MISSION:10 王の力
とりあえず抱っこ用の僕塊を与えて、本体はフーちゃんに追従することに。目と心を閉ざせば問題ない。それはただプヨってるだけの塊なので。
そして到着する執務室。奥には陛下が座しておられる。
またかぁ。
人の群れのボスなんだけどね。
フーちゃんは、王様でも動物の群れのボスくらいの認識なのだろうか……寿命が違い過ぎるし、飼ってるペットのリーダーをヨシヨシするくらいの軽さに感じているのかなあ。
≪フーちゃん、なんでいきなりなの? いきなり王様のところとかオカシクない? 絶対オカシイよね!?≫
「平気。変、ない。リオ~、来る、した!」
「どうした姉上。報告忘れでもあったか?」
ふたりとも気軽な雰囲気で平気っぽい。でもさ、僕は平気じゃないんだけどなあ。王様とか会わないよね? 普通は。
「ポーちゃん、学ぶ、したい。法陣術」
≪あ、いや、その……法陣術を学びたいのは確かなのですが……陛下におかれましては、お忙しいところを誠に申し訳ございません≫
「フハハハ、構わぬ構わぬ! 姉上に振り回されておるのだろう? 昔から変わっておられぬようなのでな」
「ん~?」
「フッフッフ、姉上はそのままで良いのだ」
「分かる、した」
「それに余は稀人と出会った経験がないのでな。むしろ其方とは友になりたいと思うておるよ」
うーん……王様もソッチ側かあ。無茶ぶりです。
王様に誘われ、窓際にある休憩所っぽい場所に移動する。つまりコレはO☆HA☆NA☆SI☆が始まるということ。
フーちゃんに至っては一仕事終えた感じで、出された飲み物を美味しそうに飲んでいる。そして魔力を僕に押し付けてくる。
≪フーちゃんフーちゃん? 今は僕が増える必要ないんだけど≫
「オイシイ、分けるする~」
「ほお? 魔力を糧に生きておるのか」
≪マナがあれば問題ない身体になりました。現時点ではフーちゃんの魔力が、1番美味というか充足感があるというか≫
スライムになって1番最初の食事が、フーちゃんに殺されかけた時の魔力っていう不思議な人生を始めてるんだよね。
そんなことも伝えると、これからはフーちゃんと苦楽を共にしたらいいと憐れみの視線を下賜された。
「同志である」
楽しいし、自ら望んでフーちゃんに付いて来てるんだから、イインダヨー。
「しかし……姉上の攻撃で滅ばぬとはな」
「ポーちゃん、死ぬ、ない?」
≪死ぬけどすぐに増えるからねえ。別動隊もいるし、フーちゃんと会話用の僕もくっ付いてるし……全滅はないと思う≫
魔法攻撃は食べられるから、たぶん無意味だしね。それも含めて僕の能力というか、判明している可能なことを、フーちゃんと王様に伝えておく。
ついでに死ぬ感じも伝える。
≪なんというか……死ぬって表現は合ってないのかもです。体毛が少々抜けても気にならないですよね? そんな感じなんです≫
僕が一気に50%くらい死んだとしたら、ゴッソリ髪の毛抜けた時の焦りに似ているかもしれない。
たぶん。
20%になった時の焦燥は激しかったし。
髪の毛が突然80%OFFになったらヒュッってなるよね、絶対。
「不可思議な生態であるな」
≪そうですね。僕自身、別の僕と会話するという訳の分からないことをやってますし≫
「距離があっても通話が可能。別の個体として活動可能……ふむ、余にも分けてくれぬか? 会話用のポーとやらを」
対価は法陣術だそうで。
≪かしこまりました≫
やらざるを得ないっ!
