MISSION:54 ざつないきもの
屋根や壁が崩れてしまっているので、飛ぶとこのダンジョンの様子がよく分かるね。わりと広い施設だったみたいだ。学校の広さくらいはありそうな?
祭壇部屋があったこの場所まで、石畳が残ってる。2車線の道路くらいの道が入り口まで続いてる。
その参道の脇には、小さなアパートとかプレハブ小屋サイズの、建物跡が何個かあるよ。
まずは近場から探検だね。祭壇のあった部屋には3つほど小部屋がくっ付いている。2つは入り口近くに。残りの1つは祭壇の横側だ。
祭壇側にある部屋は神官が使ってたのかな。目立つものとしては、朽ちかけた儀式用の杖らしきものがあった。他は壊れた壺とか食器の破片みたいなものばっかりだね。
「アッ、壊れる、した……」
「うーん、触ったらダメなんじゃね」
フーちゃんが杖を取ろうとしたらボロボロになってしまった。
≪そういえば遺跡調査ってさ、刷毛を使ってるのを見たことがあった≫
「先、言うするー」
「専門家なんて呼べんしねえ」
持って帰ろうにも触ると壊れるしどうしようもないね。マジックアイテムだけは平気なんじゃないかって、ワワンパァは言ってる。
「それ以外、諦め、する」
≪マジック・ディテクションで探すよ≫
うん。壁が壊れてるから壁画とかレリーフなんかないし、建物も全部壊れてるし、凝った装飾の柱だったであろう残骸だらけだし……僕たちのロマン心は飽きに向かって一直線だったんだ~。
≪見つけた。コアが乗ってる祭壇の中になにかあるよ≫
「私腹を肥やしとったんか」
「よくあるする~」
≪どの世界でもあるんだなあ。お主も悪よのうってヤツ≫
みんなで調べると祭壇の後ろに仕掛けがあって、そこを開くと鍵穴が現れた。やっぱこういうことに強いね、ワワンパァは。さすドワじゃわぃ!
「鍵が必要なんじゃけど鍵は朽ちてそう……道具があったら開けると思う」
「ない?」
「ない」
≪じゃ、僕が鍵になれば問題ないね。中に入ればいいだけだし≫
「おー、泥棒、専門家~」
≪実は3代前が大泥棒だったんだー。子供の頃に修業したよ≫
「エッ!?」「ホンマ!?」
≪いや、冗談だよ?≫
そういう娯楽の物語があったと伝えておいた。鍵穴に侵入した僕は驚愕の事実を知る。いるじゃん? 僕の中に泥棒いるじゃん? 鍵の構造が分かっちゃうじゃん?
えぇ……。知らんぷりしてシレッと開錠しちゃおう。
「すぐ開くした!」
「ポーちゃんスゴイ!」
≪アッ、イヤ、中が見れるからカナ~? なにが入ってるんだろうナー≫
「うきうきぃ~」
「この瞬間は盛り上がるんよねえ」
セフセフ。
では気を取り直して。
≪果たして価値のある物が見つかるのでしょうか!? それでは開けてみましょう。オォォープンッ!≫
「うわー、げんめちゅ……幻滅するした」
「ッカワッ、金貨貯め込んじょるがぁ」
チラッってコッチ見ながらワワンパァがげんめちゅをスルーした。ダイジョブ。僕だってフーちゃんに恥をかかせたりしないさ! 意をくんだってことで、ポニュっと頷いて言葉を書き込む。
≪マジック・ディテクションで反応があったんだから、金貨だけじゃないはずッ≫
『そ、その優しさはいらねぇだよ……かえってこっ恥ずかしいべ!』
バレテーラ。
「ごめーん、だって可愛かったんじゃもん」
≪僕は耐えてたよ!≫
「ポーちゃん、ブルブルするしてた」
≪アレェ? だってしょうがないじゃん……強烈にカワイカッタのだから!≫
もーもー牛さんになったフーちゃんに、ポカポカ叩かれる僕たち。
それもまた良き良きなのだ。
≪では改めてマジックアイテムを探そうの巻きー≫
「うん。金貨は金貨で儲かったけえ良えことじゃし」
「ムッ? これ、浮遊石する?」
「わあっ、ホンマじゃ! 魔力切れちょるけど使えるで!」
フーちゃんが金貨の山から掘り出したのは、赤ちゃんサイズくらいの浮遊石だった。
≪これって超レアなんでしょ?≫
「ほうよ。しかもこんな大き……え、ンッ? 天然物! エエーッ、も、もしかして虹の忘郷!?」
「ここ!?」
≪えー、なになに?≫
「で、伝説っ、島! 浮くするッ! ここー!?」
「ほうなんよ、ほうなんよぉ! 浮いとったんよ、ここぉ!」
≪島がぁ!? そんなのお話の中の話じゃん! スッゴ!≫
詳しく聞いてみると、遥か昔に滅んだという、伝説の島だったんじゃないかって。ここが。
