MISSION:21 心の平穏
少し休憩を取ったあと、作業再開したワワンパァが声を上げる。
「できたぁー! あとは色を染めてダミーコアのセットじゃね」
素体がほぼ完成。
「飛行ユニットは明日にするわ。今日は染料に漬けて終わり」
≪予定通りにイケそうだね≫
「うん」
「パァちゃん、武器、なに、使うする?」
「アックスをって考えちょったんじゃけどねえ」
ドワーヴンウォーアックスってヤツか。でも飛行ユニットだからねえ。ワワンパァもそれを思って武装を悩み始めた。
軽い武器ってことを考えると暗器が思いつくけど、攻撃力という面では力不足だよね。
≪マジッグバックというか、アイテム袋というか、物がいっぱい入るアイテムはないの?≫
「聞く、ない」
「ウチも聞いたことないわ」
≪ダンジョンは異空間にあるんでしょ? ありそうだけどなあ≫
「袋ん中をダンジョン化するんかあ?」
できたとしても小さい物になりそうとのこと。手が届く広さじゃないと中身が出せないんじゃないかって。異空間だし袋を傾けたところで中身も傾くわけじゃないんだって。
「非効率じゃね。ダミーでもコア使うんはもったいない」
「ポーちゃん、運ぶ、する?」
≪そうだね。それが現実的かも。でも連絡もらってから渡すんだし、どうしてもワンテンポ遅れるよ?≫
「ほんなら小ちゃい武器でも持っちょくかあ」
ピンポン玉サイズの鉄球が何個か出現した。そういえばそういう玉とか苦無みたいなのに、紐が付いてる武器が中国拳法にあったな。確かー……流星錘。
というのを伝えると、ワワンパァは流星錘に決めたようで、さっそく紐の両サイドに鉄球を取り付けてた。
「投げ捨てるのもったいないけん」
≪でもその武器は使うの難しいよ、きっと≫
「? 紐、引く、戻る。簡単」
「スリングみたいに振って投げても良えし、単純に投げても良え」
簡単じゃん? っていうふたり。確かに! 完全に拳法的な使い方で頭の中が支配されてた。身体の周りでピュンピュンビュッ、ピュンピュッて回して飛ばすみたいな使い方。
「ポーちゃんが持ってくれるんなら、殴打と斬撃の武器2種類にしちょくわ」
そういいながら両刃のウォーアックス2本と、トゲトゲ鉄球付きのメイス、いわゆるモーニングスターを2本用意した。
「強い、そう!」
「実はダンジョンのお宝用なんよ。エンチャントウェポン。えへへ」
ワワンパァもウッキウキである。よきよき。ということで今日はもうお休みの時間。お風呂に入って就寝だ。
≪いや、だから、僕は、男なんだよ!? 〇《まる》じゃないんだってば!≫
「スライムに雌雄なんかないじゃろう?」
「ポーちゃん、〇。カワイイ、〇」
≪だーかーらぁー──≫
聞きゃあしないよ、この世界の女子は!!
◆
2日後。
ダミーコアにウジャウジャある紐を取り付けたワワンパァが、それとは別にもう1つ小っちゃい魔石をドールにセットしている。
≪そっちの魔石は?≫
「珍しい、ある。初めて、見る、する」
「こりゃあねえ、浮遊石。魔力込めたら浮くんよ。ほんじゃ、いよいよ……ふぅ、初めてじゃけん緊張する」
そう言ってリビングドールにワワンパァの分身を設定している。設定ってのが合ってるか分かんないけど、タブレットでなんかやってるから「設定」って感じなんだよね。
「「おぉ、不思議な感じじゃねえ。どっちもウチじゃ。ウチがウチを見ちょる」」
「声、二重、不思議、面白いある!」
≪ドールの声はさすがに籠った感じ≫
「「コアから声が出ようるけんね」」
服を着て、ランドセルみたいなバックパックを装着するワワンパァ。完全体になった。黒ベースのゴスロリ浴衣にしたんだね。スカートは明るめの赤で、振袖にあるワンポイントの花も同じ色だ。髪型はツインテールにしてもらった。好きなので。
可愛すぎて残機減ってるよ。でも仕方ないね。くっそカワイイのだから。
フーちゃんもそう思ったのか、キャッキャしながらギューっと抱き着いてる。木でできてるから硬いみたいだけど。
「「さっそくじゃけど王都に行こうや!」」
「おっけぇ!」≪ラジャ!≫
新しい仲間との冒険が始まる。
「あきゃああああああぁぁぁぁぁ────」
始まらなかった。
ワワンパァはメリベキベキメリバキャァとか音を立てながら、樹海に突っ込んでいく。どう見ても訓練が必要です。
「パァちゃん、飛ぶ、できる、ない」
≪そうだね……≫
飛行訓練には2日を要した。
ランドセルが飛行ユニットだったみたいで、それの改良も同時に行う。翼と垂直尾翼を展開できるようにして、安定性を高めることに。
