第1話 兆し
これは誰もが予期しない未来の話
帝国大学のとある学会発表にて、
「この度我々は革新的な金属を発見、製造することに成功いたしました。この金属は、少量の電気を通すことでどこまでも硬くなり、そしてどこまでも柔らかく変形することが出来ます。形状記憶も得意としており、製造方法も容易なため、この金属によって建築分野を始めとした様々な分野に革命が起こると確信しております。」
記者
「すごいですね‥その金属の名前はなんというのですか?」
「電気によってどんな形にも変形し、どこまでも硬化するこの金属のことを、北欧神話の雷の神の名を借りて、我々は“トール“と名づけました。」
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「続いてのニュースです。エッフェル塔の補強素材に新金属トールが採用されました。」
「比較的生産が容易で変幻自在な金属トールが、多くの家具の素材に採用されています。」
「トールを使用した新型のスマートフォンが開発されました。」
「アメリカ軍の戦車や銃器にトールが採用され、本日試験実験が行われました。」
「プラスチックの代わりに、軽量化された夢の金属トールが採用されました。」
「道路建設にトールが使われる様になったため、道の舗装や点検の手間が大幅に削減されました。」
「トールでできた人形トールドールが開発され、今後の労働力の大幅な自動化が予想されます。」
「骨格や肉質を様々な合金と組み合わせたトールで作る人工アンドロイドが開発されています。」
「自信の骨や内臓をトールと入れ替えて、不老不死の肉体を作る研究が進められています。」
「ついに脳のメモリーについての研究が進み、記憶を人工脳に移すことができる様になりました。並行して、アンドロイドに自我を持たせる実験も進められています。」
…「なんか最近トール製の人工人体に身体を移し替える人が増えてきたね」
「脳波から発される微細な電気で、金属の身体を自在に動かせるらしいからね。まさにアクションゲームみたいな動きができるんだよ。」
「それはごいね、私も検討してみようかな。トールドール」
「最近、地球温暖化の影響で暑すぎてほとんど外に出られないから丈夫な身体に変えるってのも時代の流れなのかもしれないね」
-----20年後-----
〜世界の人類の約76%が安価で丈夫な人工人体へ身体を切り替えた。先進国は都市部のほぼ全ての人が人工人体に移行した。その他にも労働力の約58%が人工アンドロイド(トールドール)に切り替わり、人類の生活に大きな変化をもたらした。
発展途上国の人々も富裕層はほとんどの人が人工人体へと身体を乗り換えた。〜
日本のとある集落にて…
「お父、最近機械みたいな人がよく村に来るね」
「ああ、あれはトール製の身体に脳を移し替えた人々だ。うちの家はあんなのに頼ることはしねぇ…俺はトールの合金をつくる技師だったが、この先想像するのも恐ろしいことが間違いなく起こる。その時、お前は誰よりも強く生き残らなきゃならねぇ。よく覚えておけ。」
「え…一体何が起きるの?」
「…すぐにわかるさ。」
こちらはSF要素で書いてます。緒方書店の方暇に投稿していけたらと思ってます。