MISSION:48 毒
「「じゃあウチぁメンテナンスするけえ」」
「分かるしたー」
これでも見ててと置いて行った新ジェットパックは、さらにゴツくなってたよ。重量が背中に集中しちゃうからか、バランスを取るために前面部分が胸部を覆う装甲に変わってた。ウム、カッチョイイ。
「カッコイイあるする」
≪ねー≫
丸いのが好きなフーちゃんだけど、ゴテゴテと複雑なジェットパックにも魅力を感じるみたいだね。主翼をクイクイ開閉させたり、キャノン砲を動かしたりして遊んでる。何気にギミック好きなのかも。
「強いなる、良いことー」
≪僕は魔石がもっと欲しいなー。ワイバーンの魔石、僕の分は全部使っちゃったしねえ。欲を言えばワイバーン以上の魔石が欲しい≫
「それ、野良、なかなかいないする」
≪アチャー、そうなんだ。残しておけばよかったな≫
単機で飛んでても空の魔物に会わなかったしなあ。AWACSのほうは、たまに狩ってるらしいんだけどね。向こうは向こうで、機体を維持したりサテライト増やしたりするのに使うしさ。
≪商業ギルドから定期購買するってのも手かあ≫
「商業ギルド、高い、なる、しそう」
≪うん、なるかも。でもさ、フィギュアの売り上げのお陰で、僕は成金スライムなんだよねっ≫
「お金持ちー」
≪もーちもちぃ~≫
「なに言うちょるん?」
戻って来た生ワワンパァにも説明した。フムフム頷いたワワンパァは、これからは彼女の分も使っていいと言う。なんと、さらにダミーコアを追加したそうな。総数は5個。ハイパワーなワワンパァドールになったみたい。結構な連戦じゃなければ大丈夫と判断したんだってさ。
≪儲かってるね、ワワンパァ≫
「ふたりのお陰じゃねえ~。ニシシッ」
そしてクレイジーモンキーの魔石を、上位クラスの魔石に交換できるって教えてくれた。ダンジョンの機能でそんなのがあるっぽい。ただ、やっぱり効率は悪いってさ。フラムブチョークラスの魔石にするなら200個は消費しそうだってー。
それはいくらなんでも、もったいないね。パワーと交換率のバランス的にワイバーンクラスがよさそうだったので、100個分全部を交換した。20個になって貧乏になった気分。
≪ねえ、海中の魔物っているよね?≫
「いるする」
≪討伐してる人とかは?≫
「おらんじゃろうねえ。地上には影響がほとんどないし、そもそも海の中は厳しいじゃろ?」
≪まああったとしても陸への被害とかじゃなくて、船が沈められるとかかなあ≫
「対策、ある。それ、あまりない」
とは言っても頻発してないだけで、魔物による海難事故は避けられないみたいだよ。
≪へぇ、ありがと。海中探索して魔石狙うかなあ。問題は僕が魔物と普通の生物の差が、分からないってことなんだけど≫
「マジック・ディテクションが使えりゃあ分かる」
範囲は視線の方向に60mくらいで、扇状に広がるんだって。探査範囲がチョット狭いかなあ。まあ僕の場合は分散して使えるしいいか。法陣術で組めそうだったので、作ったよ。
目に掛けてサーチライトみたいな感じで魔力探知しようと思ったら、なぜか発動しなかった。なので僕の表面部分に、まとめて掛ける感じにした。なんか魔力が結構必要なんだけど、全方位カバーできるからいいってことにしよう。
目が心の中にしかないからカナ?
