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コロロの森のフィアフィアスー ~子エルフちゃんは容赦なし~  作者: ヒコマキ
第4章 大森林の暇人たち

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101/122

MISSION:100 スタンピード中

<では閣下、僕は索敵に行って来ます>

「頼むぞ、ポーよ」


 スタンピードは魔物が無秩序にあふれ出るため、索敵の良し悪しで被害状況が変わる。ポーの受けた任務は重要ではあるが、軽めの返事をして飛び立った。残機を利用しての索敵。今ではかなりの広範囲をカバーできるからだった。


 ラウファルダ西に2つ、南西、南と、4つの石工を生業とした村がボ・ヤウダージア山脈に沿うように点在している。報告のあった方角は南の村だったが、念のために、国軍と冒険者の連合部隊もそれぞれの村へ輸送している。


<ワワンパァ、僕も来たよー>

「あ、ほんじゃあ索敵頼むわ。朝から探しちょるけど見つからんのよ」

<アイアイ。麓から山頂に向かって探していくね>

「了解じゃ。ウチぁ引き続き山頂を探してみるけん」


 ドラゴン型の弐式は目立つため、麓には近づかないと伝えてある。一応ではあるが、国軍から村人への説明はされている。

 人工的なドラゴンは味方であると。


<ムキムキのヒヒが多めって感じかな。コイツがマッスルバブーンか>


 人型の魔物は定番のゴブリンとコボルトとオーク。

 他には鳥や蛇、昆虫系の魔物も見て取れる。しかし魔物の性格上、人里に降りるのは群れを成すゴブリン、コボルト、オーク、マッスルバブーンになりそうだと、ワワンパァは判断。ポーは指揮所に連絡を入れた。


「なるほど。魔物の分布や状態は普段と比べてどうか?」

<えー、とですね、西の村は普段と変わらずと報告が来ました。南西のここと、南の村が可能性高そうですね>


 魔物が恐慌状態になっていたため、ポーはそう判断した。彼が作り出した戦術マップを軍務卿が眺める。


「なれば戦力を集中させるべきであるか」


 念のために西の部隊を半数は残すことにした軍務卿は、喫緊きっきんの案件としてポーに輸送の指令を発する。

 その時、索敵部隊から連絡が入った。指揮所のあるこの場所からおよそ100km南東の山中にて対象の魔物2体を発見したと。


<カテゴリーオーバーとドラゴンが、戦闘を開始しそうと連絡あり!>

「む、間に合わなんだか。ポーよ、ここにおるお主だけで対処可能か?」

<ワワンパァもいますし、大丈夫かと。少なくとも足止めはお任せ下さい>


 マナさえあれば無限に増えることのできるポーに、敗北はない。大物狩りも経験済みであるため、自信をもって言葉を返す。


「では出てくれ」

<了解!>


 力強く返事をしたポーは、ボ・ヤウダージア山脈の現支配者たちを厳罰に処すため出撃する。山の平穏を取り戻すことが優先事項なので、素材にはできない。旧支配者である常闇とは事前に相談しており、わからせ《・・・・》を優先した戦闘が決定していた。


 わからせに失敗し、素材になってしまった場合。

 ダンジョンでもないこの場所に、ポーもワワンパァも支配者として君臨するつもりはないため、別の魔物たちによる闘争という新たな火種を産んでしまう。


 確実に屈服させる必要があった。敵上空で相談する2人。


<どうする? ワワンパァ>

「戦闘を始めてしもうたらスタンピードが起きるじゃろうね」


 かといってこの2人が戦端を開いたとしも、スタンピードが起きることは明らかである。強者が暴れることによって引き起こされているのだから。

 つまり──


<サクッと行動不能にしなくちゃいけないのかあ>

「弐式は失敗じゃったかもしれん」


 ──暗殺ならぬ、暗わからせの技術が必要だった。高火力仕様のワワンパァ弐式は、この任務では使い辛い機体だったのだ。そうこうしている内に、魔物2体の魔力が高まっていく。もはや戦闘まで秒読みといったところ。相談している時間は残されていない。


