MISSION:22 魔法の装備
話し合いはつつがなく終わった。
ダンジョンのオープン時期については、2ヶ月ほどで可能とのこと。だけど街道や拠点の作成にはもっと時間がかかるので、ワワンパァは焦る必要がない。
でも樹海ステージについては一言アドバイスしておいた。木が密集しすぎててゴブリンたちも動きが悪かったよと。冒険者たちはもっと苦労するだろうし。
そして国軍専用ステージの作成。これは王都近郊を模して作ることで、軍事行動の精度を高めるのが目的だ。王城内にある練兵場までダンジョンの通路を伸ばし、秘密の訓練を可能にする。でもダンジョンだからって、死んだらやり直しができるなんてことはないので注意が必要デス。デスするんデスヨー。
樹海ステージと迷宮ステージはすでにあるから、調整のみでOK。DPが貯まれば迷宮も階層を追加していくつもりみたい。
海ステージは海産物目的で、山岳ステージは石材目的で追加したいそうな。こちらもDP次第。でも国軍がダンジョンに入り浸ればガッポガッポな予感。
問題はやっぱり街道や拠点だよね。これについては僕たちも手伝うことになった。ダンジョンまでは40~50kmくらいはあるような気がする。主な交通機関である馬車で1日かかる距離なんだって。なので僕が先行して資材を運んでおく。材料さえあれば、ワワンパァがお安く作業員用の拠点作りができるそうなので。
村レベルに仕上げるのはマンパワーだね。
フーちゃんはダンジョンから王都まで、とりあえずの道を作る。星の精霊王がムワーンって木を退ける作業。そこから先もマンパワーです。木は資材になるので、道に沿って伐採していくそうだ。
そんな感じ。
僕たちはフーちゃんに宛がわれた部屋に戻った。すると傷心幼女が呟く。
「生きた心地がせんかったわ、ウチィ……」
≪お疲れ≫
「緊張、する、ある~? ンー、私、分かるない」
フーちゃんは凄く不思議そうだ。そりゃあアナタは王様と幼馴染だからだよ。
≪この国の頂点の人物だよ? 普通は会うことなんてないし、見ることもないんじゃない?≫
「ほうよねえ」
ワワンパァは今すぐにでも、拠点を街に移したいみたい。ここ、王城だしね。
街道作りなんかには魔物排除も必要だし、冒険者にも依頼を出すことになったから、僕らもギルドに登録してお金稼げば宿暮らしできるじゃんって。
ダンジョンまでは結構距離があるし、しばらく食いっぱぐれることもないって。
「パァちゃん、慣れる、する。ここ、ご飯、美味。良いこと」
でもそんな案は、即却下されちゃうのだった。フーちゃんは魔物の解体が嫌いだし。魔石だけ集めるなら僕が処理しちゃえばいいんだけど、魔石は僕が欲しいしねえ。僕も冒険者になるメリットはロマンを感じるくらいしかない。
って、ワワンパァに伝えると、微妙な表情を浮かべながらこう言われた。
「ウチ、ダンジョンマスターになったけど、結構普通じゃったんじゃね」
≪いやいや、表情まで作れる人形にもう一人の自分を入れて動けるなんて、もの凄い非常識だよ≫
「納得できんわ! ふたりともオカシイんよぉ」
「パァちゃん、不思議、生物。んふふっ」
頭を抱えるワワンパァを脱がしながら、楽しそうにしているフーちゃん。
「なにしちょるん?」
「お風呂、入る、するー」
そう言いながら服を脱ぎ散らかして、フーちゃんは僕を抱える。確かに。帰って来たばっかで、チョット汚れてるもんね。今更ながら王様に会う前に、身綺麗にしておくべきだったのではなかろうか。大事な報告とはいえ。
そんな時に乱入者がやって来た。ババァ~ン。
「お邪魔しますわ!」
エリヴィラ様である。いや、違うか。興奮したエリヴィラ様だね。
ロックオンしたワワンパァを狙ってのことだろう。
「あら、これから入浴ですの? でしたら私もご一緒させてくださいね」
「こ、こんにちは……? え? ウチ、ドールじゃしお風呂は……別に……?」
「入浴することになにか不都合がありまして?」
「えっと、ない、です」
「入る、するー」
