ドラゴンが仲間になりました?
久しぶりの投稿です……。待っていてくれた皆様、申し訳ないです……(==;
「なぜ、称賛するんだ? ドラゴンは多種族を極端に嫌う習性があるではないか……」
「あー。そういえばゲームでもいつもそんな感じだもんなぁ」
楽兎のゲームという単語にランとドラゴンが首を傾げる。
ここではゲームなどと言う物は無いのだ。それだけではなく、電子機器さえない。だから国では、連絡を伝える時には空に魔法を使ったりしたりして、信号を送る。
「ラクトが何を言っているのかわからないが……。とにかく、なぜ称賛する必要があるのか、聞いてみてもいいか?」
「いいだろう……。だがそのマエに」
ドラゴンがランの質問に答える前に、魔法陣がドラゴンの下に全体を覆うような形で地面に現れた。
その様子にランが魔力解放をして銀髪に戻るが、ドラゴンは光で覆われ、段々と小さくなっていった。
そして、いつの間にか姿が俺達と同じぐらいの人となった。
「な……お……」
何が起こってと言いたかったランは目の前に立っている人に目が乾くほど開いて口をパクパクと動かしてい
た。
「すっげぇ。さすがファンタジー。ドラゴンが人になるなんて定番だな」
それとは対照的に楽兎はドラゴンの変貌ぶりに感心していた。
鋭い瞳孔はドラゴンの時と同じだ。
しかし、蒼色の髪が生えていて、それがランよりも長く伸びていた。同じく蒼色の瞳。幼い顔にツリ目でキュッとしまったような鮮やかな唇。着ている服は鱗を服にしたような物で。下半身の部分はスカート状になっていた。
その姿から、誰がどう見ても……。
「「お、女の子?」」
「む? 我は元々メス……人間で言うところの女だが?」
しかも楽兎やランよりも年下。具体的に言うなら中学一年生ぐらいの少女だった。
(なんだなんだ? この世界ではみんな男のような喋り方をするのか? って言うか俺は女の子を殴っていたのか!?)
楽兎は心でそう思っていた。
だが、ランの場合は元々軍人。このドラゴンはドラゴンだから女らしい喋り方というのを求めるのが難しいのだ。それを楽兎は考えれなかった。いや、考える頭が無かったというべきか……。
そして女の子を殴っていたと言ってもこの世界では男女とも同等に扱われるので別に苦にすることは無いのだ。
「ど、ドラゴンは人になれるのだな……」
「無論だ。我らドラゴンは先祖代々いろいろな生物に擬態して生活しているのだ。人になる事など簡単だ」
ドラゴンは誇りながら言う。
そこで、楽兎はランが言うよりも先に、ドラゴンに個人的な質問をしていた。
「つまり、今は貧相なペッタンだけどいつでもボンッキュッボンッになれるってことだよな!?」
――ドゴォッ!
ランとドラゴンは楽兎に遠慮なく振られた拳を顔面で受け止めた。二人の拳が楽兎の顔に沈み込んだ。
さすがに楽兎は受け身が取れないまま後ろに倒れ込んだ。
「この男は人間の中の変態なのか?」
「いや……。これまで私が一緒に居た時はこんな事が言える状況に居なかったのでな……」
ドラゴンがランの顔をジト目で訴えているがランは頭を押さえながら唸っていた。
「そ、それでどうなんだ……?」
いてて……と顔を押さえながらドラゴンに訊く。楽兎としてはどうしても訊きたい事だった。
ただの興味本位で。
「まだ言うか……。まぁいい。一度この姿と決めたらこれしかなれぬのだ。だからそのような体格にはなれん」
ドラゴンの声に楽兎はあらかさまに肩を落とした。
その楽兎の様子にランはさらに頭痛を訴える。
「ところで……どこまで話をした?」
「まだ称賛をする理由を聞いていないな」
ドラゴンが話を戻す。
が……。
「そういえばドラゴンじゃ呼びにくいから何か名前決めないか? 俺、いつまでもドラゴンなんて呼んでたくないぜ?」
楽兎がまた話を脱線させた。だがそれに、呆れながらもランも頷く。
「そういえばまだ言っていなかったな……」
「名前があるのか?」
てっきり名前が無いのかと思っていたから楽兎は決めないかといったのだが……楽兎とランは少々驚く。そして、ドラゴンが言うまで二人は静かに待っていると、ドラゴンが口を開いた。
「我の名はアルセイム。友の名はラクトとランでいいのだな?」
アルセイムが確認するように言ったのでラクトとランはそれぞれ頷いた。
「それで、称賛する理由だが……人間はドラゴンが誇り高き最強の種族だから交友を持たぬと言っておるが、それは嘘だ」
「嘘?」
ランの頭の上にハテナが浮かぶ。
「我々ドラゴンにも掟がある。その中の一つに、決闘した他の生物が、我らに攻撃と呼べるものを三度加えるならば称賛せよと。それ以上の決闘が必要ならば敬意を持って相手せよ、とある」
「なぜそんな物が?」
「我々は同じ力を持つ者しか受け入れん。それがドラゴンだ。これ以上の事は言えぬな」
アルセイムはその掟を守り、楽兎、ランとの決闘を切り上げ、楽兎の要求に応じたのだ。
「しかし、物好きな人間も居るものだ。我と友になろうなどと……」
興味深そうに楽兎を見るアルセイム。楽兎は「どうも」といって笑っている。
「私にはこいつの考えることはよくわからない……」
ランはランで頭に手を当てて唸っている。無理もない。
それほど前代未聞の出来事だったのだから……。
「ところでラクトよ。我と友になってどうするつもりなのだ?」
「そりゃぁもちろん旅の仲間に決まってるじゃねぇか! ファンタジーゲームの定番だぜ!!」
ドラゴンを呼び出す召喚術式があるようなゲームを思い出しながら嬉々として叫ぶ楽兎。ちなみに楽兎に定番だという言葉の意味を訊いても答えは返ってこない。
そのとっても楽しそうな楽兎にランとアルセイムは「ふぁんたじーげーむ?」と呟いて首を傾けていた。
「それじゃぁ、ランが行かなきゃいけない場所……えっと」
「ルビーだ」
「そうそう。ルビーって言う国の……どこに行くんだ?」
楽兎の言葉にランが腕を組んで考える。
その際、発展途上な胸が邪魔にならなくて丁度いい。アルセイムよりはある。せいぜいBカップぐらいかと楽兎は考えていた。
「そうだな……私はジュベッタ村の警備をしていたのだが、その村が焼き払われてしまった。一度、任務失敗の報告をしに行かなければならない。だから王都、ルルカントまで行かなくては……」
「徒歩で何分ぐらいするんだ?」
「ここからならば一週間はかかるな」
「一週間!?」
一週間も歩けるだろうかと考えるが楽兎は絶対に無理だと思った。だって食べ物が無いのだから。
「他の村にも寄るから着くのは今日から一、二週間ほどだろう」
「あ、一応村には寄ってくれるんだな」
楽兎はホッと一息するが、少し考えれば当たり前の事だった。
「ふむ。ならば我はラクト等について行く事としよう」
アルセイムも同意してくれたので、ランは脚を南側に向ける。
それに伴ってこれから何が起こるのか楽しみな楽兎と、楽兎と友になった事により同行する事となったアルセイムも同じ方向へと歩き出して行った。
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