MISSION:92 悪辣
≪連絡入れておいた。向こうの僕はAWACSになって、一応警戒しておくよ≫
残機の量はアッチのほうが圧倒的に多いから、戦闘系のオイシさでも時間稼ぎはできると思う。僕はしぶといのだけが取柄。
最終的に僕らがオイシイ思いをするとしても、過程で危険があることも分かったしね。ストームジャイアントのダンジョンで。
まあ僕らが言ってるだけで、全部が全部オイシイって訳ではないと思う。ルァッコルォのはイベント予知だしさ。
警戒する場所は、王都アベルガリア、商業都市のラウファルダ、ワワンパァダンジョン。あとは村とか町だね。都市間移動しかしないので行ったことはないから、どんなところかは知らないけど。
飛んで移動しちゃってるから、僕らは寄る必要がないし。でも普通は馬車移動だから、休憩とか宿泊に使ってるはずなので寂れてはいないはず。
「用事、早い終わるさせる。早い戻るする。寝るする~」
サクサク終わらせたいフーちゃんに従って、お風呂とご飯を済ませた僕らは就寝。日の出前に叩き起こされた。
「フーちゃんが、ポーちゃんの慌ただしいところを学んでしもうた」
「眠いでありますぅ」
≪エェ? 僕のせいじゃないよー≫
「お風呂入るする。朝まで入るする……臭い、入るする……」
酒風呂で2~3時間ほど、煮込まれなくちゃいけないみたい。その場所は森の精霊が沐浴してて、たまたま裸を見ちゃうイベント会場っぽい感じ。酒温泉の真ん中に木が生えてるよ。花びらが舞っててキレイな場所だねえ。
「想像より匂いはないですな」
≪だね。なんかお酒はチョビッと入ってるくらいでいいって、なにかで見たような気がするし≫
「ウチぁ残念な気持ちになった」
「お酒、臭い。嫌、気分」
ワワンパァはお酒が好きなので、物足りない。そしてフーちゃんはお酒が好きじゃないから、チョットの臭いも気になる、と。
見た目は素敵な温泉なのに、このふたりからは残念温泉の烙印を押されちゃった。
「ウチんとこも木ぃ生やそうっと」
「お酒、ないする、ね?」
「大丈夫じゃ。フーちゃんがおるとこで飲んじょらんじゃろ?」
≪フーちゃんいなかったら毎晩飲んでるけどね≫
「お好きですなあ」
「心のエネルギーじゃもんね~」
温泉に併設されてる、打たせ湯の水バージョンで身体を冷やしながら、僕らはしっかり禊った。
「連絡所、行くする。あっち、朝ご飯する」
≪オッケー≫
ワワンパァは景色が気に入ったようで、ここで食べたかったみたい。だけど狼煙を上げて、返事を待たなくちゃいけないからってさ。
フーちゃん的に、北大陸へ上陸することは決定済みってことだね。
「では参りましょう。それがし、お腹が空き申したぁ」
「んっ。私、同じ。急ぐする」
ここから北東に見えてる山の上に向かうそうだ。狼煙を上げて、村の場所を教えてもらうんだって。村が定期的に移動してるからそういう手段が必要なんだろう。
ここまで来ても、世界樹が見えないことと関係してんのかな? 秘密結界の維持とか?
フーちゃんがアワワってなった。
聞くのは止めておこう。しかも極秘情報を漏らしそうだし。
≪フーちゃんストップ。内緒ってことなら言わなくていいよ。しー≫
「じゃね。アワアワしちょるだけでもカワイイけん」
「あら? ということは、それがしたちは世界樹を見ることが……?」
「んー、それ、聞くする。今、分かる、ないあるする。私、平気、思うする」
フーちゃん的にはオッケーっぽいし、チャンスはありそうな感じ。秘密なのは、世界樹を隠す技術なのかな。
せっかくここまで来たんだから、世界樹は見て帰りたいよね。
僕らはフィアフィア航空を使って、1時間くらいの空の旅。山頂にあるという連絡所に到着した。連絡所とか言ってたから、エルフの施設で職員とか住んでるのかと思ってたけど、コテージだったよ。
≪全部自分でやる感じなんだね≫
「そう。狼煙、上げるする。3個」
「ほんならウチぁ、ルーちゃんとご飯作りょうるわ」
「お肉願うする!」
≪アイアイ~。それじゃ冷蔵庫分の僕を残して、フーちゃんに付いて行こうっと≫
それなら僕を半分に分けて、薪を持って行ってってことだったので、小型輸送機になりましょう。
でも狼煙って長距離の連絡ってできたっけ?
