村にお着きになりました
とっても眠たくなる授業がやっと終わり、楽兎は大体だがこの世界の事を理解した。
つまり、この世界では六つの国が勢力争いをしていると言う物だった。
戦争なんて知らない世界から来た楽兎としては、むしろそれが面白いとさせ思っていた。昔から好戦的なのだ。楽兎は。
だが、彼にも人が死ぬということは好まなかった。好戦的と言ってもどちらかが最後まで立っていられるかとかの命のやり取りでは無い事だ。
だから戦争を面白いと思っても、自分から参加したいとは思わなかった。わざわざ死にに行ってどうするんだと言う話だ。
「にしても、他の国と戦って人が死んで、どうすんのかねぇ」
「国を守るためだ。戦争はそのためにある」
「ンじゃあ、攻めて来てるターコイズってのは何のために戦ってんだ? ターコイズさえ戦争を始めなければこの世界は平和だったんだろ?」
アルセイムの話ではそうだった。
この世界は元々は平和だったと言う。だが、そんな平和な世界をターコイズが壊した。それはターコイズがパールの王族を殺したのだ。しかもその理由が好奇心。
そっからだ、ルビーやサファイア、エメラルド、トパーズを巻き込んで戦争が世界中に勃発した。
友好的な国と、あまり軍事的な事にくわしくない国は同盟を他の国と結び、自らの国を守ったのだ。
「そう……だな。わからん。だが、ターコイズは自らの意志で他の国へと攻めている。今はパールとトパーズの連合軍と戦っているが、情報ではターコイズの方が有利らしい。それほどまでに強力な敵が居るのだ」
軍事的な国家で、一番代表的なのはターコイズ。次に代表的なのはトパーズなのだが、それでも押されている。二対一のはずだが、押せるターコイズはとても恐れるものなのだろう。
「おぉ、あの村か? ラン」
アルセイムが何かを見つけたようで、此処から見える建物を指差した。
それは木で出来たログハウスのような家が何件もあり、畑も見て取れた。
「そうだ。今日の所はあの村で休むつもりだ。急ぎの用だから、明日からはあの村で馬を借りて走る。ラクト。馬を乗った経け「ない」……そ、そうか……どうしようか……」
ランが意味ありげにアルセイムを見る。
アルセイムは元々ドラゴンだから馬なんて乗った事が無いと考えるラン。それもそうだろう。馬に乗ろうと考えるような動物は人のような生き物だけだろう。
第一ドラゴンはその翼でどこへでも飛んで行ける。馬に乗る必要はない。
(せめてラクトが乗った事があると言えば二頭借りてアルセイムを私の方に乗せて走っていたのだが……)
最終的に決めるのはアルセイムだからどちらに乗ってもランは変わらなかったが。
(ならば少しラクトに乗り方を教えるか? ラクトは体で覚えるような奴だからきっとすぐに覚えるだろうが……時間が惜しいな。馬車を借りるか)
ランは頭の中でその事を決めると、一度首を縦に振る。
それから村のラン、楽兎、アルセイムは村へと入っていく。村の道はレンガで作られているので動きやすいと言えば動きやすい。
「はぇ~。これが最新型VRMMOのゲームって言われれば、今すぐにでも俺は信じてしまえるんだけどな~」
「先程からラクトよ。『げいむ』……というのは何なのだ?」
「ん? それはな……俺の世界にある、遊ぶための道具のようなもんだ」
「ほぅ。その『げいむ』とやらでは、こう言う場所があるのか?」
「もちろんあるぜ! なにせゲームを作る人なんてたくさんいるんだからな! いろんな世界があるんだぜ?」
「ほぅ! いろんな世界があると!? それは素晴らしいな! 我やラクトの世界だけでなく、その他たくさんの世界に行けるのか! ラクトの世界はすごいな!」
楽兎は何かアルセイムが勘違いしているのではないかと思ったが、気のせいだろうと事をつけてしまった。
おかげでアルセイムは楽兎の世界がたくさんの世界に転送できる世界という間違った知識をつけてしまった。
「それより、俺はもうへとへとだぜ~。休まねぇか? ラン」
「そうだな。急ぎだが日も暮れたし、戦闘で疲れてるだろう。今日は宿を取った方がよさそうだ。近くの宿屋に行こう」
楽兎はランが提案に乗ってくれたのでガッツポーズを取り、ランの後について行く。
ランが入った宿屋はそれなりに広く、受付で聞いたところ、お金も十分安かった。
「番号は102号室だよ。お風呂もあるから、いつでも入りな」
「わかった。行くぞ、ラ――」
ランが振り向いた時……。
「おぉ、ここの飯うめぇな!」
「だろう? この村一番の飯だ! どんどん食いな!」
いつの間にか楽兎とアルセイムは給仕のおばちゃんにうまい事言いくるめられてご飯を食べさせられていた。
ランのお腹もさすがに限界が来て、自分も食事と取ろうとしてお金を取り出す。
「すまない。私の分も頼めるか?」
「お安いご用さ。ちょっと待ってな」
給仕のおばちゃんは厨房の方へと戻って行く。
その間も楽兎は食器の上の食べ物を綺麗に残さず平らげていく。
「ふぅ。満腹満腹」
「なかなかにうまい飯だったぞ」
「お前ら、お金持っているのか?」
「いんや」「ラン。任せたぞ」
ランの支払いになることは分かっていての言葉だが、さすがにこうも清々しく言われるとランはさすがに頭に少し血が昇る。
だが勝てる気はしないと思うと、すぐに昇った血もすぐにおさまって行った。
それから食堂で夕食を済ませると、割り当てられた部屋へと向かい、中へと入る。
「ほぇ。すげぇな。これ結構お金掛かったんじゃないのか?」
「そうでもないぞ? それよりアルセイム、今から風呂に行かないか? 受付で」
「風呂だと? 水浴びはよくしているが……」
「ほら、行くぞ」
アルセイムがランに連れられて部屋の外に出て行く。
一人になった楽兎は何をするわけでもなく、何となくで外の風景を見てみた。
「異世界……か……」
正直あまり現実感が持てていない楽兎だが、それでもこの状況を楽しめてはいない。いきなり命のやり取りをやらされて、日本という平和な国で暮らしてきた楽兎にとっては緊迫した一日だったのだ。
(俺……帰れんのかな……)
空を見ながらそんなの事を思う楽兎。
スマホを開いてみてもあいかわらずネットが接続されていない。
帰れる可能性が、ほんの少しでも無いこの状況では、いくらバカと言えども寂しくなるものだった。
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