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兄妹だった

王都についた。やっとここまでこれたのだ。ある意味こんな時間をかけてくる方がめんどくさくないのか?と思われそうだが、そんなことはない。修行を経て強くなったものが旅立つ…なんかワクワクするじゃないか。まあ、その強さを表だって発揮するつもりもないけどね。


「それにしてもきれいだなぁ」


「ここに来るのは初めてだったか。確かにここはアーセウスでも自慢の場所だ」


ここ、アーセウスの王都はまず、丘陵地帯に位置してると言えばいいだろうか。特徴的なのは、その中心にある大きな城。その周りに町があり、王城へと向かう途中にあの森にあった大樹より少し小さい木がそびえ立っている。その近くには、何やら大きな…学園?らしきものも立っている。


「すみません。あの木とその隣の大きな建物は?」


「あれか?あれは、『太古の大森林』にあるといわれる大樹と同じ、神樹『ユグドラ』。その隣のは、モンスター育成学校だ」


「へえ…神樹と学校かぁ」


なんだろう。めちゃくちゃ興味深い所がいっぱいある。あの『太古の大森林』にある大樹にも行きたいし、あの学校でどんなモンスター育成が行われているかも気になる。あとは、街を歩く人々もすごいな。人それぞれいろんなモンスターを連れていて、なんか新鮮だ。


「ウルフに、スライム。あれは精霊種かな?…あれ?エルフだ…と…?まさか…獣人?」


「ん?どうした?」


「あの…もしかしてなんですけど。あのエルフや獣人もモンスターですかね?」


「当たり前じゃないか。彼らは、私達と似た姿をしているが、しゃべることはない。召喚の儀式をすれば、召喚されるし、捕獲すれば自分たちのものにも出来る。れっきとしたモンスターだ。ほんと君は、時折変なことを聞いてくるな」


「あはは」


まさか、あれらの人間に近い存在もモンスター扱いとは…いや、モンサモにももちろん存在していたためわかっていたが、あれらをモンスターとして扱うものなのか?とどこか考えないようにしていた。でも、今更なのは確かだ。俺だってトールっていう大きさは全然違うが、人型のモンスターを召喚していたし、人に近いモンスターが召喚できない道理はない。まあ、奴隷とは違うから大丈夫だとは思う。割り切っておこう。


「なるほど、モンスター達と共に戦うだけじゃなくて、家事や、農業、店番とかいろいろなこと手伝ってもらっているのか」


よく見てみれば、店番らしきエルフや、鍛冶をするドワーフの姿もある。この世界は、人とモンスターが共存して生きてるんだな。


「今度俺もエルフ召喚しようかな…」


「何か言ったかい?」


「いえ、なんでも…」


「…?まあいい、それよりもうそろそろ兄と待ち合わせの場所につく」


「ああ、そういえばお兄さんがいるんでしたね」


「兄はすごいぞぉ、モンスターが召喚できないにも関わらず自分だけの力でモンスターと戦うんだ!」


「へえ…んん?どこかで見たことがあるような…」


「おっ!いたいた!おーい!兄さん!」


「嘘…だろ…」


セルティが手の振る方、そこに見覚えのある茶髪が…


「おお、セルティ!予定より遅れたな…あれ?アキトか?」


「えっ、アキ、兄さんと知り合いなのか?」


「ええ、まあ…」


またも急展開だな!まさかのザルテとセルティが兄妹だったとは…これは色々と問題が出るな。俺はモブから弱者にジョブチェンジしたんだ。だから、ザルテとセルティでは対応の仕方も全く違う。名前だって、本名のアキトから、あだ名のアキって呼ばせてるし。


「おう!アキト!ついに来たんだな」


「は、はい…」


「なんだ?そんな畏まって」


「えっ?もともとこんなでしたよ?」


「いやいや、そんなよわよわしい感じじゃなかったぞ。もっと元気なガキだったじゃねえか。それが今では大きくなりやがって!」


「いやー僕も大人になったってことですよ」


「うーん、なんかやっぱり気持ち悪いな…前のお前の方が俺は好きだったぜ」


「そっちの方が気持ち悪いわ!!…あっ」


「そうそうそんな感じだ」


「アキ君は、意外とやんちゃだったんだな…」


「えっ、ちがっ!」


「普通に接してくれ、その方が気が楽だ」


「私もその方がいいな」


「うう…」


やられた!ザルテめ、俺の弱者な演技を打ち破るとは…侮っていた。まだザルテは俺が弱者だと思っていない。12歳の子供がモンスターを召喚していたんだからな。いまだにスライムしか召喚できないと気づけば、俺を弱者なんだと思ってくれるはず。


「それにしても、セルティ、お前アキトのことアキって呼んでんのな」


「ああ、私も兄さんがアキのことを、アキトと呼んでいるのに不思議に思っていた」


くそっ!どんどんと面倒な事を!ここは、ザルテにもアキって呼ばせておこう。コロモ村でアキトって名前が広がっている。誰が俺に興味を持っているかわからないしな。


「実は、昔よくアキって呼ばれてたのを思い出してさ。ザルテの時はなんとなく本名で名乗ったけど、今は基本的にアキって呼んでもらうことにしたんだ。だから、ザルテも、俺の事アキって呼んで」


「ふぅん…まあいいが…そんでアキ?お前冒険者になるんだよな?」


「うん、そのつもりだけど…」


「どうした?」


「俺、モンスターが苦手というか、怖いんだ」


「そうか…半年たったんだ。お前も戦いを経験したんだな」


「うん、それで、初めてモンスターと戦ってからモンスターが苦手で、なかなか戦うことが出来なくて」


「それで、私を助けたときに隠れていたのか。すまない、考えてみれば君は私よりも若い。普通の子からすれば、正面切って助けるのは難しいことだったな」


「い、いや、いいんですよ。俺が弱いだけだから…」


「なんで、セルティには畏まっているかはおいといて、セルティ!お前襲われていたのか!何に!?誰に!?」


「おっ、落ち着け!魔力を消費していたところで盗賊に襲われたんだ!そこを、アキ君に助けられた」


「そ、そうだったのか…ありがとう、アキ。この恩は忘れねえ」


「いやいや、助けたといっても回復薬を渡すので精一杯だったし、偶然とはいえ、ザルテには世話になってたからね」


「ああ、それでもだ。よし!俺がお前を一人前の冒険者になるようサポートしてやる!」


「ええっ!?そんな悪いよ!自分で何とかするからさ!」


「いや、このままだとアキは簡単にモンスターに殺されてしまう。せめて、モンスターを一人でも倒せるくらいには成長させてやる!」


「ま、まじで…」


ザルテ…お前はなんなんだ?俺を困らせる天才なのか?でも、俺にも不備はあった。弱者なんだとアピールしてれば、こうなることくらい予想できたかもしれないのに…しくったな。


「よし!そうと決まれば、早速冒険者ギルドへ行くぞ!まずは冒険者登録だ!」


「ええ~…」


「どれ、私も冒険者に報告があるし付いていくか」



当初の予定通り?俺はザルテ達と共に冒険者ギルドへと向かうのだった。



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