MISSION:96 秘密の守り人たち
翌朝、ご飯を食べて休憩中の時に聞いてみた。魔力隠しの技術。知ったからにはやってみたいじゃん。晩ご飯の時に聞こうと思ったんだけど、フィギュアのことで盛り上がっちゃったのでタイミングがなかったんだ。
おばちゃんから聞けたら早かったんだろうけど、フーちゃんを叱ったあとはやることがあったみたいでダメだったんだよね。
≪僕がいっぱいいるお陰で、この技術は簡単かも~≫
「ポーちゃんズルイ!」
「じゃねえ」
「難しいはずでありますのにっ!」
オーラで魔力を覆った状態で、練り上げる。ということだったんだけど、僕ならオーラ係と魔力係に分かれることが可能だからね。すぐできた。
便利な身体にバンザイ。だからといって分身の術は無理かな。非常識な動きってヤツが僕にはできないし。
あと飛ばす系の魔術をオーラで包むのもできないね。オーラを飛ばす技術は難しいっぽいし。魔術に関しては術式で制御してるから飛ばせてるけど、オーラは完全に個人の技量に依存するみたいだ。
オーラは飛ばせないって思い込んでたよ。法陣術を教えてもらった時に、フーちゃんとエリヴィラ様が僕に触れてオーラを教えてくれたからね。あの時の目的は飛行することだったし、深く考えなかった。
でもまあ僕の場合は僕自身が飛んで行くので、問題ないような気がする。ミサイルの内側にオーラを巡らせればいいからね。
「ウチぁ無理じゃあ。そもそも戦闘職じゃないけんね!」
≪その割には戦闘に自信がある感じじゃん≫
「あ、それがしもそう思いました」
ワワンパァの言い訳は、ケンカは強かったっていうヒドイものだった。戦斧とか戦棍の二刀流が、ケンカ殺法という真実が今明かされた。
ケンカでバトルアックスとかモーニングスターを使わないでください。
「使うちょらんわ!」
「パァちゃん、作るスゴイある職っ。それ、良いする」
せめて僕には、スライムボディを使うセンスだけでも有ってくれえ。なおワワンパァは、いい感じの棒2本で遊んでたみたい。
「言うちょくけど、狩りじゃけんね? 人は殴っちょらんよ」
≪実戦だったかー≫
「大地の民は力持ちでありますからな。小っちゃい頃から大物を仕留めてそうです」
「お、分かっちゃう~? まかちょけじゃわー」
どうやらピュンピュン振り回せる細長い棒じゃなくて、棍棒だったようです。センス盛沢山しかいないみたいだぞ、この幼女戦隊にはっ。
しかしグッドチョイスの棒が棍棒とは……バイオレンスだなあ。
でも普通のことっぽいね。まあ狩りに成功したらご飯が豪勢にもなるか。
「準備できるした。行くするー」
「そのような姿で大丈夫なのか? フィア」
「ん。慣れるした。カワイイ」
「ウーム、見慣れぬがゆえに違和感があるな」
「アナタ、いいじゃないの。とっても可愛いわよ」
エルフの人はゆったりしたローブしか着てないからなあ。おっとうが不安そうにフーちゃんを見てるよ。おっかあは作っちゃいそうだな。みんなの服。型紙を取り寄せて渡しておくか。
エルフのローブは、なんかどこかの部族って感じの模様が入ってて、それがオシャレアイテムな雰囲気だね。それに比べると僕らのは、見た目からオシャレを駄々漏れさせるアイテムだし。
戦闘に向かないんじゃないか、みたいな疑問を持ってるようだ。
落ち着いた雰囲気のおっとうなのに、脳がバトル三昧じゃんか……。
「そもそも戦闘しに行くわけではありません。世界樹観光であります!」
「ねー。楽しみじゃあ」
「ん。スゴイ。世界樹スゴイある」
≪出掛ける前にチョットいいかな──≫
紙とインクを所望した。
≪だってフーちゃんのお母さんが、作りたそうな顔してたからさ、服を。という訳でコレがみんなの服の型紙になります≫
「あら~、気が利くじゃないポーくん! ありがとう」
取り寄せた際、ルァッコルォのオイシイ匂いの正体も判明。僕はワワンパァに合図を送って内緒の意を共有する。ここからじゃ間に合わないので、向こうは向こうで頑張ってもらおう。北大陸から出るまで、フーちゃんにはナイショ。
だって戦闘系だもの。ズルイ……僕も僕以外のカテゴリーオーバー見たかったなあ。しかもワワンパァ弐式も出すみたいだ。くそぅっ。まあコッチには初代さんがいるからね。おあいこかな。
お金と魔物。ルァッコルォのオイシイ匂いは、どっちに反応したんだろうね。とりあえずはお金だったと誤魔化しておきましょー。
≪服のアイデア料が僕に入ったよ。なんか僕らがトリプルスターの冒険者になったのもあって、流行ったんだってさ≫
「チラホラ見かけてたのは、そのせいでありましたか!」
「みんな着る、恥ずかしいない、なるする~」
「ほんじゃあ注目浴びんで済むわ。良かったー」
なんか元の世界の人に悪い気がするけど……まあいいか。儲けたし。あとワワンパァ、注目は浴び続けると思うよ。だってコッチは本物だもの。
本物は可愛さが違うのだよ。絶対にね!
