MISSION:14 覚悟
バルコニーから直接城内に入るのは、やめてくれとのお達しが出ているので大人しく指示に従って、中庭に降りる僕たち。
≪フーちゃんは街の中に興味がないの? いつも現場から直帰だよね≫
「どこでも、お金ない、ダメ。お金、得る、する、ない」
≪ああ、どこでも無料って訳じゃないんだね。で、お金を稼ぐことをしてないから、街には出掛けないのかあ≫
「それ!」
≪冒険者ギルドに登録して、稼げばいいのでは……≫
「解体、イヤ」
与えられた部屋に戻りながら話を聞いてみると、なんでも解体時に獲物をナイフで切る感触が嫌みたいで、やりたくないんだとか。精霊に伝えて、魔石だけ残してチュンって燃やしたり破裂させたりとか、そこまで細かくはできないっぽい。
≪キンタマのピンポイント殴打は可能なのに?≫
「キンタマ?」
≪睾丸のこと≫
「見る、分かる、殴打するー」
キンタマのピンポイント殴打は可能なのに、魔石残しが不可能なのは、体内にあるので明確なイメージができないため。
魔石の場所は個体によって位置が若干違うから、破損を避けるべく普通はナイフでの解体になるそうだ。フーちゃんはやらないけど。
で、キンタマの位置も若干違うんだけど、股の間という目に見える決定的なものがあるので、存分に殴打可能デス。ってことらしい。魔石と違って、傷つけるためのアタックだし……。
かわいそうなキンタマ。
まあ……そんな訳で、素材を買い取ってもらって稼ぐ冒険者にはならないそうで。
護衛なんかやるにしても戦闘力や移動力が過剰だし、報酬の面で問題になりそうだよねえ。
僕も魔石は売らずに食べたい気がするから、やっぱし冒険者ギルドに登録しても意味がなさそうだなあ。チョコっとは興味あるけど、僕だけで登録は難しいんじゃないかと思う。
やはり僕はフーちゃんありきの、人生なんだなあ。
≪これからどうするべきだろうか≫
「出掛ける、した。お風呂入る、する!」
そういう事ではなかったんだけど、僕の返事はYESかハイである。だってフーちゃんありきの人生なのだから(二回目)
部屋に付いているお風呂にIN。大浴場みたいに広くはないけど、さすが王様んちだよね。それでも町のお風呂屋さんくらいの広さはある。
僕たちは身体と心を洗った。戦闘による汚れとストレスを解消するのに、風呂はピッタシさ。
「これ、野菜、果物、飲み物……?」
「ポー様に教えていただいたドリンクでございます」
メイドさんから渡された野菜ジュースに、訝しげな表情のフーちゃん。
≪チョットは野菜のクセがあると思うけど、ハチミツと果物で飲みやすくなってると思うよ≫
お風呂上がりの一服はコーヒー牛乳だと思うけど、僕はフーちゃんに野菜を取らせる鬼と化すのです。僕も人間だったころはよく飲んでた。果物入りは甘いので、野菜メインのほうが好みだったけど。
フーちゃんもソコソコ気に入ったみたいで「!?」な表情のあと、僕に魔力をプニプニ押し付けてきた。野菜ジュースのランキングは、紅茶の下辺りな魔力量。彼女の好みは、下賜される魔力量で把握できるのだよ諸君。
まあ、そのランキングに意味があるのかと問われたら……。
フーちゃんに気に入られるという、セコイヨムーヴができることかな。
ウム。セコイ。
≪ところでさ、フーちゃん。魔石って魔物が持ってる物なの? 動物とかは持ってない?≫
「動物ない、するー」
≪実はさっき見せてもらった時に気付いたんだけど、美味しそうな匂いがしたんだよね。フーちゃんの魔力がご飯なら、魔石はデザートだよパチパチパチー≫
「おー」
パチパチしてくれるフーちゃん。
狩りついでに魔石の確保をすることにしたので、ソレを伝えておくと共に倉庫的な僕も作ることにした。増量の必要があるしAWACSにも伝えておこう。
空中要塞に僕はなるッ!
≪色々持って動けるようにさ、時間かけておっきいの作るよ≫
「おおぉー、ポーちゃん、万能、なるする!」
≪まかちょーけー≫
「まかちょけー?」
≪まかちょーけ。僕の住んでた国の方言で、任せておけって意味だよ≫
「分かる、した。まかちょけ!」
胸の前でグーにした手をグッグッって振ってるだけでカワイイのに、なんなんだ! このかわよな「まかちょけ」は!!