じゃあ問題ないと、混乱しているワワンパァの手を引き、浴室へと向かうエリヴィラ様。
みんなで仲良く、不思議な身体のワワンパァを洗っている。
「顔のみ、柔らか、ある。不思議ー」
「髪の毛もしっとりサラサラですわ」
「エリヴィラ様、ワワンパァ様のお肌もスベスベでございます!」
「ウチぁどうすりゃあええんね!?」
≪諦めて。僕も通った道だよ。慣れるよ、その内。( ´∀`)bグッ!≫
僕は湯船で揺蕩ってる。みんな新しものに夢中なので。
≪そういえば球体関節のとこ、なにかで覆ったほうが汚れが入らなくていいんじゃない? ロマン成分は減っちゃうんだけどさ≫
「ああ、そりゃあ大丈夫。むき出しに見えてもコーティングしちょるけんね」
≪完璧じゃん!≫
「へへー、抜かりなしなんよ」
無の境地に至ったのか、泡でモコモコのワワンパァは僕と普通に会話し始めた。
「もったいないですわ。これほどのスベスベお肌でしたら、身体も人に近づけるべきなのでは」
「そうは言うても、戦闘するのに必要ないですけぇ」
顔はリアルで身体は人形だもんね。疑問に思っても仕方ないのかな。ちなみに胸部パーツにダミーコア、球体の腹部パーツの中に浮遊石が入ってる。そこは大事な部分なので、世界樹の欠片が使われてる超高級部位とみた。たぶん。
エリヴィラ様とメイドさんは、このカワイイ存在がバトルするってことに、心配そうな表情を浮かべている。木でできてるし。でも強度は結構あるので大丈夫。と、ワワンパァは自信満々だ。ダンマスの能力で、魔物の弱点とか看破できるしって。
≪便利な能力だなあ≫
「ちなみにポーちゃんは火が弱点なんよ」
≪僕は弱点だらけだよ≫
「私、増やす、する! 問題、ないある、するー!」
≪ありがとー≫
まあ弱点なんて関係ない勢いで増量するから、問題になったことは今のとこない。ワワンパァも火が弱点っぽい見た目なので、エリヴィラ様が心配してたけど、製作段階で対処済みらしい。
「でしたら残る問題は衣服ですわね! 特にパァちゃんの服は詳しく聞きたいのですわ!!」
フーちゃんに対しても、前々から物申したかったそうだ。だってフーちゃんの服、だるーんとしたローブだけだしね。予備はあるのか、ちゃんと洗濯してるか、もっと可愛いのも作れと、思いの丈をぶちまけている。
テンションが上がりすぎて暑くなったのか、衣装の話は庭園で涼みながらすることになった。
「服、問題、ない、あるする。魔法、防具。これ、1個、足りる、してる」
≪……そういえば洗濯してるとこも見たこと……ない≫
「そりゃあキチャナイじゃろう!? ウチはちゃんと2着用意しとるよ?」
「キレイ、なる、自動。フフーン」
って自慢気なフーちゃん。詳しく聞くと、回避UP+防御UP+クリーニングって魔法の強化が付いてるんだって。パンツは防御UP+クリーニングらしい。
……エルフっ。
ローブとパンツしか持ち物がないのは、魔法の装備だったからなのかあ。防御アップは、ワンチャン長持ちさせるためのものかもしんない。
みんな絶句している。
「で、ですがフィア姉様、可愛いのもお好きでしょう?」
「うっ、うん。パァちゃん、チョット、羨ましい、ある」
「つまりポー様の出番ということですね、エリヴィラ様!」
≪そ、そんな急に言われても……待って……えーっとぉ……≫
うーん、和装で合わせる? でもフーちゃんに着物は合わないような気もするし……袴か! あ、いいかもしんない。フーちゃんの髪の毛はアッシュゴールドっていうの? なんか淡い感じの金髪だし、着物部分は桜色とかがいいのかな。袴は濃紺にすると引き締まるだろうか。そしてポニテにしてもらおう。
フーちゃんの三面図、前横後ろの絵を表示する。僕が黄色なので色は文字で伝えるしかない。
≪どうかな? 袴っていうんだ≫
「カワイイ、ある!」「良えねえ!」
「こちらも見たことのないデザインですわね」
≪うーん、僕と同じ故郷の人がいた形跡があるのに、見たことないですか≫
和服ありそうなんだけどなあ?
次回≪MISSION:23 少佐≫に、ヘッドオン!




