MISSION:94 選択
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「どうする? 見たいんだったら長衆が集まるまで、待ってもらうことになるわよ」
クララの森に、ナターリャさんの手紙を届けた僕たち。そのあと速攻でコロロの森に来たよ。3時間くらいで済んだんじゃないかな。その内2時間半は移動で、30分が待ち時間だったけど。
なんて厄介なんだ。エルフんち。
村長であるフーちゃんのお父さんに、今回やって来た経緯を話したんだ。東と南の王からの書簡もちゃんと渡したよ。その際、世界樹を見たいって伝えたら、フーちゃんのお母さんから「マテ」させられてるんだー。
この人がウワサの真っ直ぐおっかあかあ。いや、ヤメトコ……この思考は紳士ではない。例え脳に『おっかあは真っ直ぐなん!』が繰り返されようとも。
思考制御回路起動ッ。
フーちゃんのお母さん、スッゴイ美人さんなんだよね。なのに距離感が、隣のお姉ちゃんくらいの気安さ。なんかドキドキする。エルフって若々しい上に、キレイだからかな。
だけど問うてくる選択肢はつらいもの。
暇を耐えて世界樹を見るのか、それともイベントを察知した、アベルガリアに戻るのか。そんな苦しい2択を迫られたよ。アッチもコッチも逃したくないイベントだもの。
≪世界樹かなあ。やっぱり≫
「アベルガリア、戻るしたいある」
「それがしも世界樹が見たいであります!」
「ウチも世界樹見たい」
「じゃあフィアは我慢しないとね~」
「ウウー」
あ、いや、苦しいのはフーちゃんだけかもしんない。僕らは世界樹が見たいしね。
「でも、世界樹を見てもいいのかの審査は、長衆会議のあとよ」
「キーーーッ! 『今でいいべ? おっかあとおっとうが許可してくれてもいいべさ!』するっ!」
「駄目だ。身内での審査はありえぬよ。分かっているだろう? フィア」
「ブーブー」
ブーブーフーちゃんを微笑ましそうに見てるよ。この夫婦。
「そなたらのお陰なのだろうな。フィアの言葉の表現が多彩になって、父は嬉しいぞ。ありがとう」
「ねー。良い出会いをしたわね、フィア」
「ンッ! 最高、友達する~」
紹介しろって視線が、フーちゃんに突き刺さってるけど、友達最高踊りが始まってるので気付いてない。
これは自己紹介のターン。不気味な踊りはスルーです。
≪稀人のジアッロ・ミダースです。よろしくお願いします≫
「違う、ポーちゃん。それ、邪人、名付け。ダメ!」
「ポーちゃん、ウソ言うたらいけんじゃろ」
「フーちゃんに名付けてもらったのでしょう?」
うやむやの内にジアッロになりたかった。ムリか。
≪ジアッロ・ミダースのほうがカッコいいのに。改めまして、ポヨヨの森のポヨポヨポーです≫
「ウチはダンジョンマスターのワワンパァ。本体はアベルガリアに、おるんですけど」
「それがしは北の風のルァッコルォです。最近普通の女の子になり申した、元シノビです!」
朗らかに頷くおっとうとおっかあ。
僕らに自己紹介をしてくれた。
「私はコロロの森のシナシナスー。この森の長をやっているよ」
「私コロロの森のエルアンナスー。フィアの母よ。よろしくね、みんな!」
「しかし芸達者だと思ったが、まさか稀人とは。魔物の身体はさぞ辛かろうに」
≪あ、いや、そのぉ≫
楽しいしかなかったのですと伝えたら「エッ!?」ってなるフーちゃんの両親。まあ、そりゃあそうかもね。人じゃなくなってるんだし。
でもアレか。そう考えたらさ、最初に感情の薄いレイスになったのは大きかったのかも。じゃなかったら狂ってた可能性だって……こわぁ。
そのあとはもう、エルフだー、幼女戦士だー、異世界だーって、興奮してた。こうなったら楽しいしかないじゃん。
「ポーちゃん、ポジティブでアグレッシブすぎるんじゃあ」
仕方ないんじゃあ。
だってアレもコレもソレもなにもかも、見たいし試したくなるのですよ。
「すぎるする。ポーちゃん、切っ掛け。集まるした。みんな」
「そうなんですか? 初めて聞きましたが」
≪ああ、確かにそうかも≫
フーちゃんとの出会いは偶然だけど、ワワンパァダンジョンを見つけたのは僕だし、東大陸に獣人見に行きたいっておねだりもしたしねえ。
≪そういえばさあ、従魔登録って魔法的な繋がりがあるの?≫
僕ってフーちゃんの従魔だけど、ワワンパァの契約精霊でもあるじゃん? どうなってんのかなって思ったので、聞いてみたらみんな僕が精霊だったことを忘れておられる。