『じゃあリオが教えれば話が早いべ?』
≪それはさすがに無茶だべさ……≫
『オラじゃ時間が取れねえよ姉ちゃん。んだども1番の先生、用意すっから許してけれ。王の力を見せてやっぞ?』
≪流暢! すっげぇ流暢にエルフ語喋ってるだ! でございます……ね≫
「フハハハハ、良い良い。友となる。そう申しておろうが」
うっかり普通に話した僕に、王様がニヤリと笑みを向けてくる。
でも個人的には激しく、イクナイ気がするんですが。
「友達、なる。良いこと!」
「で、あろう?」
圧が強いふたりに押し負けて、僕の返事はかしこまりましたしかなくなった。
とはいえ、一流の教師から法陣術を教えてもらえることになったので、良しってことにしよう。
明日の朝から授業開始してくれるみたい。
≪よろしくお願いします。じゃあフーちゃん、お暇しようか≫
「分かる、した。リオ、ばいばい」
「待て、連絡用のポーを置いていけ」
クッ、覚えてたかあ……。
仕方なくイケニエを差し出す僕。せめて王様が暇な時にでも、フーちゃんとの思い出とかを聞こう。
部屋に戻った僕たちは、身綺麗にするために浴室へ。例のごとくおっぱいを強要されたし、僕は増量させられた。
≪男ですから! 男ですから!!≫
「ポーちゃん、○。男、ない、する」
「ポー様は、まるの紳士なのでございますね?」
「んっ、ポーちゃん賢い、あるする」
「大きいですわ! コロコロスー様はそれほどまでに……私、憧れてしまいます」
「ばっちゃま、スベスベ、柔らかい、ある!」
≪なんで……こんなことになってるんだろうか?≫
しかもキャッキャする女性陣の中に、混じっていまーす。男だって言ってるのに聞く耳を持たない彼女たち。
まるって性別はないはずなのに、僕はまるになってしまったのだった。まる。
あとフーちゃんのお婆さんに、憧れちゃあダメな気がする。睾丸に対して無慈悲だもん。男子の大切な「まる」なんだよー。
などと、おっぱいになった被告人は供述しており、とか誤魔化してみたものの……眼福です。
男だから仕方ないよね。
もっとも男なのは心だけで今の僕に雌雄はなさそうだし、美女に囲まれて洗われても、嬉しみは半減するということに気付いた。
スッキリしたところで庭園にあるガゼボってヤツで、お花を眺めながらティータイム。先日の肉祭りと違って、優雅な時間を過ごすフーちゃん。
なにやら高そうなお菓子や果物を、ニコニコしながら食べてる。
≪さっきからアレコレ飲み食いしてるけど、晩ご飯入るの?≫
「ダイジョブ、する」
≪そういえばお昼ご飯を食べてないね≫
「ご用意いたしましょうか?」
「おやつある。みんな、うれしい、なる!」
≪ならば! 晩ご飯はお野菜多めだねえ≫
「かしこまりました。ポー様」
「か、かしこまる、ない! お肉! お肉、食べるする!」
≪お野菜多めでお願いします≫
「うふふ、かしこまりました」
「あああぁぁぁ、ないぃ……」
「フィア姉様は可愛らしいですわねえ」
お肉がいいよおってクニャンクニャンしてるフーちゃんを見て、お魚があったほうがいいかなーって思いソレも伝えると、かしこまられた。フーちゃんは肉が好きみたいだけど、魚も好きみたいなのでセーフだった。
ご機嫌も取っておかねば、ね。しかし注意もしちゃう。
≪僕の暮らしてた世界ではさ、食べ物の研究とか進んでてさ、肉ばっか食べてると体臭がキツくなるって判明してるよ。早い話が身体が臭くなるということ≫
「も、森の民、身体、お花、匂い! 平気ある!!」
「ひ、ひ、人族も乙女の香りですわ!!」
≪野菜や海藻、ナッツ類とか柑橘類が効果的だから、合わせて食べましょー≫
いや、だからといって無理にいっぱい食べる必要はないよと付け加えた。全員酸っぱみのあふれる顔してるし。
≪こういうことは習慣にしないとね。ニッコリ≫
決意に満ち溢れた表情の女性陣。
これで平和は保たれる。
1時間ほど涼み、お開きとなる女子会。
「明朝、お食事のあとに伺いますわ。お部屋でお待ちくださいませ」
≪?≫
「んー?」
「エリヴィラ様、要件を仰っておられません」
「私が法陣術の教師となるよう、陛下から仰せつかっておりますのよ」
オホホホー。とか、誤魔化しながら去って行ったエリヴィラ様は、第15王妃だそうで……王の力とやらを見せつけられた気分になった。
若い。美女。15番目の奥さん。
もげるとイイヨネ。
っていうか王妃様と一緒にお風呂入っちゃったんだけど、いいのだろうか?
次回≪MISSION:11 法陣術≫に、ヘッドオン!




