MISSION:37 恐怖の大王
扉を開けるとこの部屋は山岳みたいだね。AWACSを上空に飛ばして周りを見てもらったら、スタッグビートル・フォートレスの時と同じく巨大な部屋みたい。サルの群れが所々に点在してるって。
やはりっ! 中ボス部屋が昆虫ならボスも昆虫。今回は動物だったからボス部屋も動物だと思ってたんだー。
今さっきのモンスターハウスと同じく、ここも冒険者じゃ無理そうだなあ。平地がほとんどないよ。ロッククライミングしながらの攻略なんて、あり得ないだろう。
というかここから追加されてたのだろうか? だとしたらボス戦がスゴイ楽になったような気がするんだけど。まあ……普通ならさっきの部屋で全滅だろうし、ダンマスも想定外だったに違いない。
魔石ありがとう。ボス戦も楽にしてくれてありがとう。
「んん~? あれ、ボスする?」
≪どれ?≫
「一番高い、山頂、いるする」
「ホンマじゃ。こっから見えるんじゃね。ブチ大きい」
≪うっわぁ≫
特撮ヒーローものに出てくる怪獣サイズじゃん。
≪どうする? サクッと倒して宿に帰る? もうそろそろ晩ご飯の時間じゃないかなーって≫
「サクッとってどうやるんじゃ?」
≪全僕でミサイルになって突撃。粒子になって纏わり付くよ。高度取って上から一気にね≫
「うん。良い、かもある」
フーちゃんとワワンパァが目立つように近づくって。注意を引けば成功しやすいからってさ。
別に必要ない気もするけど、お言葉に甘えましょう。AWACSと合体してビルドアップ。攻撃力を増やすよ。
ある程度近付いたところで、ワワンパァが敵ボスの情報を教えてくれた。近づかないと見れないんだって。
「スケアリー・ジャイアントコングじゃ。こいつも高級魔物じゃねえ。弱点は個体ごとに違うけん、結局は強いほうが勝つ。咆哮には相手を恐慌状態にする効果があるけえね!」
サルとかゴブリンみたいに人型の魔物は、個体によって頭の良し悪しだったり、肉体派や頭脳派だったりで、厄介なんだってさ。
近付いたので当然コング氏もこっちを認識。ウワサの咆哮を上げる。
≪レジスト!≫
「効く、ない」
「大丈夫じゃっ!」
コング氏は人間サイズの岩を拾ってフーちゃんとワワンパァに投げつけてる。野球のボール感覚じゃん。しかも剛速球。
だけど特に問題なく避け続けるふたりは、徐々にコングへ近づいて行く。僕はその隙に高度と相手の背後を取り、スプリットSからの急降下で接近。
≪FOX4! あ、いや、待って。こっちのほうがカッコいいかも? 星屑自雷ッ!≫
勢いのままに頭部へ激突。かったいな、刺さらないよ!? 僕を掴もうとしたコング氏だけど、予定通り至近で拡散して頭部を覆う。どんなに大きくても体内から襲われたら終わりだぞ!
『大地の精霊さん、力貸してくんろ! コングの足とっ捕まえでー』
「ふぉっくす2じゃっ!」
逃げられないように、フーちゃんは精霊魔法を行使。ワワンパァはガトリングガンを乱射するものの、効果はなさそう。弾かれてる。
コング氏が咆哮を上げるけど、今回もレジスト成功。ふたりにも効かなかったみたいだね。
頭だけでもクマくらいはありそうなサイズだ。だけど全僕の分解によって頭部を失った。
≪終ー了ー。飛ばない敵はただの的だね≫
「恐慌状態にならんかったのも良かった」
「私、精神攻撃、効く、ないする~」
「ウチもドールじゃし効かんのんかも?」
≪僕はレイス時代があったからかなあ?≫
素材は毛皮だけでいいとのことなので、サクッと処理しちゃおう。魔石も傷つけないように取り出す。スケアリー・ジャイアントコングは巨大な魔物だったので30分くらい掛かったよ。
残ってるクレイジーモンキーの群れは、僕が分かれて処理した。ミョーンミョーンする個体の周りに、拡散粒子爆雷を撒いておけばすぐ終わるし。
≪本日の業務はこれで終わりでーす。お疲れッス、ナイッスゥ≫
「街、帰るなる、油断するない。ダメ」
「ほ、ほうよぉ~?」
≪ウッ、ごめん≫
でも僕は知ってる。ワワンパァも僕に乗っかろうとしたことを。口がナイスって言いそうな形だったし、キョドってるし!
