MISSION:49 怠惰
≪どうしよっか。今から山脈を調べるには、時間も遅いしさ≫
「暇、なるした」
「国軍の訓練とか見てみる?」
王都防衛戦の訓練をしてるらしい。対するはゴブリン100、コボルト100、オーク30の魔物軍団。国軍が結構入り浸ってるらしく、ゴブとコボくらいなら、いくらでも出せる余裕があるんだって。
「アーチャーとかマジシャンとかになると、ちょいコストが掛かるんじゃけどね」
コアルームで映像を見ながら説明してくれた。
城壁があるし、どうあがいても国軍が有利だね。上を取ってるから弓で撃ち下ろして死体の山を築いてる。
コボルトたちが梯子を使って登ろうとしてるんだけど、城壁に辿り着く前に運搬係がやられちゃってる。
ゴブリンとコボルトも弓やスリングで応戦してるけど、城壁の上の軍には効果的じゃあないよね。でも門を破ろうと破城槌でドッカンドッカン突撃してる、オークへの攻撃が難しくなってる。
真下に攻撃するには、城壁の上から身体を大きく晒さないといけないし。そんなことをしたら、魔物の遠距離攻撃が当たっちゃうのだ。
どうすんだろうって思ってたら、門に突撃するタイミングで開いた。吸い込まれるオーク。待ち構えてた槍兵がオークを串刺しにする。そしてまた閉ざされた門。
上手いこと4匹のオークを仕留めてる。そのタイミングで、魔法部隊が一気に力ある言葉を放った。電撃と火炎の魔法が魔物軍団に降り注ぐ。
「また負けそうじゃー」
「ゴブリン、コボルト、オーク、弱いある」
「ほうじゃけど悔しいなるんよ」
≪……いや、魔物が勝っちゃダメなんじゃない?≫
「死人が出る前に撤退すりゃあ良えんじゃしぃ。あ、ダメじゃ負けた」
生き残ってる魔物が逃げ出したね。魔法攻撃が決定的だったみたい。でもこの逃げ出した魔物の中に、8体ほど進化したのもいるってさ。ゴブリンチーフが1体、コボルトシーフが3体、アーチャーが2体ずつだって。
≪なんか面白かった≫
「うん。見ごたえ、あるしたー」
「まあ、今回のは分かりやすい訓練じゃったしね」
チーム組んで森の中を掃討する訓練とかもあるんだって。それは確かに見ごたえはなさそう。俯瞰の映像じゃ見えないだろうし、側に寄っても小規模の戦闘だろうしさ。
なんだかんだ話ながら魔物の処理まで見ちゃったねえ。テキパキ片付けていく様は、参考になるような雰囲気を漂わせてたよ。
参考にはならないんだけど。僕が分解しちゃうからね。
気付いたら3時間くらい経ってたので、僕らはデザートを取りに行ってご飯お風呂就寝。明日は早くから出発して、ドラゴン探しだ。AWACSが西側から南下しつつ捜索中。ということで僕らは南側から捜索かな。
朝からガッツリ食べてパワーを漲らせる。
「お肉、最高ある」
「「ほらあ、野菜も食べんと」」
「パァちゃん、母様、みたいあるするぅ」
しかもステレオである。左右から挟んでお世話をするワワンパァ。
≪野菜は大事だからね。仕方ないね≫
まあ生野菜じゃなければ、そんなに嫌がってないので良きことですな。〆に野菜ジュースを飲んで、出発の準備だ。寝巻から着替えた本体のワワンパァは、淡い緑のパステルカラーで仕立てられたドレスを着ていた。
「パァちゃん、良い、する!」
≪もらったヤツ? カワイイじゃーん≫
「せっかくじゃしね。ウチが着とっても問題ないしぃ」
恥ずかしそうにクネクネしながらの、行ってらっしゃいを頂戴しました!
