MISSION:95 特別
そんな体臭におびえる女子たちのお茶会と同じ時間に、フーちゃんのお父さんはキッチリと働いてたようです。
僕のせいで。
「ん、父様、呼ぶしてるする」
「そうね。集会所に向かいましょうか」
精霊が携帯のように使われてるっぽい。アプリは入れられないけど、バトルは可能なスピリチュアルフォン。精霊使いのエルフは、みんなスピホ持ってるってことだねえ。
ワワンパァとルァッコルォは熟練度が低いので、受信はできないってさ。僕も熟練度が上がったら、精霊の力が分かるようになるのかなあ?
なにも分からないから、なにかキッカケでもないと熟練度上げが、できないような気もするんだけど……ここにいる間に解決したらいいな。
って思ったけど、解決しなくても困ってないか。なにかが便利になるかも、くらいに考えておこう。
集会所に着くなり、フーちゃんのお父さんに確保される僕。ログハウス調会議室で車座に並ぶ、村の有識者(?)の真ん中に置かれた。エルフんちだからもっと不思議な建物を想像してたんだけどな。
例えばデッカイ木の実をくり抜いた家みたいなのとか。
例えば木の枝にぶら下がってる家みたいなのとか。
残念です。
あ、でもツリーハウスはそこかしこにあるから、許してあげてもいい。
「ック、なんか笑えてくる光景なんじゃけどッ」
「つ、つ、辛いでありまっしゅる」
ブルブル震えてるワワンパァとルァッコルォが、ボショボショ話してる。
『ブショォッ、きゃきゃきゃきゃっ、ポーちゃんを、ど、どうしたいんだべか? ィヒヒひきゃきゃキャひひひッ、笑かすのやめてくんろぉ』
フーちゃんは耐えられなかったみたい。おっかあに頭をペシィってはたかれてるよ。真面目な会議のはずだもんね。
笑える光景なのは否定できない。その証拠に僕もプルプル震えてるし。滑稽さに身悶えしちゃっても仕方ないよ。
有識者っぽいエルフたちが真面目な顔なので、より一層笑いをもたらしてくるんだもの。
「皆、どうか?」
「分かりませんな。本当に精霊なのであろうか?」
「であろう? 私も感知できなかったのだよ」
「ウーム……」
みんな精霊使いの達人級なんだろうね。でも看破できないみたい。
「なにが切っ掛けで精霊と看破できたんじゃ?」
一番年上っぽいおばちゃんが聞いてきた。人だったら仙人っぽい風貌になるんだろうけどさ。エルフは長寿だから千歳とかでも、おばちゃんくらいに見えるんだろうね。
「──っちゅうことなんです」
「そう。ポーちゃん、オカシイあるする」
「自分でダンジョンに取り込まれるとか、普通は考えないのでありますよ」
≪ムダ毛の抜け毛くらいの感覚だからねえ。いいのだ!≫
ダンジョン機能は色々とデータが出るからね。って言ったところでワワンパァが「アッ」って声を上げた。
「あ、あのぅ……そういえばウチ、前はポーちゃんがスライムじゃったの知っとったわ」
「どういうことであろうか?」
おっとうに聞かれたワワンパァが答える。
僕とフーちゃんが、ワワンパァのとこに攻め込んだときの話だね。ワワンパァはダンジョンマスターだから、権能で魔物の鑑定が可能で、そのときはスライムって看破したってさ。
あのときはダンジョン攻略してたから、ラプターの形とか戦車の形だったもんね。
≪今見たら精霊?≫
「アレエェェ……? スライムになっちょるで? え、待って待って、向こうで見てみたら精霊なんじゃけど?」
「ダンジョンコアを通すと、精霊って分かるということでありますか?」
「じゃねえ」
「フム。であるならばユッグベインが、人工精霊を作ったということにはなるまい」
おっとうの話によれば、ダンジョンコア以外では看破不可能な偽装なんて、神の御業だろうってことだったよ。
当然、邪人なんかには作れるはずもないっていう答えが、導き出された。
「じゃが、万が一もあろう? 初代様に見てもらうのが良え」
「良いのか? それならばこの子らの希望にも添えるが」
なにやら票を取って、僕らはなにかの許可を得たよ。しかも初代コロコロさんにも会えるっぽい!