≪では改めて。敵部隊の排除に成功。これより帰還する。なお、敵性存在の本隊及び分隊は、いまだ健在であるため注意されたし。RTB≫
「難解。分かるない」
「要するに、気ぃ付けて帰ろう言うちょる。アールティービーは分からん」
≪RTBは基地に帰ろうってことー。ふっふっふ、カッコイイ言い方なのだ≫
「分かるしたー! アールティービー!」
「ウチにゃあ、そのカッコよさが分からんわ……」
ザコモンスターは復活してんのかなあ? 倒したの朝だし、可能性はあるけどダンジョンマスターに知能があったら、わざわざ置かない気もする。DPが無駄になるしさ。
スルーはしないぜっ。魔石は僕もワワンパァも使うからね。
まあ結局は戦闘なんてなく、平和なまま外に出られた。ラーハルト伯とダズ爺に帰還の連絡を入れておく。一応AWACSは入り口で監視しとこーっと。
夕日が鉱山街を照らしてるよ。茜色に染まる街並みって、どうしてこんなに綺麗なんだろうか。生きてるってスバラシイー。
「お風呂、入るしたい」
そうだねえ。さすがに今回は報告前に、お風呂のほうがいいと思う。結構戦闘したし。時間的にご飯食べながら報告になるんじゃないかなあ。フーちゃんはこんなんだけど、王様くらい敬意を持たれてるしね。呼び出されてハハーすることはない。
可愛くて強いだけじゃないのだ!
「ポーちゃん、おっぱいなるする~」
敬意を、持たれてるんダヨ? ホントに。こんなんだけど。定番の御言葉を頂きつつ入浴するです。
服に付いた返り血は付与魔法で綺麗になってるし、顔とか手に付いたものはフーちゃんの精霊魔法で洗えてるので、見た目は汚れてないけどさ。
お風呂気持ちいいし大事。
≪辺境伯から連絡。落ち着いたら部屋に来てくれってさ≫
「分かるしたー」
「ここのダンジョンは、氾濫を目的にしちょるっぽかった」
「うー?」≪そうなの?≫
「魔物、多かったじゃろ?」
確かに。昆虫ステージはフーちゃんのデュオ魔法で一掃したけど、サルステージはサルだらけだったもんね。第1ステージの迷宮も広かったし、魔物を一気に放流しても、詰まることは無さそうだったってワワンパァの言。
その話を聞いて魔石の数を数えてみたら、今の時点で264個あった。昆虫ステージでは稼いでないから、400くらいはザコモンスターがいたんじゃないかなあ。
って伝えたらザコじゃないって言われたよ。
「ウチらは苦労してないけど、クレイジーモンキーは結構強いんよ?」
見てはないけど昆虫ステージのボス以外のモンスターも、同等のがいたんじゃないかって。
「うん。冒険者、シングルスター、推奨」
「じゃね。ここのボスに至っては1匹でもダブルの案件じゃのに」
≪その区分は僕には分からないなあ≫
シングルは街に10組もいれば、いいほうなんだって。ダブルは1組でトリプルはほとんどいないみたい。シングルからD、C、B、A、Sランクって感じかなあ。五つ星のクイントまではランク付けされてるってさ。当然このクラスはコロコロスーのパーティらしい。
「戦闘力の面じゃあウチでダブル、フーちゃんとポーちゃんはクアッドクラスじゃろうねえ」
数百の魔物の氾濫じゃあ、大したことなさそうな気分だったけど、かなり強い大群みたいだ。しかもこの街の人たちは、まだダンジョンに入れていないので、その情報を持ってない。
最悪、この街は蹂躙されてても──おかしくなかったようだ。
次回≪MISSION:38 ドラゴン≫に、ヘッドオン!
お宝
リング・オブ・アンチポイズン
スタッグビートル・フォートレスの魔石 外皮
アンチポイズンジェム
スケアリー・ジャイアントコングの魔石 毛皮
※
スプリットS:クリンと背面飛行に移りながら高度を下げ、反対方向に進路を変えるマニューバ。クリンと背面飛行に移りながら高度を下げるとこがチョーカッチョイイやつ。カッチョイイ。
FOX4:操作ミスって地面とか壁にぶつかってしまった時に使うカッチョワルイやつ。某スコンバットでよくやらかす。
RTB:リターン・トゥ・ベースの略。お家帰るをカッチョイク言うヤツ。
星屑自雷:マイン=自雷は「地雷」と「私の」っていうのをかけた造語。




