MISSION:31 新型
帰還しつつ僕経由で報告を提出しておいたので、王様との会話は渡されてた書簡を見ながらの確認くらいだった。早々に解放された僕たちは、エリヴィラ様に捕獲される。当然と言えば当然ダナー。
だってフーちゃんの服ができてるんだもの。早く着せたいに決まってる。全員ウキウキしながら、僕たちに宛がわれた部屋に向かった。
部屋の前で誰か待ってる?
「お帰りなさいませ、皆様」
「クマ、スゴイあるする」
「いえいえ、これはスー様に着て頂きたい一心で、つい……」
「ウチもやらかすけん、よう分かる……」
≪結局みんなが望んだってことだねえ≫
「ドキドキ、するある」
服屋さんだ。超頑張って作ってくれたみたいなのに、僕らは観光で他所の街に行ってるという……スマンかった。完成したのが5日前で、僕が帰還の連絡を入れてからすぐ呼んだみたい。
「それではみなさん、さっそくお披露目致しましょう!」
エリヴィラ様が元気よく宣言した。広げられていく軍服。色は結局上下共に濃い紺色にしたんだね。ネイビーブルー。フーちゃんはお空の戦力だけどネイビー。上着もスカートも金ボタンが付けられてる。
襟の部分、袖、ベルトは黒で、縁が金色だ。ベルトにはロッドを装着するであろう機構があった。
帽子はクラッシュキャップってヤツ。将校が被ってる感じのグッドなヤツ。コレも上着やスカートと同じく紺色だね。つばとベルト(?)の所が黒になってて締まった見た目になってる。このベルトの正面部分に、月桂冠に囲まれたルビーみたいなのが取り付けてあるよ。ご飯の香りがするので魔石のようですな。
そしてロングコート? これが不思議というか、左半分しかない物になってた。コートじゃなくてマントかな。膝くらいまでは覆う長さ。内側にはポケットがいくつか付いている。
あとは黒のニーソとブーツで、パーフェクトフーちゃんの完成だ。
≪フーちゃん! ロッドの頭に両手を添えて地面についてみて! そして斜に構えるのですっ!!≫
「え、こ、こうする?」
「おぉ~良えねえ」
≪アッ! 帽子も斜めにしよう。うおぉおぉぉお良きィィイイ!! ワワンパァもアックス持ってフーちゃんの横で片膝ついて! 早くっ早くっ≫
「ポーちゃん興奮しすぎじゃろぉ」
でもやってくれた。
この世の真理を僕たちは見たんだ!
≪僕はもう死んでもいい。いや、若干死んでるけども。良いものを見た。幸せ≫
「こ、これは肖像画にして残しておきたいと思いませんか!? エリヴィラ様ッ」
「その案、採用ですわ!」
「是非とも私共の店舗にも、飾らせて頂きたいのですが!」
アレッ? 興奮してて今気付いたけど……。
≪フーちゃんの耳が人の耳に見える?≫
「必要でしょうから偽装を帽子に付与しておきましたのよ」
「うん、フードない、する。必要、ある」
ネイビーブルーの軍服に、アッシュゴールドの髪の毛が良く映えてるのが分かるねえ。
うむ。良き良きだ。
主人公機が新型に変わる、ドキドキとワクワクの感じだヨォ。
さっそくダンジョンに行って、フーちゃんの軍服を登録&強化を施すことにした僕たち。回避UP+防御UPは付けてくれてたので、浄化の魔法を追加する。すなわちコレは、また1着だけで行動するフーちゃんの出来上がりであった……。予備をエアタンカーにストックしておくよ。
ロッドに関しては特になにも必要ないってさ。エリヴィラ様も分かってたのか、デザインだけで特になにも施されてない物をくれたみたいだね。ワワンパァは一応、防御の魔法を付与したみたい。フーちゃんは剣が使えたので殴る用に、ってことで。
後日、ホントに肖像画化するため、王家お抱えの画家さんがやって来た。完成までは1ヶ月くらい掛かるらしい。とはいっても、ずっとモデルする必要はないとのこと。ポーズと色見本を初日に作って、あとは作業場で仕上げるみたい。
僕はというとふたりのフィギュアが欲しくなったので、1/8スケールくらいのフーちゃんとワワンパァになって石膏の中にINした。普通の立ち姿や武器を構えてる姿、クニャンクニャンしてるフーちゃんとか、頭を抱えてるワワンパァなんかの型取りもしたんだー。
もちろん手のひらサイズでSDのも作ったよ! いろんなの並べたいからね。
僕、いつの間にかビルドマインの練度も上がってたんだなあ。そしてさっそくフィギュアを作ったんだけど、着色のセンスが絶望的になくてメソメソしてるとこ……。
たしゅけてェー、エリヴィラ様あっ!
