MISSION:33 楔
ワワンパァによる風評被害はさておいて。もう夕方近いし、ダンジョンに向かうのは後日だとしても、明日は町長との話し合いに僕らも出席する必要があるんだろうか?
「お、お待ちください! 閣下に──」
「構わん! 邪魔するぞい!」
これからどうするのかなとか思ってたら、どっしりと恰幅のいい髭モジャのお爺さんが入って来た。貴族の部屋にいきなり入って来るんだから、この人が町長かな? いや、それでもオカシナ話だけどさ。だって止められてたのに、全く気にする様子もなく入って来てるし。予定では明日だったんだけど、家令から話を聞いて来ちゃったみたいだね。
「ほう! お主がポーの本体か!」
しかもラーハルト辺境伯を無視して僕んとこに来た。
はくしゃくを、むし。
≪いや、一応全部が本体ですけど……≫
「あのふぃぎゃあっちゅうんは良えもんじゃのお! おう、ほうじゃったほうじゃった! まず最初に、せんにゃあいけんのは──」
クルリと踵を返して、勢いのままに伯爵とダンジョンのことを相談し始めた。さっさとダンジョンのことを解決して、早く研究に没頭したいとか騒いでるよ。
自由か!
≪ドワーフってこんな感じなの?≫
「いやあ、あんまりおらんタイプじゃあ思うよ、ウチぁ」
「プププ、賑やか、お爺ちゃん、来るした。ルト、困るしてる」
確かにハルト坊って言われちゃあ困ると思う。早々にダンジョンは潰すという決定を下した。入口がデッカイんで、大型の魔物が出てくる可能性もあるって。
視察に関しては勝手にせいとか言い放ってる。
「翁よ、そういうわけにはいかん。分かっておるだろう?」
「ウヌゥゥ……致し方ないのぉ。明日はワシも同行するわい! もうええな? ポーよ! ふぃぎゃあのことを詳しゅう話せ!」
≪最初に訂正しますけど、フィギュアですよ≫
僕と町長がフィギュアのことで盛り上がり始めたので、フーちゃんとワワンパァは他のみんなと食事にするようだ。
町長はというと、フィギュアとはどういった目的の物なのか、ということを聞いてきた。
「コレクション目的かのお?」
≪それもありますね。あとは人形遊びと同じようなことをしますよ。子供たちはもう勝手にそういう遊びをしていますし≫
それからジオラマのことも話した。風景を立体化することで、フィギュアをより一層臨場感あふれるものにするから、これは大人にも受けるんじゃないだろうか。
≪例えば冒険者が、ドラゴンと戦ってるシーンを再現したりとか≫
「ほおっ! そうなると色々とセット販売の形になりそうじゃ。ウム、ええ話が聞けたわい!」
ニヤリと笑いながら商売を考えてるね。まあ王都の僕がもう動いてるかもしれないので、それを伝える。
「そういやあ、お主は向こうにもおるんじゃったな。ドゥのヤツが製作開始しちょってもおかしゅうないのぉ。おう! ほうじゃった! ワシぁダズじゃ。翁でも爺でも好きに呼べ! スー家の! それとワワンパァ! ワシがお主ら1強の流行りに、楔を打ち込んじゃるけえのお!」
そうまくし立てて「じゃあの!」って帰って行った。マジ自由かよー。ドゥって誰だよ。まあ……フィギュア制作初期メンバーのドワーフなんだろうけどさ。
「願ったり叶ったりじゃね、フーちゃん」
「うん、別の、流行る、良いこと!」
≪なんかゴメンね、でもふたりが可愛いからどうしようもないんだよね。恥ずかしくても諦めて。そのうち慣れるよ、きっと! 僕も欲しいしぃ~≫
もーとか言われながらふたりにベチベチ叩かれた。照れちゃって可愛いんだー。そういえばドワーフって髭モジャだけどさ、男も女も髭モジャになるんだろうか? 作品によっては女の人もモジャだけど、ワワンパァはノーモジャだし。
「男だけじゃね。女は髪の毛がもの凄い増えるんよぉ」
あと、なんとなしにカナシイ話を聞いた。男のドワーフは、プリティ→髭樽といった流れで生きている。そして女のドワーフは、プリティ→キュート→樽といった流れで生きているそうだ。
酒好きなので抗えない流れナンダッテ……。
「パァちゃん、樽、なるする……? ダメ! 酒禁止!」
「いやいや、樽になるわけじゃないんよ! 酒樽みたいな身体つきになるだけじゃ」
「禁止撤回」
「良えことじゃ」
≪いやいやいやいや! ワワンパァがそんな身体つきになるの、やめて欲しいんだけど!?≫
「ウチぁ、ならんね」
自信満々だけど……どうなのか。あ、ダンマスだからこのままの可能性が?
