表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/15

いつかの別れはやって来る

霧が静寂な夜を支配している。コンクリートの壁に挟まれた路地。白い視界に一定間隔で射し込む赤い光。

そして、白い霧に混じる紫煙。その煙が発生する元を見下ろす人。その後ろに控えている制服姿の人たち。



「やっと来たな。愛弟子」


腹に大きな穴が空いている人とは思えない台詞だった。そんなことを言いながらも煙草は口から離さないのは流石ヘビースモーカー。


「何で独りで行ったんですか?起こしてくださいよ」


もうこの人の前では泣かない。絶対に。だから、泣き声は出ていない筈だ。


「いやぁ、余りにも可愛い寝顔だったから、起こすの可哀想だと思ってさ」


「先生にそんな気遣いを受けたのは初めてですよ」

本当に適当なことをいう人だ。その人はおもむろに眼鏡を外す。


「これ…、やるよ」


大振りな腕の動きの割りに飛ばない眼鏡。地面に落ちるぎりぎりで手に収める。


「それ、卒業証書。ミエナイモノをミルための眼鏡。もうちょい、それで世界を見てみな…」


口から地に落ちた煙草。


この人の前では決して泣かなかった。自分の前に横たわるのは、もう聞くことも見ることも出来ないモノだから。


泣き叫ぶ。後ろで何か発している人たちの声が聞こえないように



都会を支配していた霧は、雨へと支配権を譲っていた。さっきまで煙を上げていた煙草は、寿命を全うすることなく役目を終えた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