最高かよ。
1層に着いたらワワンパァが説明を開始。
「こっから出る前にエレベーターの中から、外に人がおるか確認してぇよ」
指さしたところには監視カメラの映像が映ってた。今はオープン前なので誰もいないけどね。
「昨日、あるした?」
「忘れとったけぇ昨日付けたんよ」
≪ダンジョンオープンしたら、チマチマ問題が出て来るかもねえ≫
「まあ、そういうもんじゃろ」
ダンジョン入り口に着くと、野次馬がいっぱいいた。
「入れやせんのにもう集まっとん? 日にちぁここにもギルドにも書いてあるじゃろうに」
ワワンパァが伝えると、どうにかして入れないか試してたらしい。入れてくれと頼まれてるけど、そりゃあお断りですなあ。野良ダンジョンならそれでも良かったんだろうけど、契約ダンジョンだしね。
「ダメじゃ。もっと有意義に時間使いんさい」
「ん。無駄。行くするー」
≪あいよー。あ、しつこいと睾丸殴打始まるから気を付けてね! マジ、好きだから、この子たち。ホント≫
昨日のワワンパァの一撃を見てたのか、大人しく引き下がる冒険者たち。色々試してたんだろうけど、無理なものは無理だしね。
僕たちはそんな彼らを尻目に、飛び立った。
≪じゃあ予定通り南側から探索して行こうか≫
「おー」
「ウチの飛行速度はそんなに変わっとらんけえ、またフーちゃんのお世話になる」
「まかちょけぇ!」
一応、何日か村に泊まれるように、お金は持って行く。調べる範囲が広いからねえ。いちいちダンジョンまで帰還してたら、時間がもったいない。山の麓にある村を拠点にしたいところだ。
2時間弱くらいかな、ボ・ヤウダジーア山脈の端っこに到着。たぶんまだ朝の7時辺りだと思う。僕はラジコンサイズに分散して、探索範囲を広げるよー。といっても7機程度なんだけど。3機ずつ僕らの左右に分散して行く。
最初は村を回って、ドラゴンの目撃情報なんかを集めるかって話もあったんだけど、そんなこと言われたら村の人も不安になるだろうからね。ソレはやめることにしたんだ。
目撃情報があったら、王様の所にも情報が来てそうだしさ。でもそういう話は言ってなかったので、直近で見た人はいないんだろう。冒険者ギルドには通信手段があるっぽいし、目撃情報はないと思われる。
たまに見かける魔物を狩りながら探索を進めてるけど、時間かかりそうだねえ。
ちなみにオーガはソコソコなサイズの魔石持ってるから、いたら速攻でいただきたいと思いまーす。牛脂緑茶って感じ。ミルキーな甘めの緑茶味。びみょいデス。サイズはクレイジーモンキーより大きかったよ。だけどソロで動いてるのでオイシクはないかも。エネルギー的には群で動くクレイジーモンキーだね。
あとはオークよりは使えそうな魔石、ってくらいのを持ってる動物系かな。ヤギとかカモシカみたいなヤツ。強そうな角が付いてて、デッカかった。アニメで山の神様に任命されてそうな、さ。
鳥とか虫のはゴブリンサイズの魔石なので即消費しといた。
「いないする」
「探すんは時間かかるもんじゃろ?」
なにか手掛かりになるようなことが聞けないかと思って、フラムブチョーに聞いてみるものの特にないみたい。
強いて挙げるなら怠け者らしい。
ドラゴンはカッコいいので、ワワンパァダンジョンにも欲しいっていう理由だったのに。
怠け者なのか。
常闇って中二カッチョイイ名前なのに。
怠け者なんだ。
「ドラゴンの怠け者かあ……長寿の怠け者は人からしたら、動かんようなもんじゃないんかねえ」
ソレ、ドラゴンの置物でいいんじゃないかなー?
「なにか、埋もれる、してる、かも」
≪難易度が上がった気がする≫
<ところがドッコイ、見つけたよ。こちらAWACSヘヴンアイズ。山脈中央辺りの火口湖にて、ブルードラゴンの常闇と思しき個体を発見。全機合流されたし>
別に急がなくていいって言われたけど、その理由が寝てるからだって。グーグー寝てんだって。ペチペチしても起きなかったから、ベッチンベッチンしたそうなんだけど、起きないんだって。
これが──常闇。グータラドラゴンの実態かあ。




