黒猫とその人はやって来る 8
何人も、全てを受け入れるような社長さんとは異なる力。
何人も、全てを阻むような圧倒的で重厚な支配。
「ナナちゃん、良いか。コイツらはザンネン……残留思念なんだ。肉体は無い。心とか想いとか気持ちとか、そういうのだけで存在してる奴らなんだ、コイツらは」
そのコイツらに囲まれながら、ゆっくりと私の足を地に着けた真内さん。
「コイツらは霊魂体だから、霊力しか攻撃出来ねえが、俺達、生きてる者は肉体(実体)と霊魂を持っているから、コイツらの攻撃を受ける」
真内さんは、何故か私の頭を撫でてて。
「良いか、ナナちゃん。霊魂体には、霊力しか効かない。いくらその実体の竹刀を振るっても、俺のガチな真剣を振るおうが全く意味がねぇ。だから、込めろっ!っち!」
真内さんの足止めも此処まで、また、動き出した魑魅魍魎に、その霊魂体を斬り裂ける刀で。
「ナイス!シロ君、行けるよ!任せた、
ナナちゃん!」
「ナナ嬢!行きたまえ!」
無矢の弓を鳴らした社長さんと、その人を護る風の刃を放つランポさん。
そして……。
「霊力なんて、要は単純。お前の今の気持ちを込めろ!」
これから、私の師匠となる人の強い言葉。
分かり難そうで分かりそうな。
全然理解出来ないけど、私の竹刀は、ランポさんの爪、社長さんの矢、真内さんの刃と、同じく。
嬉しかった。
私を気味悪がらない。私を受け入れてくれる人達が居るんだって。
そんな気持ちを込めた。
「ふむっ!……露払いはしたぞ、夏菜嬢!後は頼む!」
一陣の鋭き辻風が彼らを護るように舞い。
「ランポちゃん、ありがと。……シロ君、いっくよぉー!」
彼の絶世の美女は弓を鳴らし。
「よしっ!“ナナ”、ぶっこむぞ!お前が仕留めろっ!」
モノノケ達が止まった一瞬、私と共に飛び出した真内さんが斬り拓いてくれた道。
感じる気分の高揚。此処まで爽快な気分。何の憂いも無く。
私の、ただの竹刀は、まるで社長さんの放つ矢のように輝いて。
禍々しき渦を祓う。
光の小雨を辺りに降らせながら……