MISSION:11 法陣術
翌朝、王様たちと食事をしたあと、部屋で待機しているとエリヴィラ様がやってきた。
≪よろしくお願いします!≫
「はい、よろしくされますわ」
「がんばる、する」
にっこり王妃様の微笑みの破壊力。
ピーカブースタイルというか、グッって胸の前で両手を握りしめながら、応援してくれるフーちゃん。
≪空を自由に飛ぶための、大事な勉強ですので頑張ります≫
「それでは早速始めましょう」
机の上に並べられる紙とインクとペン。そしてなにやら文字の書かれた棒。ワンド?
紙とインクとワンドからは、ご飯の香りがしている。ということは、コレは魔道具ってことなのかな。ワンドはなにに使うのか分かんないけど。
法陣術って呪符的な感じなのかもしれない。
陰陽師風なスライムになるね。
「法陣術についてですが、この術は専用の道具を用いて魔術を発動させる技術になりますのよ」
≪なるほどなるほど≫
「そしてこの道具は安価な魔道具となります。魔術師以外のかたでも、日常的に使用可能な物ですわ」
説明を聞くところによると、フーちゃんに聞いた通り魔法は使える人と、使えない人に分かれるそうで。体内でマナをこねくり回せて、個人のオーラと混ぜることのできる人だけが魔法使いになれるみたい。
混ぜたものが魔力ということ。
地球には存在してなかったであろう、第五元素的な不思議エーテルのマナ。
僕のご飯でもある。
日常的なものになってるせいで、マナは体内でこねくり回せる。オーラはみんな持ってるとのことだから、僕だって魔法が使えそうなんだけど……やはり魔力を込めた発声が必要らしく僕では条件未達成だった。オーラのことも、まだよく分からないしねえ。だけどヒントはある。
味。
味付けされてるんだよね、フーちゃんからもらう魔力には。
物体を分解した時に出るマナや、大気に漂うマナは言ってみればアッサリ系の味なんだ。でもフーちゃんの魔力はコッテリ系。
つまり──オーラはコッテリ系のナニカっていうこと。僕の中のコッテリ系を見つけることができたら、僕も魔力をこねくり回せて放出できるはずだ。
そして法陣術もなんだけど、魔力を込めたインクで魔力を込めた紙に、書き込む必要があった。魔力を使えない人は魔力を込めたワンドで発動させるんだって。
マッチかな?
≪魔力を込めて空中に文字とか書くと法陣術になったりするんですか?≫
「ええ、発動に必要な魔力量があれば可能ですわね」
最も魔法円とか書く必要があって、発声するほうが早いし簡単みたい。発声する時には魔法円や文字を構築する術式を組み込むんだってさ。
まあ僕が使えない方法は学ぶ必要なし。
しかし……魔法って結構メンドクサイ手順が必要なんだなあ。フーちゃんは、あんなに簡単な感じで破壊を撒き散らかしてたのに。
煌めく怒りの王とか猛き力の王とか、たったそれだけの言葉だったよ。
≪喋ることができたら魔法使えそうなのになあ≫
「喋る、ない?」
≪精々ピューとかブーとかくらいだねえ。声を出すってのは、結構複雑なことを自然にやってることだから無理かな≫
口の動き、舌の動き、声帯の動き。口と舌がなんとかなっても声帯がよく分からないよ。
≪そんな訳で法陣術を極めるのだー≫
「おー」
「では魔法文字を覚えていただきます」
≪覚えました≫
「お早いですわ!?!?」
『ポーちゃん早いべー! もう? もうっ!?』
差し出された紙には、ゴート文字っぽい感じの記号。これが魔法文字かあ。27字+10個の数字と意味が書き込まれてる。正直僕がいっぱいいる時点で覚えるという行為はとても簡単に。
文字と意味でひとりずつ使っても、たった74人の僕で済むし。
そのまま記録用僕に保存しておけばさらに安心。ということでAWACS役には、すでに情報を流している。
≪僕がいっぱいいるから、覚えるっていうのは楽ちんになったんだー。メッセージ用僕の文字を消さないだけで、情報を記録しておけるしね≫
「スゴイ、する!」
≪飛ぶよぉ? マッハで飛んじゃうよ!≫
「まっは、とはなんですの?」
≪あ、ハイ。音の進む速さです。山びことかが分かりやすいかと。山に反射して帰ってくる声が、遅れて聞こえるヤツのシステム≫
はえぇぇ、ってなってるエリヴィラ様。
ぽわー、ってなってるフーちゃん。
