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手土産か独占か

「まじか…」


『太古の大森林』の奥深く、大樹がある場所までたどり着いた俺は驚愕していた。


「こんなことが…」


大樹へ近づけば近づくほど大きな木だと感じていたが、その木の下に転がっている物までは予想していなかった。


「これ全部…宝玉なのか…」


大樹の周りには、虹色に光る玉がそこら中に転がっていた。それに、宝玉だけでなく様々なモンスターの魔石もある。


「前に一度、リズベルに見せてもらったが、こんな量は初めてだぁ…百や二百じゃきかないぞ」


魔石の量もすごいが、宝玉がこんなにあるのは見たことも聞いたこともねえ。これだけの宝玉があればどれだけの強力なモンスターが召喚できるか…


「は、はは…こりゃあドラゴンの他にも大きな土産を持っていけそうだ」


これだけの魔石や宝玉、それにスピリチュアルドラゴンが加われば、帝国の戦力増強どころかあっという間に世界を征服出来る。


「その前にドラゴンはどこ―――――」


「ああああああああああああああああああああ!!!!!」


「なんだ!?」


突然後ろから声が聞こえて驚いた俺は、振り向いた。


「なんでお前が…」


「あっ…や、やあ、待った?」


そこには、部下達に任せたはずの、フードを被った正体不明の何者かがいるだけだった。





ーーーーーーーーーー



帝国兵の3人を倒し、急いで俺はサタナスが向かった大樹を目指していた。


「さて、サタナスはどれぐらい強いんだ?」


今の所、今まで召喚したモンスター達は戻していない。七天魔将の実力を考えればできるだけ戦力がいた方が良いと思ったからだ。


「実際、部下でもSRモンスターを使ってたくらいだ。あいつもSR以上のモンスターを召喚できるのは当たり前のはず…もしかしたらURやARのモンスターを召喚してくるかもしれない」


URモンスターがいれば、さすがのメタスラでも勝てない可能性がある。それに、そこにはスピリチュアルドラゴンもいるはずだ。今いる戦力でも足りないかもしれない。


「とりあえず魔力はさっきのレベルアップで全快してる、これなら新しい戦力も投入できるし大丈夫だとは思うけど…っとそろそろ着くな」


気づけば大樹が目の前まで見えていた。とりあえずモンスター達はここに待機してもらって、大樹の周りの様子を確認しよう。


「いるな…」


木の陰から覗くと、サタナスが立っているのが見えた。ドラゴンの姿は見えない。


「ドラゴンは…いないのか?今ならあいつを不意打ちできるな」


あまり正当な方法ではないけど、七天魔将が相手なのだからそれぐらいはやるべきだ。


「よし、お前ら行くぞ…ん?」


モンスター達に指示を出そうとして、ふと大樹の周りに光る何かがあるのに気づいた。


「あれは…あ、ああ…ああああ……ああああああああああああああああああああ!!!!!」


あれは宝玉じゃないか!それもあんなに!


「なんだ!?」


…あっ、やべえ。


「なんでお前が…」


「あっ…や、やあ、待った?」


やあ、待った?ってなんだよ!俺!どこの待ち合わせに遅れた彼氏だよ。それよりも、不意打ちは失敗だ。


「俺の部下達はどうした…?」


「倒した」


「なんだと?少なくとも簡単にやられる奴らじゃねぇ。何者なんだお前は」


「…」


「だんまりか…何が目的かは分からねぇが、俺の部下を殺ったんなら落とし前はつけてもらおうか」


サタナスさんはお怒りのようです。まあ知ったこっちゃないんだけどね。元々、七天魔将は倒すつもりだったんだし。それに、ますますこいつに負けられなくなった。なんせ、スピリチュアルドラゴンだけでなく、こんなに宝玉があるなんて思ってもみなかった。


「あれだけあれば、レアガチャが10回、いや100回?くっくっく、やべえ…」


「なんだぁ?気味わりぃな。さっさと片つけさせてもらうぞ!サモン!暗黒邪龍ヘルヘイム!」


「ッ!」


サタナスが唱え、魔法陣からどでかい黒い龍が現れた。名は暗黒邪龍ヘルヘイム。URの上位に位置する化け物だ。


「すごいな…」


「だてに、七天魔将をやってねえんだよ俺は…しかし、あいつらを倒しただけあってあまり驚いていねえな」


「まあね。出てこいお前ら」


俺は後ろに待機させていたモンスター達を呼んだ。


「ほお…モンスターを待機させていたか。だが、そいつらだけじゃあ俺のヘルヘイムは倒せねえぜ」


「そうとも限らない…メタスラ」


「キュイ!」


モンスター達の中からメタスラが出てきた。準備は満タンだよと言っている感じだ。


「んだぁ?スライムじゃねえか。見たことねえ色だが、そいつがヘルヘイムを倒せるとでも?」


「少なくとも、互角には渡り合える。いけ、メタスラ!」


「冗談きつ…ッ!?」


スライムと見て油断したサタナスへ猛スピードで接近するメタスラ。しかし…


「グガァァァァ!!」


「キュ!?」


あの巨体からとは思えないスピードでヘルヘイムが反応し、メタスラを吹き飛ばした。しかし、メタスラは思ったほどのダメージは負っていない。


「なるほどな。あのスピードに、今の一撃でも大きなダメージがねえ。ただのスライムじゃねえってことか」


「そういうことだ。いくぞ!メタスラ!」


「なら叩き潰せ!ヘルヘイム!」


両方のモンスターがぶつかるその時。


『グガァァァァァァーーーーー!!!!!』


「「ッッ!!」」


上空より、大きな咆哮。あれは…


「ここでくんのかよぉ」


「あれが…」


ヘルヘイムにも負けない大きなの翼。堅く見える銀色の鱗。何物をもかみ砕きそうな牙。モンサモでもあんなモンスターはいなかった。つまりあれが―――――


「スピリチュアルドラゴン!!」



ここに、三つ巴の戦いが始まろうとしていた。



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