「初代様、いるする~!? 三代目願うするぅ~」
「カーッカッカ。制御の甘いお子ちゃまには千年早いわ」
「ムー」
なんとフーちゃんは甘ちゃんだそうです。攻撃力が高いだけっていう評価なんだろうか。さすがエルフの国。求められる水準が高すんぎぃ。
『それでそれで? 初代様はどこに行けば会えるべさぁっ!』
「あのお方は世界樹と共におられる。近いうちに向かうといい」
僕らはじゃあ明日だねって即決した。そしたら「えっ、明日?」みたいな感じになったよ。
「来たばっかりなんだし、もうちょっとゆっくりすればいいじゃないの」
「知らぬうちに、それがしたちも忙しない生き方になっておりますな」
「あー、ポーちゃんのせいじゃね」
「私、少し慣れるしたー」
幼女組はキャッキャしておられる。てぇてぇ。
でも……フーちゃんの表情に、若干の違和感を感じるんですが? さてはさっさと世界樹観光を済ませて、北大陸から脱出したいとか考えてるのかもしれないぞぉ。
嫌なことにはズルくなるからなー、フーちゃんってば。
≪ま、世界樹観光は望むところ! どんな木なのかなあ、楽しみっ≫
「んー……ンッン、内緒する、した」
ぷぷぷーだって。
「ウチも内緒には賛成じゃわ。見るまでは、なんも情報がないほうがワクワクするけんね」
「楽しみでありますな!」
≪ねー≫
幸いなことに今のコロロの村の位置が世界樹と近いそうで、1時間程度で行くことが可能みたい。クララの村との間辺りにあるそうだ。
「全然見えませんでしたよ!?」
「どうなっとるじゃろうか」
≪謎だねえ!≫
軌道エレベーターみたいな大樹ってイメージなのに、全く見えないんだよね。なにかあるなーって感じるヤツが、強くなるってこともないしさ。アレって単純に方位磁石みたいな機能が、僕にあるだけだったのだろうか?
世界樹の存在を感知しててくれぃっ。だってそのほうが特別感があるし~。北が分かったからといってさ、なにがどうなるとかはないし。
世界樹を感知してても、なにがどうなるとかはないけど。
僕は特別な私になりたい。
「ポーちゃん?」
「なに言うちょるん?」
「稀人、稀人、所以ある」
≪特別感ある存在になりたいっていう、恥ずかしい思いが漏れ出てたとはー≫
あー? いや、でもよく考えたらさ……ユッグベイン製スライムだから、世界樹探しのために探知能力を持ってても、不思議じゃないのかもしれない。
≪たまたま稀人だったから、操られずにいられるみたいですけど、別の僕みたいなのがいる可能性もあるのかあ。もしかしたら、ですけど≫
「そうなのであれば危険であるな」
「急ぎ、集まる必要があるじゃろうの」
「うむ」
相談役っぽいおばちゃんの意見に従って、長衆会議が決定したところで町内会議はお開き。僕らはお役御免です。
行動の自由は許可されたので、明日は世界樹観光ですな。
今日はのんびりするよ。時間的にもできることないし。
村の有識者たちは狼煙を上げに行ったよ。他の村から村長を呼ぶために。今からどうしよっかなーってときに、おばちゃんが近づいてきた。
「どれ、久々に見てやろうかね」
「むむっ、望むところする!」
このおばちゃんは、フーちゃんの先生のひとりだったみたい。魔法の練度がどうなったのかチェックするってさ。
表に出て対峙するふたり。
高まるフーちゃんの魔力。
パカァと音が出るフーちゃんの頭。
「ふぎゃっ」
ェエエ!?
「なってないねえ。というより、悪化してるじゃないかね」
≪え? なにも見えなかったけど……フーちゃん、頭叩かれたの!?≫
「これが精霊魔法における魔力の制御というものじゃ」
魔法を行使する際に、バレないようにするのが上級の使い方みたい。そういえばヘー氏の最後の魔法は、発動するまで分かんなかった!
≪もう一回! もう一回見たいんですけど! その見えない魔法っ≫
マジック・ディテクションで看破できるのか試したい。
「それが正解じゃよ」
≪おー、漫画の知識が役に立った≫
「ブブー、魔力出す、良いするっ。魔力、敵、釣られるする、倒すするぅ~」
しかしフーちゃんの意見は違うようだね。確かにソレも一理ある感じ。猛烈な魔力を出せば相手も脅せるし?
「ふぎっ」
でもパカァと音が出るフーちゃんの頭。
「できないとやらないの間には、大きな違いがあるんじゃ!」
「フーちゃんは苦手なん?」
「うん。ちょっと、できるない」
「それがしは得意です~」
≪お、さすがの忍者ちゃん≫
なんでも分身の術は、非常識な動きに合わせて、見せる魔力のオンオフで錯覚させてるんだって。魔力に敏感な人ほど引っ掛かるそうな。
「私、接近戦、ルーちゃん勝てる、ないするー」
「接近戦は獣人族にゃあ勝てんじゃろ~」
≪特にルァッコルォは追いきれないよなあ≫
「そうでありますかぁ? そうでありますかぁ?」
ルァッコルォが嬉しそうで僕らも嬉しいヨ~。
ニヨニヨ顔が強烈にカワイイんだからもーっ。
幸せを噛みしめてる僕らに、おばちゃんが一言。
「ほっこりしてるところ悪いんだけどねえ、フィアには説教じゃ」
フーちゃんはしばらくの間、お小言をもらい続けてたよ。
次回≪MISSION:96 秘密の守り人たち≫に、ヘッドオン!
※≪おー、漫画の知識が役に立った≫
krpk「だがINを使えるのは私も同じ」
ubー「まさか…!!」
krpk「見えたか?GYOーも使えるようだな」
新米魔術師~狩人x狩人風味を添えて~




