MISSION:09 王都
スチャ。ポチャ。
そんな足音を鳴らしてバルコニーに下り立ったエルフとスライム。
そして驚きの声を上げるメイドさん。
空から女の子と魔物が降って来たんだ。当然の反応だろう。
≪オカシイオカシイ! なんでいきなりお城のバルコニーに降りるの!?≫
「リオ、呼ぶ、願うする。コロロの森のフィアフィアスー、来るした、言うする」
「か、かしこまりました。しばしお待ちくださ……あっ、いえっ、応接間にご案内いたします」
≪エェ…………≫
そのまま案内される僕たち。かしこまられちゃうのかあ……しかも説明なしで誰か呼び出してるし。さらに飲み物やフルーツなどが出された。エルフパワーはお城でも発揮されるみたい。
悪の秘密結社の拠点を潰したのは重要な話っぽいし、お偉いさんとかが来るのかなあ?
って待ちながら思ってたんだけどな。結局はフーちゃんが呼び出されたみたいで、案内に従って付いて行ってみれば豪華な扉の前。騎士に誘われてソコに入れば、豪華なお部屋に豪華な服装のお偉方っぽい人たち。そしてドンと構える、一番スペシャルな感じのお爺さんが奥に。つまり、コレは──
「余がアッツェーリオである。久しいな、姉上。変わりないようでなによりだ」
──とか言う王様の前。
ビックリしてフーちゃんを見てみれば、フーちゃんはフーちゃんでガァァァンて表情。なんで?
「リオ、おじいちゃん、なるしてる」
「時の流れは残酷であるがゆえに……な」
もっと頻繁に会いに来てくれてもいいんだぞ、と王様は笑いながらフーちゃんに話しかけてた。王様の姉? 王様はエルフじゃないよ? え、友達? 幼馴染とか?
そんなワケノワカラナイ状況だったせいか、僕はミョーンミョーンしてたみたいで、フーちゃんにギュムってされた。
「大事、話、してる。ポーちゃん動く、ない」
そんな時、慌てた様子で兵士が入って来て、兵士→騎士(?)→貴族(?)→宰相(?)と伝言し始めた。伝わるたびに驚愕の表情を浮かべてるけど大丈夫なんだろうか。宰相らしき人が、王様にスソソソと近付き報告を始める。
「一大事でございます陛下! カテゴリーオーバーの反応が複数王都に現れたとの報告が入りました。急ぎ対策を練らねばなりますまい。旧交を温めるのは後程に」
「無論──姉上、旅疲れもあろう。今はゆるりと静養なされ」
謁見の間が慌ただしくなる中、冷や汗をかく僕。助けを求めてフーちゃんを見ると、ものっ凄いしかめっ面しているため、脳内で一生懸命翻訳中であることが分かった。
ウン、難しい言葉遣いだったもんネー。
いいのかな? 話しかけてもいいのかな!? いいよね?
カテゴリーオーバー……たぶん僕だし。
僕は床をビッタンビッタン叩きながら「!」を連続で出して注目してもらう。
≪失礼します! カテゴリーオーバーとのことですが、自分のことではないかと愚考いたします。というのも──≫
フーちゃんには彼女用のウィンドウに、カテゴリーオーバーが出てみんなが慌ててる。僕だよね? と表示。続いて僕の話をエルフ語に同時翻訳していく。
≪自分は秘密結社の秘密基地みたいな場所で、人造カテゴリーオーバーとして生み出された「稀人」です。現在はフィアフィアスーの、従魔として登録されております。こちらに合流するために、接近中の別グループの私も存在していますので、おそらく自分ではないかと≫
「そう、紹介、今時間する、ところ、した……?『ポーちゃん、合ってるだか?』」
≪今紹介するところだった。だよフーちゃん…………≫
「今紹介するところこだった、した!」
ドヤ顔が眩しいフーちゃん。
ところこ、ではないし、した! も、いりません。
しかしカワイイは正義だったようで、徐々に落ち着きを取り戻していく謁見の間。
「カテゴリーオーバー、出る。私倒す、ダイジョブ、する」
ドヤ顔がキマっているフーちゃん。
破壊衝動が抑えられないのか、とてもワクワクした表情だなあ……とはいえフーちゃんのその言葉で、みんなの顔が「助かった」みたいになってるのを見ると、需要と供給が合ってるのかなー、とも思えたりするアブナイセカイ。