「精霊さん~」
≪なるほど~≫
狼煙を見た精霊が手伝ってくれるそうだ。連絡所のご近所さんだけじゃなく、他の精霊にも伝えられるから、狼煙を上げるみたいだね。
フーちゃんは棚からゴソゴソと3色の泥団子(?)を取り出して、見せてきた。
「色付け、玉ぁ」
緑がコロロ、青がセレノ、赤がクララってことだそうだ。ナターリャさんは血みどろナターリャだから?
あ、違う、と。割り当てが、たまたま赤ってことらしい。
なるほど。
僕的には暴れん坊なコロロ組が、赤とか黒なイメージなんだけど。
狼煙の色が混ざらないように、それぞれを離した場所で着火した。持ってきた薪は細かく砕いて種火用にしてたよ。
「薪、煙、出る、少ないする」
≪あー、それでわざわざ新しく枝を切ったのかあ≫
「ここ煙たい。ご飯、食べる戻るするっ」
≪見ておかなくてもいいの?≫
「ダイジョブ。精霊さん、いる」
ちゃんと狼煙を上げる用の竈みたいなのでやってるし、周りに燃え移ることもなさそう。火事になっても、あっさり鎮火しちゃいそうだし大丈夫なのかな。精霊も見てくれてるそうだし。
ってことでカラフルな煙から退散です。赤青緑だからなあ。不思議だ。地球でも色は付いてたそうだけど、こんなカラフルだったんだろうか?
≪煙の色が不思議すぎる≫
「不思議~」
フーちゃんも知らないのかよぅ。だがしかし、そんなことはどうでもいいみたいで、心はすでにお肉モードのご様子。僕の疑問は疑問のままとなることに決定です。まあ、分かんないままでも問題ないけど。
それよりも僕って精霊なのに、精霊が見えないほうが問題だよ。大問題過ぎるので、この大陸にいる間に解決したい。
だって精霊見たいじゃんっ。先生だという、フーちゃんのお母さんに聞くしかないね!
「朝餉は牛肉のガーリックステーキであります」
≪なんかお昼気分だけど朝なんだよなあ≫
「起きるの早かったけんね」
≪早起きは三文の徳。っていうことわざが僕の育った国にはあった。ここの世界だと、小銅貨1枚分くらいお得だよって感じ≫
「オヤツ買えますな。お得でありますー」
「飴、お得ぅ。長時間、楽しむできるするっ!」
「ウチぁ小銅貨3枚は欲しい」
酒だな……ワワンパァが買いたいのは。安いのが確かそのくらいだったはずだし。
≪お酒を求めるなんて不健全でーす≫
「えっ? なんで分かったんじゃろうか」
「分かるする」
「バレバレですな」
≪分かりやすいじゃん≫
スッゴイ不思議そうなワワンパァだけど、分かりますとも。一択じゃもん。
そういえばチョットお得で思い出したけど、1円を拾うのに必要なエネルギーは、1円じゃ足りないみたいなのを、どこかで見た覚えがあるなあ。
「いちえんってどれくらいの価値なん?」
≪感覚的には1円玉100枚で小銅貨1枚≫
「なにに使うのでありましょうか?」
「なんか賢いような愚かなような、そんな気がするんじゃけど」
「ねー。ポーちゃん、世界、不思議」
≪えっと……権力者が庶民からお金を毟り取るため? よく分かんない。税金で払うイメージしかないや。小銅貨1枚の商品に8円とか10円の税金が付くんだ≫
商品はピッタリ100円みたいな値段じゃないから、小銭が増えて厄介だよね。キャッシュレスにしろってことだろうけど。
「あ、悪辣なんじゃけど!?」
「それが普通の世界なのですかぁ……」
「コワイ、ある、世界する」
政治家はちっとも理解できない日本語で説明するから、よく分かんないんですー。
なので異世界では、日本の政治家が悪辣でヒドイ人しかいないと思われても、しょうがないよね。
僕、悪くない。はず。
次回≪MISSION:93 時の魔人≫に、ヘッドオン!
※政治家はちっとも理解できない日本語で説明するから、よく分かんないんですー。
※※あくまで物語中の個人の感想です。




