怒濤の展開
なんだかんだと冒険者ギルドへたどり着いた俺達は今、ギルドカウンターにいる受付嬢の前まで来ていた。
「あら、ザルテさん、セルティさん、こんにちは。セルティさんは報告ですね。あちらのカウンターでご報告ください。」
「わかった。兄さん、それとアキ、私はあちらで報告を済ませてくる。」
「ああ、アキのことは任せな」
「行ってらっしゃい…」
「では、またあとで」
そう言い残して、セルティは隣のカウンターの方へ行ってしまった。
「それで、ザルテさんは今回どのようなご用件で?」
「ああ、実はこいつを冒険者登録させてほしいんだ」
「この子ですね。名前はアキ君だったかな?」
「はい…冒険者登録をお願いします」
「はい、ではここに、ご記入お願いします」
そう言って、受付嬢は一枚の紙を渡してきた。内容は名前、年齢、性別、パートナーモンスター…パートナーモンスター?
「あの、パートナーモンスターとは?」
「パートナーモンスターとは主に使役するモンスターのことです。ある意味、冒険者のパラメーターといえますね。冒険者は強くなればなるほど、パートナーモンスターも変わっていきます。そのパートナーモンスターの強さが冒険者の実力、ということになりますので」
「なるほど、冒険者も強くなれば自然と使うモンスターも変わっていく…ありがとうございます」
「いえいえ」
「パルナ嬢、アキはな、まだ12歳なんだぜ!この歳でモンスターを召喚できるなんてすごいと思わないか?」
「なっ!」
なんてことを言ってくれるんだ、こいつは!このままじゃあ…
「ザルテさん、私のことをそう呼ばないでください。…それにしてもすごいですね。てっきり13歳ぐらいだと思っていたんですが。この歳でモンスターを召喚できるなんて珍しいです」
「だろぉ!」
「へえ…あのガキやるじゃねえか」
「期待の新人ってか?」
「実力はどんなもんなんだ?」
ほら言わんこっちゃない。あっという間に注目の的だ!これじゃあ、面倒なことがいろいろ起きてしまう。その前に修正を…
「モンスターを召喚できるといっても、スライムしか召喚できないんですけどね」
「えっ、アキ、お前まだスライムしか使役してないのか?」
「だから、怖くてあまりモンスターと戦ってないって言ったじゃないか。俺の実力は半年前からほとんど変わってないよ!」
あえて大きめに声を出す。これなら…
「なんでぃ、実力はねえのか」
「期待して損したな」
「あーあ、つまんねえの」
「なっ!お前らなぁ!アキだって頑張ってんだぞ!」
「いや、いいんだよ、ザルテ。俺が弱いのは事実なんだから」
「そんなこと言ったってよぉ」
「大丈夫!少しずつでも強くなればいいんだから!」
「そうか…?」
フフフっ、完璧だ!いかにも期待の新人が来たムードから、あっという間に、残念ムードへ移行した。これなら、弱者と認識される。
「とりあえず、これを…」
「あっ、すいません。……はい、大丈夫です。アキ君、気にしなくていいですからね。ここの人は悪い人達ではないですから」
「ありがとうございます」
「はい、これがギルドカードです。冒険者にはDランク、Cランク、Bランク、Aランク、Sランクとあります。アキ君は、なり立てなので、ランクはDになりますね。ランクは依頼をこなしたり、特殊な条件をクリアすることで上がっていきます」
「わかりました」
「あと、カードの色もランクごとに変わります。Dなら青、Cなら黄、Bなら赤、Aは白で、Sが黒になります。あと、ここで依頼を受けるときについてですが、依頼にもランクがあり、冒険者のランクと同じでD~Sまでありますので、自分のランクに応じた依頼を受けてくださいね」
「はい、わかりました」
「では、次に―――――」
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「では、これで説明を終了します。よい冒険を」
「はい!」
受付嬢の長い説明が終わって解放された俺は、早速依頼掲示板の所へ…あれ?ザルテは?
「おい、坊主…」
「んっ?うわっ!」
どういうわけか、俺の前にずらっと他の冒険者が並んでいた。なぜか、顔にあざがある…
「さっきはすまなかったな…悪気はなかったんだ」
「すまねえな」
「俺もこの頃はそんなもんだったよ。気にするな」
「あっ、は、はあ」
なんで、急にこんなことに……ああ、そういうことか。
「おめえら、もっと誠意ってもんがねえのか!」
どうやら、ザルテが謝らせていたようだ。別にいいのに。
「うるせえな!誤ったんだからいいだろうが!」
「そうだ、そうだ!ザルテだからって調子乗りやがって!」
「よーし!俺らでザルテのやつをやっちまおうぜ!」
「「「オオーーッ!!」」」
「なっ!?お前らぁ、あっ、ああああぁぁぁぁーーーーーーーー!!」
おいおい、どんだけ賑やかなんだよ…目立たないですんでるからいいけど。それにしても、ザルテって若いのに、ここのゴツイ冒険者達相手でも引かないな。さすが、モンスターを使わないで戦う冒険者だ。
「ふふっ、面白い人達でしょ」
「ええ、まあ…あっ今の内に依頼をうけますね」
「そうですね。依頼はあそこでお探しください」
「はい」
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「じゃあこれでお願いします」
「はい、薬草採取Dランク。受注しました。行ってらっしゃいませ!」
さてと…気づかれる前に出るか。折角ザルテが、代わりに目立ってくれてるんだ。その気持ちも汲んでやらないとな。
「どれどれっと…うお!?悪い!」
「あっ、大丈夫。それよりこの騒ぎは?」
「ああ、これはザルテが…えっ?」
「ん?」
俺は硬直してしまった。なんせ目の前にいるのは、コロモ村に来ていた勇者だったのだから。




