MISSION:16 精霊王
「つまる、ない……」
≪え、と……つまり?≫
『こったら弱えダンジョンつまんねぇべ!』
バッチリ準備して、ぐっすり眠って、朝早くから行動したのにしょっぱいダンジョンだった……。
フーちゃんはションボリを通り越してオコです。しかしながら腕を振りながらのプンプンムーブは可愛らしさを爆発させてるような?
尊い。
とはいえ、尊いだけじゃ物足りないのは確か。まさかのほぼ一直線ダンジョンだなんて思わなかったしねえ。魔物もいなかったし、ホントにただの洞穴じゃんか……。結構なマナを感じるんだけど、このくらいでも小さいダンジョンしかできないのかなあ?
一応……一応? 隠し通路的なものもあった。ただ結構な雑さ加減で、その奥にダンジョンコアが鎮座してたものの、小ちゃいコアだったんだよね。
そして即食べるマン。オイシカッタデース。甘ぁ~い。
ダンジョンコアも魔石の一種らしいけど、石がなんでデザートな感じで僕に響くのか分かんないや。でも僕は、ついにデザートを手に入れたぞぉ!
≪もっと食べたいなあコレ≫
「美味、する?」
≪クリーミーなケーキ食べた感じだったよ! ウマァ! ダンジョンコア、ウマァァァ≫
おー、とか言いながらパチパチ拍手してくれるフーちゃん。僕が美味しいものを発見できたことを一緒に喜んでくれるんだよなあ。素晴らしき優しみ。
お肉食べたいフーちゃんの邪魔をした、少年たちのキンタマはペペーンされてたけど。
優しみ、とは?
「潰す、する。外出るする」
≪オッケー≫
「おっけえ?」
≪了解ってことだよー≫
「おっけえ!」
ショボかったけどダンジョンになるくらいの力が溜まる洞窟なようなので、潰して更地にするみたい。
……つまりこういうパワースポットにいたら、僕もデッカクなっちゃう系の場所ってことだよね。一応覚えておこう。
と、フンフン頷くつもりで踏まれるバランスボールみたいにポニュポニュしてるうちに、フーちゃんがダンジョンをクチャっと潰した。例の簡単な呪文で。
「ム? 潰れる、ない所、あるする」
≪どゆことカナ? 岩盤的な?≫
「分かる、ない」
≪猛き力の王って土の精霊しゃんじゃないの? 分かりそうな雰囲気だけど≫
「ン~? 土、違うする。星、言うしてる」
≪星!? 星の精霊なの?≫
「うん」ちゅって可愛く頷くフーちゃん。
星かあ……つまりこの世界も宇宙空間にあるってことなのか。異世界じゃなくて別の銀河系とかなのかな?
でも神様もいるっぽいし異世界宇宙な可能性も? とか割とどうでもいいことを考えながらフーちゃんの精霊のことを聞いた。
≪はあ……てっきり火水風土な感じだと思ってたよ、僕≫
敵を燃やしてたからねえ。でも違った。八百万の神々的な存在なのかな? そういえばフーちゃんの精霊魔法で、ホテルの床に掴まれたこともあるし、付喪神的な可能性も……?
ふんわりとしたことしか分からなかったけど──主に熱、液体、空気とか気体?(マナも?)、ギュってする(???)を4種の精霊王で操ってるっぽい。他の精霊にも力を行使してもらうことがあるみたいだね。この4種じゃあ床に掴まることなさそうだし。
「フフーン、私、凄い精霊、友達」
ドヤるフーちゃん。僕は触手で拍手しながら、知らない他の2種の呪文を教えてと頼んでみた。「煌めく怒りの王」は僕が燃やされたヤツなので覚えてるし、「猛き」のほうは今聞いたしね。
でも一瞬喋りそうな顔しておいて、なんかニヤァって悪い顔をするフーちゃん。
「教える、ない~」
≪ただのイジワルじゃーん≫
「ないー、ぷぷぷ。敵、いる、使う、待つ」
≪オッケオッケ、楽しみに待ってるよ≫
「まかちょけ!」
≪じゃ、フーちゃんの魔法で潰せなかった所、調べてみよっか≫
「ン」
どうやって調べるんだろうか?