神々の怒りに触れたとかなんとかで、地に落とされたっていうおとぎ話が世界各地にあるんだそうな。
しかもそのどれもが同じような話なので、島が空に浮かんでいたっていうのも、真実なんじゃないかと言われてるそうだ。浮遊石なんてのもあるしさ。ただ現存する浮遊石は、大きくても拳2個分くらいのしか見つかってないんだって。
その浮遊石だってダンジョン製で、天然物に比べると7割程度のパワーしか出せないらしい。だから浮遊石は神様が創った物って言われてる。
なのに赤ちゃんサイズの天然物発見。
≪ヤッバイ物見つけちゃったね≫
「やっばいー」
「ハゥゥ、キレイじゃあ」
≪空中要塞用に欲しいなー≫
「か、軽いんよ、ポーちゃん! 伝説なんよ? 伝説!」
「そうあるー!」
えー、だってどうせ僕らしか来れないんだしさ、秘匿したっていいじゃーん。それに神罰喰らったヤツらのなんでしょ? 有効利用しようよ~。
≪しかもスッゴイ前でしょ? あ、でもエルフの人なら生きてたりもするんじゃないの? 詳しい人もいそうだけど≫
「初代様、その時代する。たぶん」
「生きちょるん?」
「どこか、いるする、はず。私、見るないする」
≪なんというかあ、初代コロコロスーさんが落としたんじゃないの? 伝説作って初代になったんでしょ?≫
「えぇ~、そうある~?」
「世界を覆う悪意の王を倒したとか、そんな伝説じゃったよね?」
「うん。初代様、詳しい話、ないした。ふんわり、伝わるするした」
「そこはちゃんと説明いるじゃろぉ……」
ざつないきものっ! エルフ、なんて大雑把に生きてるんだ。
うーん、虹の忘郷って名前から想像するに、天候を操作してたのかなーって思える。だって虹じゃん。雨じゃん? 雨を操れたら世界なんて、どうとでもできそうだしさ。
世界を覆うって雨雲とかなんじゃないかなーって。そんなことをつらつらと、メッセージウィンドウに書き込んでいく。
≪だから僕がもらっても問題ないような気がしてくるでしょ?≫
「せんわ!」「しないするー!」
≪が・ん・こ! もー仕方ないなあ、じゃあ王様に連絡入れるよ?≫
「んンッ……」「ムム……」
心の中の天使と悪魔がせめぎ合ってるじゃんか。
≪とりあえず、他のマジックアイテムも探そうよ。浮遊石はディテクションに反応してないしさ≫
「う、うん」
「ほうじゃね」
有難味のなくなる量の金貨をジャラジャラかき分けて、いくつかのマジックアイテムを発見。
指輪8個、腕輪4個、短剣3本だ。
スゴイ量だね。金貨も山ほどあるのに、マジックアイテムが15個だよ。さっそくワワンパァが鑑定し始めた。
リング・オブ・アンチポイズンx5(毒耐性)
リング・オブ・フレイムプロテクションx2(炎耐性)
リング・オブ・アンチカースx1(呪い耐性)
ブレスレット・オブ・アンチディジーズx1(病気耐性)
ブレスレット・オブ・ヘルス(体力強化)
ダガー・オブ・リターニング(投擲後、手元に戻ってくる)
ダガー・オブ・ファントムタッチ(非実体の魔物に有効)
ダガー・オブ・ショック(電撃付加)
≪呪いとか霊体とか用の装備もあるんだねえ≫
「珍しいんじゃけどね。浮遊石のせいで普通に感じるわ」
アンデッドとか、死体で作った悪趣味ゴーレムが、呪いを持ってるんだって。
「……リオ、話す、する。報告、大事あるする」
≪お、決心したね。報告了解~≫
まさか海底遺跡で空の浮島を見つけるとは思わなかったよね。僕は王様に連絡を入れた。
≪鼻から紅茶ブーしたってさ、王様≫
一瞬間が開いて──
「きゃきゃきゃきゃ……っひィ、あきゃきゃきゃきゃハフッきゃきゃいひゃヒー」
──呼吸困難になるほど笑い転げるフーちゃんであった。
≪すぐ帰って来て欲しいってさ。帰ろ~≫
「おっけーじゃ」
フーちゃんはまだ笑い転げてるので、抱えて連れ帰りましょう。
「ッヒィィらめ、も、らめきゃきゃきゃ──」
次回≪MISSION:55 独占≫に、ヘッドオン!
お宝
天然浮遊石(特大)
リング・オブ・アンチポイズンx5(毒耐性)
リング・オブ・フレイムプロテクションx2(炎耐性)
リング・オブ・アンチカースx1(呪い耐性)
ブレスレット・オブ・アンチディジーズx1(病気耐性)
ブレスレット・オブ・ヘルス(体力強化)
ダガー・オブ・リターニング(投擲後、手元に戻ってくる)
ダガー・オブ・ファントムタッチ(非実体の魔物に有効)
ダガー・オブ・ショック(電撃付加)
金貨山盛り




