MISSION:93 時の魔人
そんな風に異世界でひっそりと政治家下げが行われている中、精霊は働いてくれていたみたいです。
「近く、セレノ、村あるした」
「向かいますか?」
「ンーン、他、発見、待つする」
精霊がここに伝えに来るからだって。そりゃそうか。ご飯を食べてまったりモードってことだね。
ハヤテは仕事をするつもりなのか、屋根の上に陣取ったよ。僕も念のために、上空で散らかってるのです。いやあ、火事が心配だし。だってフーちゃんは森がハゲても、全然気にしてなかったからさ。
「ばっちゃま、フィギュア、遊ぶする~」
≪それならドラゴンセットも出そうじゃないか≫
食卓は結構大きいので、遊ぶスペースが取れるよ。ドラゴンセットだけじゃなく他のも出したら、フーちゃんがいらんことを始めた。
「フヒッ、へっへ、フーちゃん、そりゃあいくらなんでもっ」
「あはははドラゴンさんが可哀想でありますよ」
「面白いなるしたっ」
お茶をこぼすルァッコルォを、口を開けて身をよじるポーズのドラゴンの上に乗せた。ドラゴンのほうは可動フィギュアだからね。ポーズも自在だ。みんなでキャッキャしておられますよ。平和ですなあ。
≪お婆ちゃんが役に立ってない件≫
「んん~……、ンッ!」
もう今の時点でプルプルしてるじゃん。スゴクいらんことを思いついたらしい。
ドラゴンのお腹辺りを曲げるフーちゃん。キンタマを殴られた、くの字の王子をそこにセットした。そして少し離れた場所に、抉り込むようなアッパーを放つお婆ちゃんを置く。
「ブヒョーーーーッ、きゃきゃきゃきゃっ、ッグフ、きゃきゃきゃ」
「お止めくだされ! フ、フーちゃんっ、お止めくだされぇぇっ!」
「──ッハハハハッ、あぁあぁあああぁぁっ、ダ、メ、フーちゃぃひひひはははは」
≪平和なのになんてヒドイありさま!≫
「ジュピピチチッ!」
そんな爆笑中の僕らの所に、ハヤテが焦った様子で乱入してくる。まあ、ビックリするか。地面からエルフが生えたもんね……僕もビックリしたよ。
ニョキッて急に現れたし。
≪誰か来たけど……今は無理かぁ≫
そんなわけで、僕が挨拶するしかないよ。超美形のエルフ兄さんに。気後れするよ? こんなの。キレイな顔しかいないのかよー、エルフってぇー。
ゆるっとしたローブを身に纏ったエルフ兄さんが、ゆるっと手を上げてこんにちはしてきた。
≪こ、こんにちは。ポーです。ポヨヨの森のポヨポヨポー≫
「おおっ、君は言葉を理解しておるのだね。ウム、こんにちは。私はセレノの森のモラレス。連絡を受けたので参ったのだよ」
≪あーっと、そのぉ、申し訳ないです。今は爆笑中で、お話になりません≫
「構わぬ。私も見せてもらおう」
とか言ってカオスなジオラマセットに近づいたモラレスさん。それは笑い転げる人を、1体追加するだけの行為だったよ……ぶほょぉっとか言ってたし。四つん這いになって床を叩いてる。どうすんのさ。キレイとカワイイが笑い転げるこの惨状。
なにがどうなって地面から生えるのか、ってのを聞きたかったのに。
「やれやれ、ようやく落ち着けた。これほど笑うなど久しくなかったことだ」
そう言って、改めて自己紹介をしたモラレスさんに、手紙を渡した。
「リィロレッタ、手紙預かるしたー。長宛てぇ」
「うむ。確かに預かった。リィロは元気にしておったか?」
「元気でありましたよ。お子さんが物凄く可愛らしかったであります」
「なー。この子、ニーナちゃん」
ワワンパァがニーナちゃんのフィギュアを見せた。
「おお! 確かに確かに。ラマザン陛下の特徴も受け継いでおるのだな」
「ラマザン? 誰あるする?」
「東大陸の王様じゃ」
「ゴエモン様でありますよ?」
「あ、思い出すした。ラマザン・ムビした~」
≪いや、だから……ソレは秘密だってば≫
「「「……」」」
「大事ない。セレノの森も知っておるゆえ。だがポーの言う通り気を付けてくれ」
知ってるのはセレノの森とスー家だけだってさ。そしてその極秘情報を、僕らが知ってることに驚いてたので、経緯を説明する。銀コケシのことだね。
「なるほど……ゴエモン殿の時代から現代まで、活動しておる可能性が高いのか」
「手紙の内容もそのことでしょうな」
「ふむ、長衆の会議になるやもしれぬな。分かった、すぐにでも届けよう」
そう言ったモラレスさんは、表に出てチュルンと地面に消えてしまった。
