さよへの読心術講義
前回の文体だと理解無理でしょ。ってことで説明中。
「さて、情報が呑み込めていないだろうから説明していくよ」
「まず、俺が頻繁に言っている“脳”とか“ニューラルネットワーク”。
これは……そのまえに、君たちって考えるってどういう現象だと思う?」
「正解は、頭にある器官……脳のはたらき。
詳しく言うと、脳の中には、ニューラルネットワークっていう
……まあすっごく小さいのが網になっていて、
その全体を伝言ゲームみたいなことをしているんだ。
数としては、860億人が100兆個の糸電話を使って伝言ゲームしてる感じ?」
もうちょっと例えると:
ある人(ニューロンA)が「火事だー!」って叫ぶと、
つながってる数百~千人くらいの人(ニューロンB〜Z)に電気信号(音)が届き、
それを聞いた人たちが「え、マジ?」ってまた別の人に糸電話で伝え、
ものすごい速度で脳中を「情報の電気信号」が飛び回る。
「次。“思考電位”の前に、“電位”からだね。
……雷属性って使ったことあるかな。
さよは無いだろうけどね。
つかさくんは……あるよね。」
雷……。あのビリビリー!ってやつ?
「あの雷にも強さがあってね。
水桶に水を溜めていたとする。
高いところの水は流れ落ち、低いところへと流れていく。」
「このときの「高さ」が、“電位”に相当するんだ。」
「つまり──
電位の高いところから低いところへ、“電の流れ”が生まれる。
この流れこそ、術式や道具に力を与える「電流」だ。」
「《雷の槌》って使ったことはあるかな。
それか、落雷を見たことはある?
まあ、起こっている現象は同じだけど……あれも“電位”の一種だよ。
空で電位が高くなって、電位が低い地上に流れる。これが落雷だよ」
「君の脳でも、似たような雷が、小さく、
でもめちゃくちゃ高速に走ってるわけ。思考ってやつの正体だ。
ここでの雷のつよさが“思考電位”ってわけだね」
……そんなものが、私の中で走ってるの?雷が?
「とはいっても雷に比べたらすごく弱いけどね。
さっき、糸電話の話をしたよね。
860億人が100兆個の糸電話を使って伝言ゲームしてる。
あれって、ほんとにコショコショ……って感じなんだよ。
その証拠に、今さよってこの説明を理解してくれようと“思考”しているけど
何にも聞こえないでしょ?」
神坂さんがおもむろにこっちに隙間が見えるように親指と人差し指を立てた。
パチン!パチパチ……と電撃が走る。
と思ったら、だんだん隙間を狭めていく。
それに伴ってパチパチ音も小さくなっていって。
ついに隙間と音がなくなった。
「まだあるんだな、これが。
まあつまり、これくらい小さな雷でこしょこしょしてるんだよ」
つまり、頭の中を雷がこしょこしょ……ってしてるんだ。
「さて!ここから《読心術》と《隠蔽層》だ」
「まず、1型。
前提として、電流が流れると、周りにフワフワって電位が漏れるんだよ。
これを電界っていうんだ。……思考電位に対しては“思考電界”だね。
目を作り変えて、頭の外の思考電界を見る。
これが第1型」
「対処法は……真空層の生成。
思考電界が相手に見える原因って、思考電界が空気を揺らすからなんだよね。
見たことあるかな、陽炎。
あれって、空気が暑さで歪んで揺れているんだよね。
あれみたいに、思考が本当にわずかに空気を揺らすんだよ。
じゃあ、空気を周りから無くせばいい……っていう考え方」
「まあ、これはリュークは使えないとみている。
これはさよが習得する必要はないかな。
稲守さん?……まあ彼女と最近仲いいでしょ?大丈夫大丈夫」
「次。2型。
魔力をそのまま相手の脳にぶつけると、思考電位に沿ってムラができるんだよ。
試してみるね」
神坂さんが目の前に光を作った。
ピリピリ言ってる。思考電位?の再現かな。
「で……ここに魔力を通すと……
見て。電位が高い空間を通った魔力は魔力が散乱・吸収されて……弱くなったね」
本当だ。一部の魔力がチリチリと拡散し、途中でフェードアウトしていく。
「これを何回かやってニューラルネットワークを解析する。
これが第2型」
何回か通すと、なにか複雑な形の影?光?に見える魔力の塊が見えてきた。
……まるで頭の中をのぞかれてるみたいで……少し怖い。
「対処法は電磁フィールドの生成。
これでリュークには十分だと思う。
応用として乱数電磁フィールドがあるけどね。
まあいい。何かというと頭に雷の膜をまとうんだ。」
ピリピリしている空間に膜が重なった。
「もう一回魔力を通してみるね
……今度はほとんどムラができずに全体的に魔力が弱くなった。
こんな感じで魔力を乱すんだ
これに関しては、1型の読心術にも効果がある」
「最後に3型。これは相手の表情を観察するんだ。」
といった直後。神坂さんがこっちを向いて見つめてくる。
照れて顔が赤くなって視線をそらしてしまう。
「今、さよの顔が赤くなって視線が左下に逸れたね。
顔が赤くなる・視線が逸れる。ここまででも十分感情を読み取れるけど」
えっ!?そ、そんな……。思わず顔を隠す。
でも、隠す仕草すらも、相手には“情報”として観測される──。
「もう一歩先に踏み込んでみるよ。
視線が左下に逸れた。この方向からも思考を読み取れるんだ。
アイ・アクセシング・キューによると、自分の心と対話していたね。
あと、表情筋、頬がぴくってなったね。一瞬照れたのが恥ずかしくなって隠そうとしたね。
こんな感じで表情から思考を読み取る。これが3型」
ここまで、見られてるの?
「対策法は……。
魔力によって表情筋や視線を固定する。
愛想笑いに固定する法術師が多かったかな。
まあでも、未熟だと仮面をかぶったように表情が固定されるから、
対策してるのは容易にばれるんだよね。」
「ま、やり方はあとで教えるよ」
「さて、だいぶ“思考”の見え方が変わったんじゃない?
実際に俺たち法術師は、これを戦闘よりも交渉や尋問の場で使うことが多い。
使い方次第で……信頼を壊す危険すらあるからね」
「……いや、そもそも信頼なんて存在しないと言ってもいい。
できるということはいつやられてもおかしくない。
だからこそ、隠蔽層という対抗手段が生まれて、
法術師の間では常に“水面下の読心戦”が繰り広げられていた。」
「まだ君の世界、基底世界には読心術は広まっていない。
リューク以外に使うか、特に稲守さんに使うかは、
……よく考えてほしいかな」
あっ。リュークに使うのは確定なんだ。
もう見られてるのかな。
「そうだね。だからこそ、俺が出てきて、対抗策を叩きこんでるんだ。
これは君の“盾”になる」