「た、たぶんならん、よ?」
「〇、カワイイあるするー」
あやふやなんだけども? フーちゃん的には、まぁるくなるので太ってもいいらしい。ただ性別が〇になるのはイヤみたいで、なんか覚悟したみたいな顔つきしてるワワンパァであった。
ダメだこりゃっ。
翌朝。
食堂で朝ご飯を食べてる時に町長がやって来た。ジャマスルゾイマンの襲来だ。
「邪魔するぞい!」
「翁よ、早い! 早く出たからと言って早く済む問題ではないのだ」
「いや、お主らと飯を食おうと思って来ただけじゃわい」
視察する場所や順番を書類にまとめてきたみたいで、それを確認しながらご飯にするつもりだったみたい。フィギュアのことをすぐ商売にしようとしたり、視察のことをすぐ書類にまとめたり、できる男なんですなあ。全力全開趣味男にみえるんだけどさ。
「ワシぁそんな風に見えちょるんかのお」
「すまん翁。だが……だいたいはそういう行動を取っておるのだ」
「お? おお、ほういやあ、ほうじゃったのお!」
でっかい声でガハガハ笑ってるよ。朝から元気だねえダズ爺は。僕らにはダンジョン入り口が示されてる地図を渡してきた。
「ワシらじゃあ入り口へ到達するのに、時間が掛かるけえのお」
「任せる、する! ポーちゃん、パァちゃん、行くするー」
「姉上、食事の用意は良いのか?」
「少し、待つする」
「迷宮タイプじゃったら調理せんといけんしねえ。ウチ、虫でご飯作るのも食べるのもちょっと嫌じゃし。フーちゃん食べれるん?」
「しっかり待つ、する」
フーちゃんも虫はイヤらしい。むむぅ? ということは魔物は人でも食べられるってことか。
弁当はフーちゃんのだけでいいから、すぐ準備できた。
連絡用に一塊の僕を残して、全軍で出撃。AWACSもエアタンカーも必要なのだあ。索敵は言うまでもなく、冷蔵庫もフーちゃんのご飯とワワンパァの武器が入ってるからね。
≪それじゃあ僕たちは、ダンジョンに行ってきます≫
「頼むぞい!」
「まあ、姉上に任せておけば程なく解決するであろう」
「ポーちゃん、オカシイ、あるする」「ポーちゃんも割と無茶苦茶しよります」
「ガハハハ、頼もしいのお!」
なんか僕に飛び火したけど出発しますか!
パレードの必要もないし、ホテル入り口前から垂直上昇。ダンジョンに向かう。
≪サクッと終わればいいね≫
「えー、歯ごたえ、いるするー!」
「フーちゃんは戦闘狂じゃねえ」
≪あ、見つけた。あそこが入り口だね≫
確かに大きな入口だねえ。鉱山に向かう道からも見えると思う。しかも切り立った崖の所にあるから、確かに歩きじゃ難しそうだね。飛行ユニット必須って感じだ。発見から少し経ってるからか、一応崖に足場は組まれ始めてる。
作業中の人たちに声をかけて、僕らはダンジョンを攻略するために中に入った。
「迷宮タイプじゃ。トラップに注意せんといけんね」
≪飛んでても発動する?≫
「注意せんで良かったかも」
足を付ける場合もあるだろうし、気を付けたほうが良さそうではあるね。とりあえず僕が先行するかなあ? 一本道ってことはないだろうし。
≪僕が先行してマップ作るよ。罠なんかも発動させておけば、しばらくは平気になるでしょ≫
「ポーちゃん、頭、良いあるする」
「じゃあウチらはどうしょうかねえ。崖下の河原で待っちょく?」
待っちょってくださいなー。
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次回≪MISSION:34 饗宴≫に、ヘッドオン!