≪あー、その技、どうなってんのか聞きたかったのに≫
「地面に吸い込まれたで!?」
≪来た時は生えたんだよ!≫
「ど、どうなってるのでありますかっ?」
「ンー、おそらく速いする。歩く、走る、以上。速いなる」
フーちゃんの話では、地面に干渉できる精霊なら、地中を移動できると思うってさ。フーちゃんは飛べるから、やったことはないそうだけど。
地面に干渉すると、こんなこともできるよーって見せてくれた。
「ルーちゃん、そこ、走る」
「分かり申した」
走るルァッコルォが、後ろに進んでる。仕組み的にはルームランナーなんだろうけど……地面は動いてないや。
≪スゴイ!≫
「不思議じゃ!」
「なんか気持ち悪いですな……」
≪そういう道具があったよ。室内で走って運動するヤツなんだー≫
速度とか距離とか脈拍とか、そんなのを合わせてどれくらいの時間で、どれくらいのエネルギーを消費したのか分かる、って説明したら引かれてしまった。
「肉体美というのは分かりますが、そこまで必要なのでありますかぁ? エェ~?」
「自然、一番」
「食べ物まで制限するとか異常じゃあ」
「うん。カナシイなる」
≪大食い選手権とかもあるよ≫
速さとか力強さとか、よく考えたらいろんなのがあるね。
≪この世界はないの? なにかを競って1位を決めるみたいな大会≫
「東大陸じゃったら魔力使用なしの武術大会くらいじゃね」
「魔法、魔術、使う。被害大きいなる」
「もう終わってますので次は来年ですな」
見てみたいかも。フーちゃんは、そわぁってなってるから参加したいのかもしれないね。南大陸や西大陸のことは知らないってさ。
そして魔法と魔術って違いがあるんだなーって、今知りました。説明求むっ。
「えっとねえ──」
ワワンパァ教授からの説明によると、アビリティとスキルみたいなものっぽいね。ゲーム的な。
魔法はアビリティで、そのキャラ固有の能力。フーちゃんの精霊魔法みたいな。
魔術はスキル。法陣術とかみたいに、技術体系ができてるものだそうな。なんか別にさあ、全部魔法で良いのでは?
「魔法を万人が使えるようにした、人族はスゴイのであります」
「発想、柔軟。スゴイする」
「世紀の大発明じゃもんね」
≪おお、それは確かにスゴイ!≫
「あとご飯、天才する。スゴイ、美味、天才! 究極お肉術っ! 天才っ」
なにやら人族は、いろんな分野の技術を躍進させたみたいだね。エルフは魔法がスゴイとか、ドワーフは物作りが飛びぬけてるとか、獣人系は全人類を虜にするとか。褒め合いながらテレテレしてる。
それぞれの種族が、それぞれに敬意を持ってるみたいで良かったぁ。
○○至上主義とかいなくて良かったぁ。
いたらいたで、フーちゃんみたいな人たちが、お仕置きしそうではあるけど。
「狼煙、再点火行くする」
煙が減ったから火力アップさせるってさ。
≪行ってこようか?≫
みんな行くってさ。僕だけでいい気もするけどね。まあ断るほどでもないし行きましょうか。セレノの森には伝わったので、2ヶ所分でオッケー。フーちゃんが青と緑の色付け玉を持ってきた。僕は薪係り。
「セレノ、近く、良いこと……コロロ、クララ、遠いあるぅ?」
その質問に答えられる人物は、ここにいません。時間だけが回答を知っているのです。
そんな時間くんに、もてあそばれた僕たち。
暇すぎて暇すぎて爆発しそうになったころに、やっと2つの村の所在地が判明したよ。言われてた通り、確かに暇だったもんなあ。帰郷を嫌がったのも納得だった。フィギュアとハヤテを愛でるだけでは、3日という時間は長すぎたのです。
おのれ、時の魔人めぇ。フリガナを「ひまじん」にしてやる。
そして村の場所だけど、どっちも微妙に遠いっていうね。ここからコロロとクララまでは、同じくらいの距離。そしてコロロとクララも同じくらい離れてるという、ホントもう実に面倒くさい距離感だった。
メンドクサイ。
「ね? 面倒なるしたっ」
「暇じゃったしぃ……」
≪しかも今日は日が暮れそうだし、出発は明日だね……≫
「こうなったら、是が非でも世界樹だけは見たいであります!」
それは楽に見れるといいなあ。でも明日の行き先は、世界樹じゃなくてクララの森です。
お使いクエストはゲームの中だけでイイヨ……。
次回≪MISSION:94 選択≫に、ヘッドオン!




