくできたの」
「うーん、強く…ねぇ…」
強くとは、進化のことだろう。昨日は確かめないで寝てしまったが、ピュアのスキルに形態変化というものが追加されてたのだ。
「だからといって、なんで人間に変化しちゃうかな…」
ピュアの姿は、子供から大人へと変化する15歳くらいの女の子だ。その割には精神は幼そうだが…
見た目は美少女の類に余裕で入るだろう。セルティと同じ銀髪ではあるが、かおつきは全くの真逆。セルティはどこか凛としているというのか、どこかお姉さんを思わせる顔つきをしているが、ピュアの顔はだらしないほどまでゆるゆるしているイメージがあり、俺より年上の姿をしているのにどこか妹のようだ。
「ピュアはね~ごしゅじんと同じ姿になってお話ししたいなと思ってたんだよ~」
「ん?そうなのか」
「そしたら、この姿になれたんだ~」
「へえ…」
ピュアの思いによってこの姿になった?あの特殊進化は普通とは違っていた。つまり、ピュア自身も普通のモンスターと違うのかもしれない。その証拠に―――――
「ピュアを俺は召喚した覚えがないんだが…」
「ん~…それもなんとなく出たいなと思ったら出られたんだ~」
「なんだそりゃ」
普通モンスターから自発的に出られるはずがない。今までも俺が『サモン』と唱えるかスマホの召喚を押さない限りは出てくることはなかった。それが、進化した瞬間にこのざま…完全にあの特殊進化が影響してると踏んだ方がいいだろう。とにかくこのままではまずいのは確かだ。
「ピュア」
「なーに、ごしゅじん!?」
「うわっと、近い近い」
「ごめーん!それで、なになに!ピュアになにかようかな!?どんな話がしたい!?何して遊ぶ!?」
「落ち着け!落ち着け!どんだけ元気なんだよ…」
「えへへ…だってごしゅじんと話せるのがうれしいんだもん!」
「そうかそうか。だが、喜んでるとこ悪いんだが、まずは説教をさせてくれ」
「ええーーー!!?」
「まず、俺の許可なく出てきたこと。まあ、今回は他に人がいないからいいけど、次出てくる時も他に人がいない時だけにしてくれ」
「そんなぁ…もっとごしゅじんのそばに居たいのに…」
「駄目です!もし人がいるときに勝手に出てきたら、俺はお前を置いて姿を消さなきゃいけない」
「そんなのやだよ!わかった!出てくる時は人がいないときにするね!」
「よしよし、いいこだ」
「えへへ」
少しきつい言い方だったがこれは必須事項だ。なんせ、こんな美少女が俺の隣を歩いてたら、目立ってしまうからな。それ以前にこいつには、普通の人にはない角や翼がある。これじゃあ、注目してくださいと言ってるようなもんだ。
ったく、なんでこうも次から次へと面倒ごとが来るかねぇ。はあ、修行してた日々が懐かしい…
「ん?スマホがなってる…なんかあったか?」
スマホがなるのは、基本モンサモのことでしかない。イベントで報告でもあるのだろうか。
スマホを開いた俺は、そこに書かれている内容に目を離せなかった。
こんにちは、プレイヤーの諸君!運営様だよ!
このイベントが始まって、初めての運営からのコンタクトだった。