「ポーちゃん、掘るする、ガンバル」
≪え!? 魔法でできないの?≫
「入口、分かる。ポーちゃん、道作る」
≪おぉぅ……星の精霊だったら、入り口までギューンって道が作れそうな雰囲気がしてるけど≫
「えー? できる、する? あ、できるする、言うしてる!」
≪やたー、パチパチパチ≫
星の精霊ってなにができるのか謎だねえ。ギュってするっていうのは重力的な力なのかな? ワンチャン、地球を作るゲームみたいな能力だったりして。
『精霊さんで壊せねがったがら、絶対隠しダンジョンだべ! 楽しみだぁ』
≪ほほぅ≫
なんでもダンジョンコアが健在だと、壁は破壊不能なんだって。つまり隠し扉がまだあったってこと。スカウト技能とか持ってないもんね。マナが漏れ出してないと、僕らには分からないってことだなあ。
「穴、できるした」
≪ムワア~って大きい穴ができるとか不思議すぎる。ここにあった土はどこに行ったんだろう≫
「分かる、ない『そったらことより早く行くべ!』」
なんていうか、地面がアクビする感じで穴が空いたんだよね。どうなってるのか知りたいと思うのは当然のことだと思ったんだけど、フーちゃんには割とどうでもいいことらしい。
僕は転がされて、でっかい落とし穴にポィーされた。でも問題ない。飛行キャラは移動の制限が少なくてとってもグッドなのデェス。
しかしアレだなあ。ダンジョンの中に残念ダンジョンを作って侵入者を騙すとか、狡賢いダンマスなんだろうね。この先は気を付けて進まないと。
といっても、この隠し扉があったであろう場所から伸びるのは、ただの一本道。奥には下層に降りるための階段があるだけだった。
≪ここからが本当のダンジョン探検だね≫
「行く、するー」
<こちらAWACSヘヴンアイズ。当機及びアイスボックスはこのまま上空にて周囲警戒を行う>
≪了解≫
そしてこの階層の出入り口は巨樹の根元にある洞。眼前には深い森が広がっていた。動物なのか魔物なのか、なにかの鳴き声が響いている。物語では読んだことのあるような世界観だけど、実際に目にすると驚きの光景だなあ。
ダンジョンの中に森がある。屋内に森だよ? 実際のところ……どうなってんのか分かんないけど、ロマンあるよね。
そんなことをフーちゃんに伝えたら教えてくれた。
「ダンジョン、フィールド、別、世界ある、言われる、してる」
≪ほほぉ~ん? じゃあダンジョン内だけど空とか本物なんだなあ≫
『うーん、空は本物だけんども、木ぃ倒しても元に戻っちまうだよ』
≪謎だねえ≫
「謎、あるするー」
ダンマスの力は別世界で、テラフォーミングでもしてんのかな?
まあそれはいいとして、次の階層への入り口を探すのは結構大変そう。森だしねえ。しかも木に目印を付けても、治っちゃう可能性まであるっぽいし……。
まずは上空からある程度把握しておいたほうが、いいかもしんないね。AWACSも連れて来ておけばよかったなあ。
≪ジアッロ1よりAWACS。ダンジョン内にも森が広がっているため合流されたし。オーバー≫
ということで召喚した。
「お腹空く、した。サンドイッチ、食べる、する!」
≪オッケー、とりあえずフーちゃんは休んでて。冷蔵庫もここに呼んどく。僕はAWACSとちょっと探索してくるね≫
「ポーちゃん、食べる、ない?」
≪ダンジョンのマナがあるし、エネルギーは問題ないかなー≫
「分かる、した」
そう言ったフーちゃんは、僕に抱っこ用と会話用の僕を置いて行けと指令を出してきたけど、冷蔵庫用の僕が残るから大丈夫だよ。
こっちも最初っから連れて来てたら良かったなあ。しかし全部僕なんだから、どれだってイイじゃんねえ?
<サンドイッチをお届けにまいりましたー>
≪おっつー。じゃ、あとはよろしく。行ってくるねー≫
「ンー」<ラジャー>
まあフーちゃんは萌え断のフルーツサンドを、存分に味わってたらいいのですよ。探検は僕に任せんしゃい!
次回≪MISSION:17 ニグヮイ≫に、ヘッドオン!