王様は安堵しているような悔しそうな、そんな複雑な表情を浮かべながらフーちゃんに報告を求めた。
僕は通訳を求められた。なお、稀人ならば貴族の言葉遣いは分からないだろうからと、不敬でなければ問題ないとの優しみも頂けました。
その調味料は大事です。
優しみの味付けがないと僕はすぐに、市中引き回しの上、打ち首獄門されちゃいそうだし。
首がないから無意味だけど。
っていう自分のボケで、なんか悲しくなっちゃう人外転生の巻き~。とか考えてると、出遅れた僕から連絡が来た。
<こちらAWACSヘヴンアイズ。敵影(街)を目視で捕らえた。各隊は現状を報告せよ>
≪ジアッロ1よりAWACS。こちらはカテゴリーオーバーが出たと、大騒ぎの王様んち。今は誤解も解けてフーちゃんが状況説明中≫
<離れてたほうがいい? しかしいきなり王様とか、さすフー過ぎる>
≪そう……だね。固まり状態の僕らだけで街の出入りはしないほうが、いいかもしれない。入るなら最小サイズで静かにお邪魔するべし?≫
<オッケー。適当にふらついてる。たださあ、AWACSヘヴンアイズとか言ってもヘリだし、ジェットエンジンをはよはよ>
≪法陣術を学べるように頼むしかないね。じゃ、通信終わり≫
っていうやりとりも、全部独り言っていうカナシイ事実も加味される人外転生の巻きっ!
いや、まあ……アッチとコッチじゃ見てるものが違うし、頭が変になる感じでもないからセーフなんじゃないかと思う。情報共有って大事だしね。大事大事。
「姉上に頼ってばかりでは不甲斐ないであろう? 各々、研鑽に励めよ!」
「ダメ! 私、コロコロなるする! 全部私、もの、する!!」
ああ、王様の複雑な表情は、そういうことだったのか。やっぱり強いといっても幼女だもんね……フーちゃんは。人間的には思うところもあるんだろう。
でもこの暴れん坊はコロコロスーになりたいから、獲物は全部よこせとか荒ぶってる。
無双系のキャラかなっ?
僕は無双系のザコキャラだなあ!
でも僕とフーちゃんが、コンビを組むとヒドイことになりそう。無双系のプレイヤーキャラと、敵キャラが手を組んで第三勢力とバトる感じなんだし。
いや、どっちかっていうと弾幕系かも。空飛ぶんだし。
「分かった分かった。そこまで言うのであれば、姉上に任せることとしよう」
「それ、良いことぉ」
「全く……本当に変わらぬのだな」
ワーワー言い合っていたけど、結局王様が折れてフーちゃんの言い分が通ったみたい。姿が変わってないのは分かってたっぽいんだけど、性格も同じく変わってないようで、呆れたように言葉を漏らす王様。
フーちゃんは、もらえるであろうお年玉を想像して、ニンマリしている子供のような笑顔を浮かべてるよ。
ふたりの関係がよく分からないので聞いてみると、王族は子供時代にエルフの里にしばらく滞在して学ぶらしく、ここの王様とフーちゃんは幼馴染なんだとか。王様になった頃に会って以降、フーちゃんは今日まで城に来ることがなかったみたいで、老人になった王様にビックリしたみたい。
とりあえず今日のところは、休んでくれとのこと。
王様も分かっているんだろう。
ゴージャスな部屋に収容された。大人しくさせないと、どこかで暴れそうだもんね。
フーちゃんが。
今はベッドの上で仰向けのまま跳ねおられる。背中ジャンプならぬ背中浮遊。不思議な光景だけど彼女はなんでもありだし、自由に生きても仕方ない。
さて──
≪ねえフーちゃん、法陣術を使えるようになりたいんだけど≫
──抱っこ移動は終わりにさせてもらおう!
「抱っこする。問題ない、ある」
≪イヤです!≫
屈辱の抱っこ移動はイヤなんです!
だから先生を紹介してくれと、フーちゃんに頼み込んだ。
≪別動隊の僕のこともあるし、高速移動するのに法陣術は必要だと思うんだ≫
「うー……」
紹介する条件として抱っこ用とおっぱい用と会話用の僕を求められた。
そんなに必要かなあ? ひと塊あれば十分じゃない?
次回≪MISSION:10 王の力≫に、ヘッドオン!




