MISSION:19 ダンジョン暮らしのワワンパァ
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時はほんの少し遡る。
「なんなんね!? パワーが溜まる思うちょったら無茶苦茶ぁしょーるが! このスライムの群れ!!」
なにかを探すように分散し、出会う魔物を悉く殲滅していくスライムを見て、悲鳴が響く薄暗い部屋。
陰気、という訳ではなくログハウス作りの、別荘コテージにあるようなようなシックな部屋に、モニターからの明かりで照らされながら、酷く慌てている人物がいた。
彼女は魔物に関する特殊能力を持つがゆえに、現代兵器の姿をしているポーの正体を看破している。
「せっかく神様から貰ぅた人生じゃぁ言うのに……ウチのダンジョン、大きゅうなる前に野良魔物に荒らされちょるがぁ」
個体名ワワンパァ。このダンジョンのマスターである。彼女は不幸にも、破壊の権化であるフィアフィアスーを見逃していた。スー家の娘はダミーダンジョンを、なんの苦もなく壊滅せしめたというのに。
ゆえに、このマスタールームへと続く神殿入り口を守るため、ポーのみを撃退するべくダンジョンの力を行使する。索敵をしていれば、未来が変わった可能性もあったのだ。
強者である森の民、エルフのフィアフィア、そして人造カテゴリーオーバーのポヨポヨ。この二体のエナジーは今までにないほどの勢いで、DPを稼ぎだしていたのだから。
「ロック鳥じゃあダメなんか。ほんならワイバーンじゃろうね」
ポーの足止めをするために、現存する戦力を峡谷に集結させる。飛行系の魔物はコストが掛かるが、高速で飛来するこのスライムを撃退するためには、致し方のないことだった。ダンジョンコアに指示を送るため、タブレットを操作しワイバーンを召喚していく。
今のワワンパァにとって、最強の魔物である。
「足りんのんか……」
しかし徐々に数を減らすワイバーン。焦る心を誤魔化すように「大丈夫」と幾度も呟きながら、ワワンパァはDPを消費していく。数さえ揃えばきっと撃退できると信じて。
だが──
「ウソじゃろぉ……こんなん…………」
──無理だ、という言葉すらも失う惨状が広がった。この破壊を齎した存在は、地獄からの使者なのだろうか。それはワワンパァには分からない。楽し気に踊る幼女を見て、彼女の希望は潰えるのだった。
≪凄い! 見てフーちゃん、古代神殿じゃん!!≫
「神秘、あるするっ!」
うわーうわーと歓喜の声を上げる悪魔たちに、ワワンパァは許しを請うしかなかったのだ。
「ちょっと待ってくれんかねえ? ウチ、降参するけん、これ以上荒らさんといてや」
◆
≪だ、誰!?≫
「悪、臭い、ないする。死ぬ、ない人」
「こ、こわぁ……森の民は相変わらずじゃねえ」
ウチの名前はワワンパァ。そう自己紹介するこの幼女は、ダンジョンマスターなんだそうだ。
幼女が!?
子供の頃から戦闘力高すぎないだろうか……この世界。そんなことを伝えると、65歳だと教えられた。
≪エエエェ≫
「むー? 大地の民する?」
≪ン? 大地……ドワーフってことかな? ノームとか?≫
そういわれてみれば、それっぽい服着てるね。
深緑色のへそ出しシャツはチューブトップで、こげ茶の短パン。革で編みこまれたようなサンダルは、足首のあたりで留めてあるから簡単には脱げたりしない物だ。衣服は上下共に縁が金色の幾何学模様で飾られてるね。首と二の腕には青色ベースの金属で、宝石と金で飾られたアクセサリーを付けている。
そんなかわよなダンジョンマスター。
「ほうよー。生きとった時のウチは、森の番人の眷属の血ぃも入っちょったらしいんじゃけど、それは転生してから知ったんよねえ」
でも死んじゃってダンマス転生したんだって。ダンマス人生はまだ0歳らしい。できたばっかのダンジョンを、無茶苦茶にしちゃったのかあ。
「ごめんなさい、する、ある……」≪ゴ、ゴメンね≫
「しょうがないことじゃけん、ええよ。ふたりがおったら回復も早ぅなるし」
強キャラはダンジョンの力を溜める効果が高いらしい。DPってヤツですな。僕はカテゴリーオーバーだし、フーちゃんはこの世界でもトップクラスに強いエルフの子だし。
まあ……オカシナ名付け方は、エルフのガッカリポイントなんだけど。でもそれは日本人がいらんことした可能性が高いから、文句も言えないっ!
