ドラゴンと戦う事になりました!?
まず来たのは咆哮。炎が楽兎達を襲う。
「ランはあまり手を出すなよ!」
「ラクトだけに戦わせるだなんて私のプライドが許さん! 凍りつかせ……〈アイスファイア〉!」
水色の炎がドラゴンの炎に向かう。だが、いとも簡単に〈アイスファイア〉は消された。
楽兎はそんなのを見る必要はないと感じていたのですでに走り出しており、ドラゴンの真下にもぐりこむ。
「これでも喰らえ!!」
そう言って拳をドラゴンの腹に向かって思い切りつく。だがその拳は当たることかなわず、腹に当たる前にドラゴンが跳ねてそのまま飛行する。
「なっ! 空に逃げるなんてせけぇぞ!?」
「フハハハハハ!! トべないヤツがワルいのだ!!」
嘲笑った後。ドラゴンは口に炎を溜める。
さすがにマズイな。そう思った俺は手短にあった手頃な石を持つ。
「落ちろや!!」
ゴウッ! と豪快な音を立てて石を投げた。
それはドラゴンが丁度、炎を放とうとした瞬間に投げたので、口の上あごの部分に石が貫通はしなかったがめり込んだ。
「グガアアアァァァアアア!!」
炎はこっちと全く別のところに放たれ、とりあえず一安心。今度も手頃な石を持って、次に狙ったのは羽の膜の部分だ。
そこに向かって――ゴウッ! とまたも豪快な音を鳴らして投げた。
「ヌゥ!」
今度はドラゴンも気づいたようで、剛速球で飛んでいく石を難なく避けた。
さすがに石だけではドラゴンを倒せるとは思っていない。だから……。
「借りるぜ! 博士!」
右手を足での跳躍と一緒に地面の思いっきり叩きつけた――ズドォンッ!!
「「!?」」
「おら追いついたぁ!!」
ドラゴンの顔付近に跳んで言った後、ドラゴンの顔の側面を力の限り殴った。
「ガァッ!」
ズガァンッと一際大きな音を鳴らしてドラゴンを地面に向かって落とした。
大きな音を立てて地面に大きなクレーターと大きなヒビを入れた。
「ちょいと力強すぎたか?」
そう思って地面に降りて行くと――ガスッ。
「ぐッ」
「フきトべ、ニンゲン!」
ズドドドドドドドドドドォォンッ!!!!
突如飛び起きてきたドラゴンの腕の攻撃を避けられず、木を何本もへし折って吹き飛んだ。
「ラクト!?」
「ガハッ……!」
口から血を吐き出す。
ランの楽兎の名前を叫んでいるがそれに答えてやれるほどの気力を楽兎は持っていない。
「クソッ……。やっぱ強ぇ……へへ」
だけどその中で楽兎は口元を緩ませ、笑いを堪え切れなかったのだ。
「オラァ!!」
ズドォン! と木を思いっきり叩きつけその反動で長加速。その際、木が折れ、更に後ろの木をなぎ倒した気がするが、楽兎は全く気がつかなかった。
「ラクト!? 良かった、生きていたか!」
「まだイきていたか! そうでなくてはな!」
ランの喜んでいる顔が見れると、今度はドラゴンの完全に怒り狂っている、それでいて歓喜に満ちている顔が見れた。
しかもドラゴンの瞳が丸から縦の楕円になっている事から本気モードだろう。
「へへ! 余裕ブッこいていられるもの今の内だぞドラゴンさんよ!!」
全力で走り、ドラゴンの直で向かう。ドラゴンが炎を吹いてきたのでそれを横に回避。さらにドラゴンが腕を振り上げて踏みつぶそうと叩きつけてくる。
「風よ……吹き荒れろ! 〈ウィンド・ストーム〉!」
それをランが魔法を使って完全に止められなくとも鈍くさせたおかげで俺はその間に足元を通り抜けた。
そこに俺はもう一度、一番柔らかそうな腹部に――ズガァンッ!