「当然ですわ!! 兄上は芸事が好きなので協力を仰ぎましょう」
口コミが口コミを呼んで、王都でフィギュアの文化ができてしまった。彫刻家も参戦し始めちゃった。細かいの大好きなドワーフの中にもハマる人が出てきて、石膏での型取りから、金型へ移行。さらに可動式フィギュアの誕生と、現代と比べても遜色のない物がッ。
フーちゃんとワワンパァ以外にも、高ランクの冒険者やドラゴンとか魔狼みたいなカッコイイ魔物なんかのフィギュアも出てきだす始末。
しかしスライムはない……。子供たちが遊んでるの見たけど、クッキーで代用されてた。スライムが負けたら食べていいんだって。
中でも特にねんどろ……じゃなかったSDフィギュアは、飲食店とか子供に大人気で、なかなか手に入らなくなったらしい。
<王都の産業に発展しそうな勢いですぅ>
≪って感じになっちゃったみたい。なにやってんだ走る椅子部隊……ウラヤマネタマシイ≫
「ウチの人形? 嘘じゃろおっ!?」
「は、恥、ある……する」
僕は誘拐被害者の護送中にそんな連絡を受けた。ふたりともカワイイので僕も欲しい。あとで届けてもらおう。空での移動ならそんなに時間かからないだろうからさ。
でもまさか僕らが王都から出て、たった1ヶ月でそんなことになってるとは。
人数いるし、子供もいるから船での護送中なんだ。だからどうしても時間がかかるし、邪人が誘拐や拉致してたので各港町で殺処分してるし、まだ任務完了してないんだよね。
今はエリヴィラ様の兄が治めてる港町から、海岸沿いに南下しつつ最後の目的地に着いたとこ。王様からの書簡を僕が事前に届けてるし、先触れとして30分くらい前に僕が連絡を入れたので、滞りなく事は進むよ。騎士が港で待っていたので、あとのことはお任せする。
「本当にお世話になりました。ありがとうございました」
「ダイジョブ、大事、ことあるー」
「ウチらは邪人狩りじゃね」
「そのことですが、すでに討伐は完了しております。実は別口で依頼したいことがございまして、領主館へお越し頂きたく。詳しくは閣下よりお聞きください」
僕たちは馬車で領主のもとに向かうことになった。このリドゥリーの街は、エリオラッド男爵が治めてるミルセラと違って、青と白な感じで統一されてるね。唐突な街の名前の出所は、王様から地図を見せてもらったゆえの結果。ちゃっかりデータベースに写し取っちゃったのだぜー。
ちなみにエリオ氏はエリヴィラ様の兄上でございます。椅子部隊が何度かやり取りしてたみたいで名前を知った。エリオ氏、という呼び方でなんとなく察せる部分があると思う。彼は同士だった。オタク男爵。
≪港町って、なんかどこも綺麗だねえ≫
「でも、お魚飽きる、するした……」
「どこの町長も歓迎してくれたけんね」
まあそれは仕方ない。自慢の一品や希少な一品を出してくれたんだけど、港町巡りしてるからなあ。バリエーションが違ってても、肉好きフーちゃんからしてみたら物足りなくなってきたんだろう。最初は感動した港に並ぶ帆船も、さすがに見慣れちゃったしさ。
「御歓談中失礼いたします。館に到着しました」
「分かるした」
≪なんだろうねえ≫
「すぐ済む用事じゃったら良えけど」
もうダンジョン開店が可能な状態らしいし、一度戻っておきたいところだもんね。




