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黒猫とその人はやって来る 4

日は落ちて静寂に満ちた校庭に横たわる魑魅魍魎の山。社長と呼ばれた女性が、矢を番えずして何かを放った弓を下ろして静かに私に微笑みを送ってくる。なんとも安心を与える笑顔にして、少々の緊張を与えてくれる。



「でっ、シロ君?結構ヤバくないかなぁ、この状況」


「まぁ、芳しくは無いですね。何処の馬鹿の所業かは知らねえががこんな事を出来て、する奴は……」


何やら、二人が話始めてしまったので、部外者の私が質問出来るのは。


「えっと、シャチョウさん?一体何をしたんですか?」


「うむ、それを説明しようとすると長くなるぞ、ナナ君。取り敢えず簡潔に説明をすれば、夏菜嬢は破魔弓を鳴らしたのだよ。後は、“ふぃーりんぐ”で理解してくれたまえ」


私の腕の中に収まるランポさん。


……ハマキュウ。分かりそうで理解出来ないその言葉と、フィーリングで理解出来そうな“鳴らした”と言う言葉。

 

そう、社長さん、もしくはカナ嬢と呼ばてる、真の大和撫子と呼ばれるに相応しい美人さんが持っている弓は、武器としてではなく、まるで、一つの弦楽器で。それが奏でた一つだけの音が、狂騒に染まっていた此処、この世界を鎮めた。


「なるへそ、なるへそ。でっ、ナナちゃん……って呼んで良いかな?」


「あっ、へぇっ、へい、社長さん!」


そんな美人さんに唐突に話を振られて、顔が真っ赤になる赤っ恥を思いっきり表現した私。真内さん、ランポさんもそんな爆笑しないでくださいよ!


「くふっ、ははっ、私は平夏菜。カナって、呼んで良いよ」


その荘厳で一般庶民とは格の違う近寄り難い美しい容姿と異なり、ラフな笑い声を立てる夏菜さんに、より一層溜まった血液の重さに垂れた頭。


「ところで、瀬川……ナナちゃん?」


私がもたらした笑い空間を一蹴する違和感。

それに、重かった顔を上げた私はそれとかち合う。


「コドクって、知ってる?」


蛇に睨まれた蛙。いや、蛇の眼の方がましだ。


口元は楽しそうに歪んでいても、目元は磨き抜かれた矢尻。

先程までは私を守ってくれていたこの人の全ての感覚が、私の心を見透かそう、貫き壊そうと。


……コドク?孤独。


確かに私は知っているだろう。

普通の人と違うミエル体質を持って産まれた私。自分がミエル事を知らなかった幼かった私。両親に気味悪がれた避けられ続けた私。身体無き友達と話し、身体在る友達に逃げられ続けてきた私。


唯一、私に関わってくれる先輩を除いて、今でも、抱え続ける私の……孤独。


辛い。


ランポさんに会って、真内さんに会って、夏菜さんに会って、私は私と同じ人たちだって……思えて、嬉しくて、嬉しかったのに


「……知ってます」


私の答えに、真内さん、ランポさんも、ピリッと臨戦態勢。あぁ、幽霊がミえてしまう私は、同じくミる事が出来るだろうこの人たちも敵になってしまうのだろう。


結局、私は……


「独りぼっち、って事ですよね?その、私みたいに」


ランポはともかく、大人な二人の強い視線に四面楚歌、零れそうな涙を堪えて、必死に。



「っ、ぷはぁ、ぐっ、くぅっはっはっはっはぁー!あっ、わりぃ、ナナちゃぁ、くぅーはぁ、ふはっ、くくくっ、つぅーぅう、……ふぅ!……ふう。まぁ、一般的にコドクって言っちゃあ、そうだわなぁ。案外、間違っちゃあねえよ」


「ぶにゃ、にゃはははぁー!うにゅっ、うむ、ナナ君の答えは在る意味、的をいている。シローの言う通り、完全に間違いでは無い。我輩もそう思うぞ」


また、思わずしてウケてしまった。


「にひひっ。良かったよ。瀬川の御キイ様を討たなくて済んだし」


なんでなんでこの人達が晴れ晴れと笑っているのか。凄く楽しそうに……。

 

まるで、私を誘うように……。






久方ぶりの更新の天見酒。まぁ、消えた甘過ぎる小説家の駄文でございます。


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