「ジェットパック展開」
僕命名の少し大きくなったランドセルから、音声認識によって翼が現れる。ダミーコアからエネルギーが供給され、飛翔に十分なパワーを放出。大地を蹴り空へ向かい飛び立つワワンパァ。
「見て見て! ウチ、飛んじょる!」
「うわあ、良えのお。ウチも飛びたいけん、もう1個作ろう!」
上のワワンパァが喜び、下のワワンパァは羨ましがってるファンタジーな空間。さすがダンジョンだ。
「コッチ、パァちゃん、本体。気、付けるする」
≪だね。ホント気を付けてよ?≫
「「分かっちょるよー」」
≪じゃ、行こっか≫
「うん、パァちゃん、また、ある」
「ウチ同士リンクしちょるけど、たまには来んさいね」
「もちろん、する!」
僕は半分残るけど、フーちゃんはココに来ないとワワンパァ本体に会えないしね。また来るって約束してる。
アイスボックス改め、エアタンカーにワワンパァの装備とお土産の果物を積み込んで、輸送する。みんなで乗り込んだっていいんだけど、まずは空の旅を自分で楽しみたい彼女に合わせて、寂しいような、楽しみなような、不思議な気分で僕たちは王都に帰る。
<POY-エアタンカー、これより離陸する>
<こちらAWACSヘヴンアイズ。上空に敵影なし。良い空の旅を>
≪了解。といっても5分くらいだけどね。入口の大樹のとこまでは≫
「ポーちゃんはなにを言うちょるんね?」
「あれ、雰囲気、のみ、言葉する」
「稀人の感覚なんかぁ」
まあいいじゃんかと、着陸して湿気た階段をあがろうとしたら、いつの間にかキレイに整備されていた。
「まだ入られたら困るけぇ整備しといたんよ」
≪そういえばボロクソになった森も治ってた!≫
「おー、ダンジョン、スゴイ。パァちゃん、スゴイ!」
「ふたりのお陰でパワーが貯まったけぇ」
壊した分は僕らで補填できたみたい。セフセフ?
階段を上がった先も、ただの洞窟じゃなくダンジョンっぽい石畳の通路になっていた。装飾があるわけじゃないから物足りないけど、とりあえずの出入り口ってことだろうね。僕ら用の。
なので全員が外に出たら、岩で入り口が隠された。なお、星の精霊の力でぽっかり空いてた穴も、いつの間にか整地されていたみたい。元の森と変わりないように見える。
≪ダンジョン外も操作できるの?≫
「入り口周辺だけじゃけどね」
「へぇ、初、知る、した」
そして平和な空を王都に向けて飛んでいく。AWACSには地図作成を頼んでおいた。事前に連絡を入れておいた際に、いずれはダンジョンの側に町を作りたいとのことだったので。
街道を作って、整備して、徐々に発展していくことでしょう。村→町→街→都市になったりしてー。そしてなんとなくだけど、輸送機部隊を作る羽目になるような予感はしてる。
「な、なあ、なんでいきなり王様が目の前におるん?」
さっきからチョイチョイチョイチョイと、僕をつつくワワンパァからボショボショと質問された。なぜかって?
そりゃあフーちゃんがいるからだよ。
最初は僕らの部屋に呼び付けたんだけど、宰相とか大臣も話を聞きたかったみたいで、近衛や貴族たちも並んでる謁見の間へ。
≪フーちゃんさ、王様の幼馴染なんだ。姉上って呼ばれてるよ、王様から……≫
「ひぐぅっ」
生身だったら引き付け起こしてたかもね。でもキミはドールだから。引き付け起こさないし、気絶もできない。ワワンパァに逃げる術はないよ。耐えて、慣れて。
『──でな? でな? 見てくんろ! パァちゃんがどんだけメンコイか分かるべさ!!』
コッチを指さしながら、ポーちゃんがデザインした服もスッゴイカワイイ! ってフーちゃんが言うもんだから、僕のほうにも飛び火しそうだなあ。そしてワワンパァはお偉方の視線を一身に受け、針の筵であります。
「まあ待て、姉上。落ち着け、話ができぬ。ワワンパァといったな? お主も早々に振り回され始めたか……不憫なことよ」
みんなを落ち着かせるように、王様はゆっくりとワワンパァに質問し始める。このダンジョンマスターの可愛さは見たら分かるし、可愛さについて相談する必要もないもんね。フーちゃんが説明してることは……そのぉ……今いらないんだあ。
ちなみに、玉座の後ろにある王様が出入りする所に掛かってるカーテン。そこには獲物を狙うかのような眼差しを、ワワンパァに向けるエリヴィラ様がいた。
あとで王妃様にも捕まりそうだよね。
次回≪MISSION:22 魔法の装備≫に、ヘッドオン!
POY-エアタンカー:PO→ポーの、Y→輸送機