≪いやいやいやいや、ユッグベインが人工精霊のカテゴリーオーバーを作ってるって可能性もあるから、フーちゃんちに来る重要度が上がったんじゃん!≫
「だ、だってポーちゃんがスライムでいいじゃん。みたいなこと言うけぇ」
「そ、そうでありますぅ」
「どっち、ポーちゃん、関係ないする。ポーちゃん、ポーちゃんする~」
「待って待って、凄く重要なことをサラッと流さないで。あなたたち!」
「聞いたこともないぞ!? カテゴリーオーバーの人工精霊など……ありえん」
どたばたと慌てながら、シナシナさんが出て行った。やっぱりどう考えてもヤバイ案件だもんね。
「父様、どうするした?」
「人工精霊ってだけでもオカシイのに、カテゴリーオーバーとか言い出すんだもの。集会を開くんじゃないかしらね」
「さすがポーちゃん、不思議生き物する」
「呼ばれると思うから、それまでお茶にしましょう」
僕のせいで町内会議みたいなのが開かれるっぽい。
そしてまた待ち時間になっちゃったよ。
「フーちゃんてあんまり帰って来んのじゃろ? フィギュアあげりゃあ良え思うんじゃけど」
≪むむっ、建設的なナイスアイデア≫
「恥、なるするぅ」
「良いではありませんか。喜ばれると思いますけど」
だよねってことで、居間のテーブルにフィギュアを並べておこう。そもそもの話なんだけど、お土産にしようと思って持って来てるしね。制作側なのでバッチリ用意できるし。
コロコロパーティのは、この前チヒへ行った時に仕入れてるし準備万端なのだ。
≪ケースに並べたくなるなあ≫
ズラリと並んだフィギュアを見ると、どうしてもケースに入れて観賞したくなっちゃうね。
「えー? 遊ぶ、ない? 見る、のみ、楽しいないする」
≪楽しみかたは十人十色だね。まあイジって遊ぶのも好きだよ≫
「ウチぁ作ったら並べとうなるタイプじゃねえ」
「それがしは遊びたい派閥でありますな」
ケースも用意しておくべきだったかもしれないなあ。チョット配慮が足らなかったかも?
「なあに? お人形かしら……あらっ、凄いわね! フィアじゃない。みんなも!」
残念、そこに混じってる僕は本物です。
「ポーちゃんだけないのであります」
「売れんけえ、いらん言うて本人が」
「ポーちゃん、本物する」
≪黄色い玉なんて代用品でいいから売れないよ~≫
まあこのパーティのジオラマには、セットで付いてるけどさ。僕はオマケなのだ。
≪みんなの分があったら、万事オッケー! そもそもの始まりは、僕が欲しいってところからだもんね≫
「ポーちゃんがいいのなら、いいですけど」
≪というわけで、これはお土産なんでお納めください≫
フーちゃんも楽しそうに、コレは邪人ブッ飛ばしたときのとか、ダンジョンブッ飛ばしたときのとかって、お母さんに説明してるよ。
基本的になにかをブッ飛ばしてるからね。カッコイイフィギュアはさ。
つまりSDフィギュアの説明はしていない。あ、クニャンクニャンしてるバージョンは、どのシーンか分からないか。僕が見てデザインした日常のヤツだしね。
≪ちなみにコレはお肉がいい~ってときのクニャンクニャン。そしてコッチはお婆ちゃんのことをみんなが知ってて、拍手もらったときの照れてるクニャンクニャンだよ!≫
「アッ、ポ、ポーちゃッ、シーッ!」
≪え?≫
「フィアぁ?」
「た、食べるしてる!」
あっ、お野菜……か。でももう大丈夫じゃん? みんなも、ああ、ってなったみたい。肉多めだけど野菜は毎食食べてるしね。
「大丈夫でありますよ!」
「そうそう。お野菜は毎食食べちょりますけん」
≪なにより僕が許さない。野菜が必要な理由も理解してるので大丈夫ですよ≫
「フィ、フィアが野菜を? ま、毎食ッ!?」
「フーちゃん、どれだけ嫌いなんね……」
「エ、エヘェ」
照れるとこじゃないし!
稀人知識で女子には耐えがたい状況になるよ。って伝えてからは食べてると説明したら、フーちゃん以外の女子も聞きたがったので、野菜のほかに効果的な食材も教えておいた。
≪肉食中心は身体が臭くなります≫
「そ、それがし、気を付けるであります」
お肉スキーのルァッコルォが恐怖してしまった。野菜も食べてるなら大丈夫だって言ってるのに、フーちゃんのお母さんはナッツと柑橘系のドライフルーツを追加してたよ。
次回≪MISSION:95 特別≫に、ヘッドオン!




