MISSION:52 甘い未来
魔物だけじゃなくてさ、トラップとかも使えそうじゃない? まあ、ワワンパァ本体が操作する必要はあるだろうけど。狙いを定める必要があるしさ。
「それも手じゃね! でもいっぱい作るのはもったいない気がするんじゃけど」
「ステージ移動、扉、ところ作る、トラップ!」
「それじゃ! フーちゃんっ」
コアルームに戻った僕たちは、アレコレ案を練るよ。
≪あ、でもそれだけだと、冒険者が邪人に襲われた場合に対処できないから、やっぱり魔物も必要かあ≫
「どんなの、するぅ~?」
「「ほうじゃねえ……なんの魔物が良えじゃろうか」」
≪ひっそり暗殺系じゃないかなあ、やっぱさ≫
アサシン系は強いと思うのよ。冒険者に擬態してたら、パーティ仲間が邪人を守っちゃうかもだし。フーちゃんとワワンパァがアレコレと、候補を上げているのを聞きながらそんなことを思った。
候補その1。ゴブリンニンジャ。忍者いるらしい。この世界。初めて見る忍者はゴブリンになりそうです。3~4匹でチームを組むそうな。
その2。コボルトイェーガー。単機で狩りをするコボルト。すっごい弓術らしい。気付かれる前に遠距離からブスッと。
その3。デイストーカー。保護色を使いこなして、静かに獲物を仕留める豹。基本色は白いんだって。こちらも群じゃなく単機で動くみたい。
その4。死紋蝶。不気味な模様の吸血黒アゲハ。いつの間にか毒鱗粉で痺れて、やられちゃうらしい。どこからともなく現れて、獲物に群がる。見えてても認識できないヤベーヤツとのこと。ヤベェ。
その5。レイス。言わずと知れた悪霊だね。霊体だし物理無効で、さらには人生を無かったことにされちゃうドレイン持ち。僕はなんでレイス時代に平気だったのか謎だ。マジで「上上下下左右左右海老ッ!」が効いてたのかなあ?
「ポーちゃん、震える、してる。凄いブルブル」
「「どしたん?」」
≪スッゴイ笑ってました~≫
鉄板ネタに戻ってたよ、上上下下左右左右海老ッ! こんなの耐えられるわけないんだよぉっ。くの字になってザリガニっぽく、シュッてバックダッシュするのは反則! ヤメテ!
説明を求められたので、伝わらないと思いつつ説明したけど分かってもらえなかった。まあ無理だよね。
「「ん~、あとは様子を見ながらにしようかねえ」」
「いっぺん、必要、ないある」
まずは蝶以外の4種類で試すことになった。ワワンパァによれば、普通ゴブリンや普通コボルトの100倍くらい消費するんだって。でもゴブコボの100倍強いかはワカラナイ。
とはいえ訓練による強化が可能なので、なるべく早めに召喚しておこうってことになったよ。ここらクラスの魔物だと、意思疎通が可能だそうだ。さすがに蝶は無理だそうだけど。だから候補から外れたというか。
≪ねえ、邪人とは全然関係ないんだけどさ、国軍ステージと迷宮1層入り口近辺に、大浴場作ったらいいんじゃないかと思った≫
キチャナイまま町に帰るよりはいいと思うんだよね。しかもノンビリ風呂に入ってたり、装備洗ったりしてる時間もDPが稼げるしさ。
≪題して、塵も積もれば山となる作戦ッ!≫
「臭い、ない、良いことぉ~」
「「アハハハハ、みみっちい作戦じゃねえ、フヒッ」」
≪僕の故郷のことわざなんだー。小っちゃいことでもコツコツやれば、やがて大きな成果になるよっていう≫
「「おっけー、作っちょくわ」」
1ヶ月後──なんか観光地になった。いや、確かにダンジョン入り口は荘厳な雰囲気だし、できたばっかのダンジョンで珍しいし、ゴージャスな大浴場あるけどさ。
フィアフィア印のクッキーとか、ワワンパァパンとかワイン、スラちゃんの黄金プリンとかの出店まで、入り口前の広場に並ぶとか……思ってもみなかった。
広場はソコソコ広いから、ちょっとしたバザーみたいになってる。弁当とか売られたりしててさ。
もちろんフィギュアも売られてるよ。僕以外。いいもん。黄金プリン売れてるからいいもんねっっ。
なお、大浴場は作った時よりもさらに大きくなった。観光客も入るし、マッサージ師とか散髪屋なんかも入り浸って商売するし。古代ローマのお風呂文化みたいになってるんだよね。まあ、そんなわけでさ、お風呂からのDP収入も結構バカにできなくなってきたよ。
だからチヒダンジョンのアーさんにもお勧めしといた。
あとは邪人を検出可能な状態にしたほうが、いいってことかな。でもコッチはすでにゴブリンシャーマンを育ててるってさ。対策を取ってた。エライッ!