≪ちなみに1番人気はワワンパァ。ゴスロリ浴衣がダントツらしい。誘拐事件解決でミルセラのパレードに出てるからかなあ?≫
動きが早かったもんね。あの街の商会は。リドゥリーでもパレードあったけど、あの時は辺境伯と一緒だったしなあ。なによりも飛んで出発っていう、この世界にないものを見せた時だから、印象が薄かったのかもしれない。
僕らのパーティは背が小っちゃいしぃ。飛んだらさらに小っちゃく見えるよ。だから破壊力満点の軍服フーちゃんでも、印象に残り辛かったのではないかと愚考いたします。
「クッ、それがしはパレードに参加しておりませんっ」
それが敗因かあ、ってガックリするルァッコルォ。元忍者の癖に目立ちたがりだなあ。最初は目立たない行動を心掛けてたはずなのにね? 元来の性格は違ったってことなのかもだよ。隠れ里の長がルァッコルォを除隊させたのは、それを見越しての行動だったのかもしれない。のびのびと行動して、健やかに育ってくれることでしょう。
≪それでは世界樹に行きまっしょー≫
世界樹は北側にある山脈の、1番高いところにあるらしい。コロロの村からは北東だ。フーちゃんの予想では1時間くらいで到着するってさ。
「気を付けて行ってきなさい」
「分かるした!」
僕塊も残して連絡を取れるようにしてあるから、なにかあった時は連絡すればいいよー。
お父さんから呪符みたいなのを受け取るフーちゃん。人数分あるね。つまりソレが世界樹を見るための魔道具ということか。
ほほぅ。
「フフーン、条件2つ、達成するした」
「こら、フィア! ダメでしょ、言っては」
「あ、内緒! シーッ、ね?」
なんか世界樹に到着したら条件がバレちゃいそうだなあ。今の時点で2つクリアしてるってことは、呪符とぉー……エルフがいるってことなのでは。
「相変わらずじゃねえ」
「森の方々の秘密は、ちゃーんと守るでありますよ!」
「すまぬが頼む」
「ンッ、任せるする。行ってくるするー!」
フーちゃんじゃないよ。フーちゃんに頼んでるんじゃないんだよ? エッヘンしてる場合じゃないんダヨー。僕らがしっかりせねば。
そんな決意を胸にテイクオフる。ちなみに僕らの決意が表情に出てたのか、フーちゃんの両親はコッチを見てウムって感じで頷いてたよ。
まかちょーけぃ。具体的には僕がフーちゃんの顔に張り付けばいいのだろうか?
喋れないようにさ。結構ムズそうだけど。破壊力が出ないように高速で口をふさぐ、っていう謎の技術を研鑽しなくてはならなくなった。
失敗したらフーちゃん顔をブラックジャックのようなもので、殴り飛ばすことになるんですが!?
≪沈黙の魔法みたいなのってある? 音を消すというか≫
「精霊さん、いるする」
「魔術にもありますが、危ないものですからなあ」
「じゃねえ。暗視とか消音とか睡眠催眠なんかも、厳しゅう管理されちょる思うよ」
なんで危ないのか聞いてみたら、あー……なるほど。犯罪関係かあ。確かに危ない魔法だった。やりたい放題できる。
これは暗視や夜目を教えてもらえた僕は、王家に信頼されてるといっても過言ではないってことだぞ。僕、すげー。でもなあ。
≪となると、フーちゃんを瞬間的に黙らせるのが難しい≫
「エッ!? なにする、ポーちゃんっ」
「フーちゃんが森の民の秘密をばら撒くけぇじゃ」
「シュバッと口を塞がねばなりませぬ」
「エェ~?」
話し合った結果、僕がフーちゃんの首輪になっておいて、自爆しそうな時に彼女の口を覆うという手段を取ることになった。
納得がいってないフーちゃんだけど、諦めてくんろ。
「む、カワイイあるする」
「それがしも欲しいであります!」
「ウチも~」
ハートのアクセサリー付きチョーカーにビルドマインしたら、気に入ったみたいで、みんなの首に巻きつくことになった僕です。
平和な手段を思い付いて良かったー。
でも質量で殴り飛ばすアイデアは、戦闘時に使えるかもなので覚えておこう。大型旅客機で殴り飛ばすバイオレンスちからを、いずれは見せようじゃないか。
いや、ないかあ。大型で運用するメリットを、コロッセオダンジョンで感じなくなっちゃったもんね。多すぎて邪魔っていう……。エアタンカーは大型トラックくらいで十分な感じがしてる。AWACSはもっと小さくて良さそうだしさ。
なーんて考えてるうちに目的地に到着したようで、フーちゃんが着陸態勢に移ったよ。
次回≪MISSION:97 浅慮≫に、ヘッドオン!