≪そういえばコロロの森のコロコロスー、って名付けた人はたぶん僕と同郷だよ≫
「おぉー、スゴイ、あるする!」
≪言葉の並びにルールがあるからね≫
ダジャレってのは言わないでおこう。
≪ふと思ったんだけどフーちゃんのフィアフィアってさあ、僕の世界の英語って言語のフィアーから来てんのかもしれないよ。恐怖を司ってるのかもね、フーちゃんは。ピッタシじゃーん≫
「合うとるねぇ」
「え~、本当、あるするぅ~? え~」
クニャンクニャンするフーちゃん。恐怖を司る、で喜んでおられる。ウーン、この考察は間違ってないかもしんない。
「あ、私、コロロの森のフィアフィアスー、いう、する。フー、呼ぶする」
≪僕はポー。ポヨヨの森のポヨポヨポー……≫
「フーちゃん、ポーちゃんじゃね。分かった。これからよろしく」
「分かる、した」
≪どういうこと?≫
「ああ、そりゃあねぇ──」
誰かと契約して、国の管理下に置くんだそうだ。どうもワワンパァは最初から契約ダンジョンにするつもりだったらしく、ある程度ダンジョンが育ったら連絡するつもりだったみたい。
僕らが完全に悪者です。フーちゃんを先に見つけてたら、違った未来があったかもって言われた。それは確かにそうかも。
契約予定ならねえ……平和に解決してた可能性ありだ。
「まあ、とりあえずウチに付いて来てぇや。コアルームに案内するけん」
そういいながらワワンパァは、この古代遺跡風ダンジョンのエントランスホールに並べられている、女神像の裏側をコチョコチョ弄り始めた。外観もそうだったけど雰囲気あるね。
岩盤をくり抜いたり彫り込んだりで、そびえ立つ綺麗な円柱が印象的だ。エルフの文化とは違うようで、フーちゃんも興味深げ。ドワーフの彫刻って素晴らしいものなんだなあ。
衛星放送とかでやってるソレ系の番組で見た、ペトラっていう古代都市の映像を思い浮かべると近いかな。みんな大好き、ソドムとゴモラの時代だったような気がする。ロマンでニヨニヨしちゃう系時代。
なんて感じで見学してたら、ズゴォォとか音がして1本の円柱から小さな隠し部屋が現れた。
「こっち来んさい。行くよー」
≪エレベーターかな≫
「エレベェター?」
≪上下に人や荷物を運ぶ装置だよ≫
「ポーちゃんは詳しいんじゃねえ」
「ポーちゃん、稀人。スゴイ、ある」
「はあぁ、それでスライムじゃけどレア度が星2個も付いとるんじゃね。納得」
≪そんなことまで分かるの? すごぉ……でもたった2個かあ≫
しかしワワンパァの返答は違った。星が付いてること自体が珍しいみたい。フーちゃんにレア星は付いてないそうだ。ただ、フーちゃんの4精霊はそれぞれ星2つらしい。
「やる、したっ!」
フーちゃん自身がレア度なかったことにはションボリしてたけど、跳ねるほど嬉しいみたい。ピョンピョンとお喜びのご様子。ワワンパァも一緒になってキャッキャしてる。この嬉しみの舞はエレベーターが止まるまで続いた。
案内されたコアルームで一息つく。ほっこり落ち着く部屋だなあ。ログハウスの中っぽい。インディアンの羽根飾りみたいな物とかが壁にかかってる。
「ほんで、ウチは誰と契約すればええん?」
「分かる、ない」
≪王都に連絡入れてみるよ≫
僕は王様の側にいる会話用僕へ連絡を入れた。
次回≪MISSION:20 生ける人形≫に、ヘッドオン!
強キャラってなんて読みますか?
僕は「つよキャラ」って読んでんだけど
「きょうキャラ」が一般的? 納得できぬぅんっ!
強いキャラクターを略すんだから、つよキャラじゃんかあああ
さあ今日からみんなも、つよキャラにアクセス!