<このまま上空から、のしかかって押さえつけよう>

「ほんじゃ、ウチぁドラゴンのほうに行くけん」

<カウントダウン。3、2、1、ゴー!>


 アフターバーナーを吹かしての急降下。死を恐れない2人の速度はおよそ500Km/h。急激に迫りくる大地から、大物の魔物だけを視線の先に選別している。


 カテゴリーオーバーであるヘラジカ系魔物のエルムースが、輝く魔力を身に纏い、正に突撃しようとしている時。

 年齢段階がヤングとアダルトの中間辺りに属しているレッドドラゴンが、轟炎の息吹を吐き出さんとしている時。


<弾着──今!>「やめちょけやぁっ!」

「バオォォッ」

「ガアアアアアッ」


 だが止まるはずもなく破壊が撒き散らされてしまう。エルムースの枝角が大地を抉り、ドラゴンブレスが雲を裂く。圧し掛かられたため、互いの魔物は狙いがずれたのだ。

 猛り狂う魔力の波動が辺りを覆った。


「失敗じゃあっ」

<ブッ飛ばすしかなくなっちゃった! ワワンパァいける!?>

「まかちょけぇっ!」


 エルムースはポーが押さえ込んでいるが、ドラゴンは身をよじって拘束から逃れてしまっていた。怒りに燃える夕焼け色の瞳をワワンパァ弐式に向ける。


「んん、なんじゃ?」


 弐式のボディを不思議そうに眺めたあと、焦ったように伏せるレッドドラゴン。ぎゃおぎゃお鳴いている。そんなドラゴンに合わせるようにいななきを上げ始めたエルムース。ロバと羊を足して2で割ったような情けない鳴き声で。


<大人しくなったし降参したんじゃ?>

「なんでじゃろ?」


 常闇の鱗が抜群の効果を発揮していたのだが、2人は気付かなかった。降参したならまあいっか程度の気持ちで、これからは支配域を半分にしなさいと伝える。


「分かった? 分かったら頷いてみんさい」


 そう言いながらドラゴン型の弐式ボディで頷いてみせるワワンパァ。短く鳴き声を出して頷くエルムースとドラゴン。


<スゴイなあ。魔物でも共通語理解できるんだから>

「共通語じゃけえかねえ。魔物でも成長すりゃあ自然と覚えるみたいじゃわ」


 神様の言葉なのかなーとか暢気に会話している2人だったが、大事なことを忘れている。荒ぶる魔力が拡散してしまったということを。

 つまり──


「ぎゃああっ」

「負傷者を速やかに下がらせろ!」


 ──スタンピードはすでに起きていた。恐慌状態になった魔物が次々と押し寄せてきている。山から採石場に落ちてくる魔物たち。そのまま動かなくなる個体もいたが、身体能力は優れている魔物。恐怖に駆られ、逃げ道を塞いでいる連合軍に襲い掛かった。


「左翼、押されています!」

「第9を向かわせて時間を稼げ」

「ハッ!」


 軍務卿は45分ほど時間を稼げば、ポーが新たな戦力を連れて来ることが分かっていた。そのため、工兵である国軍第9部隊を投入する。戦場は広く、現在余剰戦力はない。


 この場所を抜かれるわけにはいかなかった。2つの村がスタンピードに飲み込まれてしまう。

 ポーとワワンパァの戦力を、軍務卿が知っていれば半数を残す判断をしていただろう。しかし彼らはトリプルスタークラスの冒険者。軍属ではなかった。


「ポー?」

<大物とは戦端を開きました。状況は分かりません>


 AWACS(エーワックス)を使用せず、全機でエルムースに突撃。そのせいで連絡が途絶えてしまっていた。戦闘中のため、スタンピード開始の報告にも気付いていない。


<輸送隊からは、飛行に影響が出ないくらいの僕を先行させています>


 少しは到着時間を短縮できると、ポーは伝える。それはおよそ15分程度ではあったが。


「そうか! 左翼に向かってくれ」

<了解!>


 西に展開していたエアタンカーから先行させた、長距離ミサイルの速度。残機の消費が多すぎるため、これ以上上げることはできない。


 生まれる焦りを抑え込み、ポーは大物狩りに向かっている2人に、連絡を入れ続けていた。

 最も早い救援は、あの2人の存在に掛かっている。


 助けられていると軍務卿は言う。

 輸送力しかり、戦術マップしかり、ポーの能力は存分に発揮されていた。それでも戦闘職に犠牲が出てしまうのは、仕方のないことだった。


 皆、最善は尽くしている。

次回≪MISSION:101 スタンピード後≫に、ヘッドオン!

※エルムース

エルク+ムース÷2の造語

アクリスっていう空想生物のヘラジカさんは企業名になっていたので使うの中止。


※前中後

終わんなかったので前中後編ってことで……。

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