「序盤のお宝の定番じゃね。マジック・ディテクションのワンド」
「あれ、便利」
≪よし、新機能を備えたサテライトで、ボ・ヤウダジーア山脈を探索だー≫
「エーワース、行くする~?」
≪惜しい、正解はAWACSでしたー。時短のために先行して常闇を探すよ。山脈にいるってことしか分からないしね≫
「ポーちゃんも便利じゃねえ」
ボ・ヤウダジーアは、王都の西から南に連なる山脈だ。距離はだいたいテァナ湖の街に行くくらいの距離はあるかな。距離は測れてないので何kmとかは説明できないけど。そして山脈の大きさというか、長さというか、それが王都からチヒの街に行くくらいだから結構なサイズの山脈なんだよね。
うーん、チヒまでは巡航速度で3時間半くらいだったはず。巡航速度が300km/hだとしたら、1050km……うーん時間も速度も、たぶんっていう数値だし分かんないね。
結論、ボ・ヤウダジーア山脈はデッカイってことで。
そんなわけだからAWACS全部といきたいところなんだけど、3分の1は海中探索に回そうと思ってる。海中はこの世界じゃ未知の領域みたいだし、儲かりそうな予感しかないよね。魔石は期待できるんじゃないかなあ。ついでに航路が分かりそうな人に聞いて、沈没船があったらサルベージもしよーっと。
呼吸しないということが役に立つ、初めての事案。ニヤリ。
とりあえず今日はノンビリすることにした。ワワンパァ本体はフィギュアを見てないので、お披露目するんだー。
「実はウチも作ってしもうた。ガマンできんかった」
≪あ、そういえば聞いてた!≫
熱中してるドワーフを見てるけど、ワワンパァはそんなでもないんだなーって思ってた。恥ずかしいが勝ってるんだと思ってた。
本体が熱中してるから、ドールのほうは平静を装ってたのかヨォ。
しかも第1ステージの1層で手に入るトレジャーに、フィギュア用の素材も設定してるらしい。どんどん作られてるし、需要があるからかあ。
「軍服の剣士のフーちゃんは、実はウチが元を作ったんよ」
ガトリングガン構えて空飛ぶワワンパァは、ココにいる僕が作らせたそうな。
「フーちゃんだけに、恥ずかしい思いさせるんはいけんっ!」
「作る、ない、正解ぃ」
「作りたかったんじゃもん。無理じゃもん。ガマンできんかったんじゃもん」
めでたくハマってるワワンパァがいました。そして僕は更なる商機を思い出したのです。射幸心をくすぐるヤツ。
そうです。カプセルトイです。欲しくて欲しくて、何度も回して手に入れた物には、得難い幸福感を与えるヤベェヤツデスヨ。
あれってさ、目当てのを手に入れたらスッゴイ嬉しいんだけど、急に素に戻るんだよね……ハテ? 僕、なんで30万も使ったんだろって。いや、確かにさ、ケースに1000個近く並べると壮観なんだけどね? 30万はチョット……胃の辺りが重く…………なっちゃったのよ。ズゥゥンってさ。
なのでふたりにも相談してみた。
「目的、違うする。お金儲け、するない」
「ほんならダンジョンで出す?」
≪フム、確かに。僕らにお金はそんなに必要じゃないしね。ダンジョンでやるなら冒険者呼び込めるのかなあ?≫
魔物や冒険者の小っちゃいフィギュアが、多数あったら並べて陣形の相談とかも可能といえば可能。魔物の動きなんかもトレースできたりするよね。
「おー、使う、道、あるした!」
「おっけーじゃ。オマケ程度に付けとくわ」
「ん、お昼ご飯するー」
「ほんならDPご飯にしようか。そっちのポーちゃんは久しぶりじゃしね」
≪ありがと、ワワンパァ≫
フライドチキーン! そしてビールッ! あとは見せプというか、フーちゃんに野菜も食べるよポーズするためにサラダをチョイスした。
フーちゃんとワワンパァは、ガーリックトーストと、ごっついベーコンの入ったポトフにしたみたい。
≪オイシー。感謝感謝だよ。ホント≫
「良えんよー。いっぱい食べんさい」
「ん。小ぶり、ハンバーグ、食べるする」
≪フーちゃんが食べたいヤツじゃんソレ≫
「バレるした~」
和やかに食事が終わったところで衝撃に事実。
「ビールはなあ、人気ないでぇ。炭酸が酒の味ぃ邪魔しとるけんね」
≪バ、バカな!?≫
爽快なのど越しなのにッ! でもワワンパァに言わせると、酒の味や香を楽しまなくてどうすんのってことらしい。
エールのほうが人気あるってさ。
「お酒、味、意味不明。美味、ないする。臭いする」
≪まあ、身体にいいものじゃないしねえ。飲まないほうがいいかも。僕も酔う感覚が皆無だったし、飲まなくてもいいや≫
「エッ!? 身体に悪いとか初耳なんじゃけど!」
≪僕がいた世界の最新の研究だと、飲酒によるメリットがあっても、それ以上のデメリットがあるから飲まない方がいいってなってた≫
「あ、ポーちゃんの世界はそうなんじゃね。良かったあ」
えかったえかったって聞く耳を持たないワワンパァ。良えんかソレでェ。
「酒飲み、解毒魔法、見るした、ある」
やっぱこの世界でも毒なんじゃん。
次回≪MISSION:49 怠惰≫に、ヘッドオン!