ふたりの驚いた顔はチョット抜けた感じで可愛らしい。口、ぱかぁ、するある。
≪えっと、そのくらいのパワーを出したいので超ガンバリマス≫
「そ、れは……現実的ではないくらい、重ねないといけませんわね……」
威力を増すには術式を連結させるように組んで、用紙を重ね合わせる必要があるそうだ。
「穀粒に文字を書き込むような精度が、必要かもしれませんわ」
≪それもイケそうです≫
極小サイズで書き込めば問題なさそう。しかも紙使わなくて僕自身に記述しちゃえば魔力の問題も解決しそうだし。僕の最小サイズはナノとかピコとかまではいかないだろうけど、そんなんっぽいし。なんだっけな、ミリの下。たぶんソレ。
まあ、魔力を練る方法も理解しないと、だけど。
「ポーちゃん、なんでもある、するー」
≪フーちゃんに言われたくないしぃ~≫
「なんでもありのお二方、ということですわ……まったくもう」
まあそんな訳で着々と授業が進むのは、良きかな良きかなってヤツですな。ニッコリアイコンを僕の上にポップアップさせて、授業の続きに入る。
法陣術の記述の仕方だ。
これもお手本を用意してくれたので、サクサク覚えていく。
≪そういえば法陣術のサイズで、威力とか変わらないんでしょうか?≫
「変わるのは効力を発揮する時間ですわね。用紙に込められる魔力量が増えますので」
ふーむ……法陣術の術式というのは、プログラム的なものなのかな。大きなフォントでプログラムを書き込んでも意味ないというか。
≪ということは極小サイズでの連結でも、僕自身に書き込んで魔力を送り込み続けさえすれば、威力も時間も問題なくなりそうですね≫
「現代技術をあっさりと凌駕されますのね」
「ポーちゃん、ゆえ、する」
≪スライムになった時はどうなることかと思ったけど、なんか便利な身体になったのかも≫
味覚の問題は残ってるけど。でもこれはナイショ、だねえ。フーちゃんが悲し気な顔しちゃうからさ。
いつか美味しい魔力を発見すればいいかな。
「つまり、えー……もう術式の書き方をお教えすれば良い、ということですわね」
≪風を出すのと、熱を出すのと、冷やす術式が知りたいです!≫
「ウフフ、では文字の組み合わせを考えてみてくださいな」
そう言ったエリヴィラ様はちょっと意地悪な顔で僕を見る。サクサク覚えちゃったせいかあ。
メモ用紙サイズの僕を分離し、魔法円を描く。
さて……
時間は用紙に込められた魔力量。
威力は連鎖した分で変わる。
ということは、“風を出す”という文言を書き込めばOKなのかな?
プログラム的に書き込むとなると……まずは風を定義して、出力を定義して……出力場所の座標は魔法円の中心から出るように組めばいいのだろうか。
≪こう、ですか?≫
「惜しいですわね。魔力を糧に、ということが抜けております」
≪あ、そうか! なるほどー≫
「それからここ、あとここもですね。風や出力、ここの数字部分はなんでしょうか? 不要ですわ」
≪あ、定義する必要はない、と。了解です≫
風がなんなのかっていうのも必要なのかと思ってたけど、世界に定義されているということなのか。出力する座標もわざわざ書かなくても、魔法円の中央から出るみたい。
世界に書き込み、発動すると聞いた。だから認識させるために書いてたんだけど、すでに世界の中に、定義されているということなんだろう。
「あとは魔力を込めた文字と用紙で、発動可能になりますわ」
「ポーちゃん、オメデト、する!」
≪ヤター!≫
連結する際の注意点も聞き、あとは魔力を練る技術をマスターすればいいだけになった。
≪フッフッフ、オーラが分かれば魔力を練ることが可能に≫
「これ」「これですわ」
僕に触れたフーちゃんとエリヴィラ様が同時にオーラをギュムってきた。
≪やっぱりコッテリ系な感じがする≫
オーラだけだと増える兆候はないみたいだ。
……つまりコレって浸透頸だと、僕やられちゃう系ってことだよね。対オーラ防御も考えないと、イクナイ未来が待ってるかもしれないなー。
まあ防御しなくても分散してたら平気か。僕に触れて送ってきたってことは、遠距離攻撃とかないのかもしれないし。でも一応は頭の片隅に置いておこう。
頭の有無とか気にしてはイケナイ。
次回≪MISSION:12 黄金の翼≫に、ヘッドオン!