それを伝えたら、フーちゃんとワワンパァが「はぇぇ」って感心してる。
「「ウチもさっそく育てようっと」」」
「パァちゃん、ひとり、大変、当然。気付くないした」
≪ねー。みんな揃ってポンコツだった≫
しかし、ゴブリンとかコボルトって汎用性高いね。前衛から後衛、さらに回復まで網羅してる。野良だとさすがにそこまでは、育たない可能性のほうが高いだろうけどさ。ここはダンジョン。しかも運営サイド。ゴブコボも立派になるよー。
「ウギャッ」
≪ほらあ、そこ。油断大敵だよゴブリン1。ちゃんと背後や上空にも注意を払わないと仲間が犠牲になるからね!≫
「ギャギャー!」
≪部隊を生かすも殺すも、リーダーであるキミ次第だから頑張れー!≫
「ギャイ。ギェーギェギュ! ギェイ! ギャギギャギョウギョギャイギャギギャッ!」
「「「ギャギギャギョウギョギャイギャギギャ!」」」
≪共通語読めるんだからスゴイよねえ、キミたちってば≫
「ギェギェギュウ」
≪アハハハハ、フーちゃんの真似ぇ? それー≫
「ギャイ。ギューギャギャ、ギャギョギャギェギェギュ」
≪憧れるのワカルッ。じゃあ今日の訓練は終わりー。ゆっくり休んでね≫
「ギャイ。ギョギュギャギェギャギャギェギギャ」
お疲れーって返した僕を、ものスッゴイ不思議な顔して見てくる、フーちゃんとワワンパァ。
「会話、成立、謎ぉ~」
「「なんで分るんね!」」
≪分かんないけど雰囲気かなあ?≫
キミ次第だ頑張れのあとの「ギャイ」は「はい」でしょ。
ギェーギェギュの時は部隊が整列してるし、ギェイの時は礼してるし。
ギャギギャギョウうぎゃぎゃーの時は、こっち向いて敬礼してるからありがとうございましたって言ってんじゃないかな?
ギェギェギュウの時はフーちゃんの照れる~の動きだしね。フー様憧れですってのもフンワリ分かったよ。って伝えたら、なに言ってんのみたいな顔された。
エェ~。
「「ゴブリン隊とコボルト隊に言葉叩き込むわ」」
「連絡、密、大事」
≪完全にコッチの言葉、理解してるもんね。あとは発音だけだし、頑張れば案外イケるのかな≫
正直言うと感動すら覚える。この部隊が死んだら泣いちゃうかもしんない。結構強くなってきたけど、1本角にはまだ及ばない。訓練を続けよう。
まさかゴブリンやコボルトを失いたくないとか、そんな思いが生まれるなんて思わなかったよ。
「同感、あるする。不思議、感覚ぅ」
「「なー。マスターとしては……消耗品として考えるべきなんじゃろうけどぉ」」
そんなのもう無理だってさ。それを証拠に彼ら専用ステージがコアルーム側に完成した。普通に暮らせるように、普通のゴブコボたちも召喚されてて、村が形成されてるよ。
上位種はコッチが訓練するけど、それをフィードバックしてもらうつもりみたいだね。上手く進化してくれるといいけどなー。
「「ちょっとだけ良え装備も与えてしもうた」」
≪ワワンパァ甘いー≫
「あまーい」
「「ま、魔法の装備じゃないけえセーフじゃもんね!」」
ゴブリンはサル面、コボルトはイヌ面。上位種は若干人寄りになるし、ワワンパァも会話可能になったらさ、もっと甘やかしそうな未来が見えるよね。
「「そ、そんなことはないけえ安心して良えよ? ホンマに」」
「ねえ、パァちゃ~ん、私、スラちゃんの黄金プリン、食べる、したい~」
甘々ワワンパァに甘えるフーちゃん。プリンをおねだりしてる。
「「ん? おっけー。ほんじゃ休憩にしようか。シャマちゃんも食べるじゃろ?」」
「ギャ~イ、ギャッギャァ」
「「うん。ほんならみんなにも持ってってあげんさい」」
そう言いながら、アサシン部隊とその村のみんな用にって、ゴブリンシャーマンのシャマちゃんにプリンを渡してた。
甘やかす未来は、今・確・定ッ。
「パ、パァちゃん、分かる、してる。ゴブリン、言葉」
≪あ、ホントだ≫
そんな感じで訓練したり、ダンジョン町や王都で邪人探したり、ゴブコボ&ちびヤミちゃんを甘やかしたり。そんな毎日を送っていたら、別動隊から連絡が届いた。
<りゅうぐうより各位。海底にてにて遺跡を発見。ダンジョン化していると思しき魔力を感知した。指示を仰ぐ。ポイントはX12.Y3>
次回≪MISSION:53 海底遺跡≫に、ヘッドオン!