僕はこうして彼女の可愛らしさで、骨抜きにされてしまうのだったあ。
そんな感じでダラダラしながら疲れを癒し、夕飯まで僕はのんびり時間を過ごす……つもりだったんだけど──
「お腹空く、した。なにかあるする?」
──厨房へと突入するフーちゃん。なんて迅速で自由気ままな行動なんだろう。
ハムスターに餌をあげるように、ほがらかな表情で次々とクッキーを渡す料理人さんたち。
ニコモグしてるフーちゃんが可愛いのは分かるけど、あげ過ぎには注意して欲しいでーす。
「美味しい、ある~」
「ポー様のご意見を耳にしまして。こちら人参とナッツのクッキーになります。気に入られたご様子で幸いです」
≪野菜の重要性がいつの間にか広まってた!≫
身体を作る肉、身体を整える野菜。どっちも大事だからね。そんな話を「騙された!」みたいな顔してるフーちゃんの側でしちゃう。
≪バランスが大事なんだよ。戦闘だって攻防のバランス、大事でしょ?≫
「分かる。夕食、お肉食べる、良いこと」
≪しまった! 謀ったなフーちゃん!!≫
「夕食、お肉食べる、バランス、良いことぉー」
≪お野菜もお願いします≫
「お野菜……食べるっ!」
覚悟完了なフーちゃんであった。
いや、まあ、お城の食事だしマズイ物は出ないと思うし、そんな「やったるんじゃー」みたいな感じ出さなくてもいいと思うよ。
「かしこまりました。ご期待ください。お食事の時間もまもなくですので、お席にて御歓談ください」
「ありがと、した。ポーちゃん行く、する」
≪了解。お邪魔しました、失礼します≫
ところで……城内のアチコチで走ってる椅子型の僕は、なにを強いられてるんだい?
荷物抱えて移動するのは大変だと思うけど、楽をするとプヨっちゃうゾォ。
「然り。余程でない限りは荷だけにしておくよう、伝えておくべきであろうな」
「ですが陛下、ポーちゃんは程良い弾力と、心地良い冷たさでとっても座り心地がいいのですわ」
ということで王族とご飯タイム……僕はフーちゃんほど図太くないので、緊張するよ。
「ポーちゃん、ばっちゃまのおっぱい、みたいする! 最高、ある。丸い、カワイイ、あるするー!」
フーちゃんってば、どこでもいつでも自由ダナー。
「おっかあと私、ない。まだまだ。しかし未来、希望ある、する」
「ウ、ウム……であるか」
「フィア姉様……それは口にしないほうが、よろしいですわよ?」
ほらぁ、みんな困ってる。王様の話では昔も同じことを言っていたそうな。フーちゃんに会話の主導権を渡すと、おっぱいかキンタマかお肉の話になりがちだからなあ。ここはひとつ、僕が掌握しようではないか。
≪ところでこの世界にはダンジョンとかあるんですか? なんていうか、ダンジョンコアみたいなのがあって、魔物やお宝がある迷宮というか≫
「ほぉ、知っておるのかポーよ」
≪おおっ! ということはあるんですね?≫
「魔力のない世界と言うておったが?」
ま、ね、僕らの娯楽世界では定番中の定番だもんね。妄想で願望で、こういったことが好きな人には、たまらないヤツってことを伝えた。
「不思議であるな。世界は違えど同じものを認識しておるのか……なにかしらの繋がりがあるのであろうな」
だから異世界人が、この世界にも現れるのだろうと王様が呟いた。ワンチャン、この世界の人が向こう側に行って、ダンジョン的なのとかファンタジーな世の中風な世界観を、広めたのかもしれない。
現実が娯楽になった世界から、娯楽だったことが現実になった僕は人生を謳歌したい。
命を散らせても平気なので。
パーンって破裂したら黄色いスターマインになれるなあ。昼限定だけど落下する時に力を込めたら、キラキラも表現できるZE☆
よし、必殺技を作ろう。名前は星屑自雷ッ!
なんてね。
「ポーちゃん、ダンジョン、行くする?」
≪是非とも潜りたいでーす。それっぽいのを見つけたし≫
なんかマナの濃い洞穴があったと、報告が来たんだよね。附近に人もいない森の奥地で。
行くしかないでしょ! と僕は息巻いた。
次回≪MISSION:15 ダンジョン≫に、ヘッドオン!