「今度こそ喰らえやぁ!!」
地面に拳を叩きつけて腹部にかなりの速度で接近。拳をめり込ませた。
「ガグァアア!!」
激しくのたうちまわり、その際にドラゴンの尾が楽兎の腹を打つ。顔を苦くさせてまたも吹き飛ぶが、今度は先ほどのように木を折りながら吹き飛ばなかった。
「大丈夫か!? ラクト! 〈ファイア・キュアー〉」
「あ、ああ。なんとかな……」
近づいて介抱するラン。魔法で楽兎の傷から血は出無くなったがそれでも血が足りないと楽兎は体で感じる。
「ニンゲン!! よくもこのサイキョウシュにしてサイダイのワレにィィィイイイイ!!!!」
口から吐こうとする炎。
さすがに避けられないと思い、ランをずっと向こうに吹き飛ばす。
「きゃぁ! ら、ラクト!? 何をするんだ!」
「へぇ。意外と女の子っぽい悲鳴出すんだな」
その時、ドラゴンは炎を吐いた。
――空に。
ゴウゥゥッゥッッ!!
「……は?」
空を見てみるが別に何もいない。誰を狙って放ったものなのか、楽兎はさっぱり分からなかった。
そして炎を空に放ったドラゴンは、ゆっくりと前足を出して楽兎に近づいてきた。
ドラゴンが楽兎の前に着く前に、ランが先についてドラゴンと楽兎の間に立つ。
魔力を全開放し、両手に青い炎を展開する。
「これ以上はやらせんぞ!」
両手の青い炎を一つに合わせ、ドラ○ンボールに出てくるあの構えみたいにするラン。
「はは……それって全世界共通なのか?」
意味のわからない小さな呟きを吐き、楽兎は体に鞭を打ってなんとかランの肩につかまって立つ。
「ラクト……大丈夫なのか?」
「ああ。なんとか……な」
ズゥン。楽兎とランの前に立つドラゴン。その瞳は先ほどみたいに縦の楕円になってはいない。
それはつまり……もう戦う気は無いということだった。
「まさか……このワレにサンゲキもコウゲキとヨべるものをアタえるとは……」
「へへ……。もう数十発ぶち込めるぜ?」
「バカラクト! これは骨が完全に折れているではないか! そんな状態で戦えるものか!」
強がりを言う楽兎を後ろに追いやるラン。そしてまたドラゴンと対峙する形となる。
「まだタタカうキかニンゲン」
「貴様がいつ襲ってくるかわからないからな……」
「アンシンしろ。ワレはもうおマエたちをネラわない」
「何? どういうことだ?」
ドラゴンの突然の変わり身に、ランは信じられないというような目でドラゴンを見上げる。
どういう状況なのか、ドラゴンの中で何がったのかは知らないが、これは楽兎やランにとってはかなりの好都合だ。
勝手にケンカを売っといて言うのもなんだが、正直、死ぬかと思った。
「ドラゴンのナカにも、キめられたルールがある。それはホコりをマモるとかではない。ギャクだ」
「逆?」
「ワレらとチカラをアわせられるモノをショウサンするのだ」
「称讃……だと……?」
ドラゴンの言葉にランと楽兎は目を丸くする。
集中が無くなってしまったのか、ランの両手に溜まっていた魔力が霧散してしまった。
その際に制御が外れていたためか、地面と木にそれぞれ凍ってしまったところができてしまった。
それが終わってから、楽兎は重々しく口を開いた。
「なぁラン……」
「な、なんだ?」
楽兎が真剣な瞳でランを見るので、ランはごくりと生唾を飲み込んだ。ドラゴンも静かに聞いている。
そして、楽兎は口を開いた。
「ラン。称讃って、なんだ?」
ズシャァァァァアアアアアアアアア!!!! と盛大にランとドラゴンがずっこけた瞬間だった。
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